カイマン男
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/2/2e/Hombre_Caiman_Plato.jpg/200px-Hombre_Caiman_Plato.jpg)
伝承
編集コロンビアのカリブ海沿岸、マグダレナ川に沿うプラト村に起きた話として伝わる[6]。村のサウル・モンテネグロ[注 1]という漁師は、マグダレナ川で沐浴する女性たちを眺めるのが好きだった。しかし、それがバレるのは恐かった。そこでアルタ・グアヒーラのインディオ女性(異聞では魔女やピアッチェだとする[注 2])より、ワニ(カイマン)に変身できる秘薬を求めた。魔女は、ワニに変身する赤い薬と、人間に戻る白い薬を渡した。モンテネグロはしばらくそれらを使って、ぞんぶんに覗き見を楽しんだ[9][10][11]。
ある日、いつもの共犯者の友人(飲み友達)が来られなくなったので、別の者に代行して、人間戻りの白色薬を浴びせる役を頼み込んだ。だが慣れない男はワニの姿になったモンテネグロを見て、びっくりして薬瓶を割り、中身をこぼしてしまった。一部がサウルの頭にかかり、彼の頭は元に戻ったが、残りの体はワニのまま残ってしまった。それ以来、女たちは恐れて川で水浴びをしなくなった[10][11][9][12][10]。
そしてプラト村の安泰のため、漁師たちでカイマン男を狩ると決まった[11]。彼らはサウルを見つけて棍棒で滅多打ちにしたが、報復を恐れてうっかり外出できなくなってしまった。「トカゲ(lagarto)」と蔑まれたサウルに、唯一母親だけが、恐れずに接していた。母は、毎晩、(岩間に隠れて水浴びする場所に[10])やってきて、彼の好物[12]、すなわちチーズ、ホエー、魚、キャッサバ(ユッカ)など料理の皿、そしてときおりラム酒の小瓶を置いていった[10]。何とか元の姿に戻そうと、代父母に十字を切らせたり、教区司祭の祝福を得たり、はては聖金曜日の真夜中に黒猫を生き埋めるなど、邪を祓うと聞いて試してみたが、何の効き目もない。母親は意を決して旅立ち、薬を作ったインディオの魔女(ピアッチェ)を探したが、魔女は死んだと知った。三年後、プラトに戻った彼女は(悲嘆に暮れて[11])死んだ[10]。
カイマン男は誰も世話をする者がおらず、ひとり残された。彼は、マグダレナ川の河口、バランキージャ近くのボカス・デ・セニサで、川に身を任せて海に出ることにした。それ以来、プラトからボカス・デ・セニサまでのマグダレナ川下流域の漁師たちは、今でも川や沼地の川岸でカイマン男が出現したら、なんとしても狩ってやろうと目を光らせているという[11][12][13]。
この話は1940年代、バランキージャの地元新聞《ラ・プレンサ》誌で取り上げられたと言われるが、廃刊しており、当時の切り抜き記事を読んだという情報筋も、現在の取材調査ではみつからなかった[5]。
大衆文化
編集プラトでは、毎年恒例でカイマン男祭りが行事される。カイマン男を称える広場と記念碑(彫像)もあり、住民の文化遺産の一部となっている[11][12][5]。カイマン男伝説は、バランキージャ出身の歌手ホセ・マリア・ペニャランダ の歌「Se va el caimán(アリゲーターは行く)」のテーマとなっている[14][5]。
朝日新聞系の書籍紹介コーナー(ホセ・サナルディ『南米妖怪図鑑』と著者インタビュー)では「デバガメするワニ男」などと銘打っている[2]。
注釈
編集脚注
編集- ^ サナルディ, ホセ『南米妖怪図鑑 [Enciclopedia de Yokais Sudamericanos]』セーサル・サナルディ (画); 寺井広樹 (企画)、ロクリン社、2019年、30–32頁。ISBN 978-4-907542-73-3。 試し読みで目次を閲覧可能。
- ^ a b c 『「吸血宇宙人」に「デバガメするワニ男」!? ちょっぴりエログロ、魅惑の「南米妖怪図鑑」』朝日新聞社、2019年8月23日 。2025年2月8日閲覧。
- ^ サナルディ (2019)で使用が確認されたカナ表記[1][2]。
- ^ サナルディのインタビュー兼書籍紹介記事で使う表現[2]
- ^ a b c d e Torres, Carlos (18 September 2014). Fotos: Gustavo Martínez. “Tras las huellas del hombre caimán”. Cromos. オリジナルの6 June 2017時点におけるアーカイブ。 .
- ^ Herrera de León, César A. (18 February 1999). Plato, sus leyendas y relatos. Barranquilla: Ludica Artes Graficas. pp. 15-39
- ^ Roth, Walter Edmund (1915). An Inquiry Into the Animism and Folk-lore of the Guiana Indians. Washington, DC: U.S. Government Printing Office. p. 328
- ^ Bloch, Iwan (1909). The Sexual Life of Our Time in Its Relations to Modern Civilization. Translated by M. Eden Paul. London: Rebman. p. 119
- ^ a b プラト市町村庁ウェブ、《Cronos》誌所引[5]
- ^ a b c d e f Fontalvo, José Portaccio (1994). Colombia y su música. 1 . Bogotá: Lagos Diagramación. pp. 243–244
- ^ a b c d e f Ocampo López, Javier (2006). “17. El hombre caimán de Plato”. Mitos, leyendas y relatos colombianos. Bogotá: Plaza y Janes Editores Colombia s.a.. pp. 98–99. ISBN 9789581403714
- ^ a b c d mcramirez (22 January 2007). "Mitos y leyendas de Colombia. El Hombre Caimán". ColegiosVirtuales.com. 2008年9月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年7月14日閲覧。
- ^ “El "man" que se va para Barranquilla”. El Heraldo 14 de julio de 2008閲覧。
- ^ Fontalvo (1994), pp. 245–247.