ワスレナグモ
ワスレナグモ(学名:Calommata signata)は、クモ目ジグモ科に属するクモの一種である。名前の由来は、一度見つかりながら、その後数十年にわたり見つからず、もう忘れることのないようにということで命名されたという[4][5]。
ワスレナグモ | ||||||||||||||||||||||||
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ワスレナグモ Calommata signata(雌)
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保全状況評価[1] | ||||||||||||||||||||||||
準絶滅危惧(環境省レッドリスト) | ||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Calommata signata Karsch, 1879[2] | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
ワスレナグモ[3] |
分布
編集形態
編集体長は雄で5 - 8 mm、雌で13 - 18 mm[3]。雌雄では別種かと思われるほどに姿が異なり[7]、実際に雄が別種として報告されたこともある[4][8]。
雌は全体にジグモに似るが、顎や歩脚が太く、全体にずんぐりして見える。また、第一脚のみが特に華奢になっている。体色は褐色で、斑紋等はない。
全体に柔らかな毛が生えている。顎は巨大で、背面に盛り上がる。真ん中よりやや後ろが最も太くなっている。頭胸部は中央がもっとも幅広く、前方中央に隆起があってその上に2眼、両側の下に3個ずつの眼が配置する。腹部は楕円形で丸く膨らむ。
これに対して、雄は小さいだけでなく、体色は暗い褐色で、顎は貧弱で歩脚は細長く、胴体も小さいため、趣を全く異にする。触肢の先端は大きく膨らんでよく目立つ。
分類
編集ヴィルヘルム・デーニッツが東京で採集した雌6個体に基づき、1879年にフェルディナンド・カルシュにより記載された[4][5]。1906年にヴィルヘルム・ベーゼンベルクとエンブリック・ストランドによってフンボルト博物館に所蔵されていたタイプ標本が再記載された[2]。一方で原記載以降1943年まで雌個体の採集記録がなく、日本で発見されたにもかかわらず国内に本種の標本は存在しないと考えられていた[4][5]。カルシュらによる記載から本種のありようを想像するしかない状況を憂いた岸田久吉により、1913年にワスレナグモの和名が与えられた[4][5]。なお雄個体は発見・採集されていたものの、形態が大きく異なることから別種のヒメワスレナグモC. pumilaとして報告されていた[4][8]。
2009年時点で同属は東南アジアに6種あるが、日本には本種のみを産する[3]。
生態
編集畑や草地、庭に生息する[7]。平らな地面に10 - 30 cmほどの縦穴を掘り、通りかかった虫を捕らえて引きずり込む[7]。トタテグモ類と異なり、穴には扉がついておらず[7]、そのままの面か、周囲の地面よりやや突き出す形で丸い穴が開いているだけである。これはジグモの巣が地表で切り取られたような形であるが、そのほかに、口から周囲の地表に放射状に糸が張られる。これは触糸(受信糸とも)と呼ばれ、これに昆虫が触れるとクモがそれを関知するとされる。
クモは夜間には入り口付近におり、近づいた昆虫に飛びかかるようにして捕獲して食べる[7]。なお、雨天の時には入り口を糸の層で封じる。
ちなみに、ジグモは平らな地面に穴を掘ることができないが、本種は可能である。たとえば飼育する際、容器に土を入れてその表面を平らに均すと、ジグモは穴を掘れないが、本種はその状態から穴が掘れる。
種の保全状態評価
編集参考文献
編集- ^ a b 西川喜朗「ワスレナグモ」『レッドデータブック2014 -日本の絶滅のおそれのある野生動物-7 その他無脊椎動物(クモ形類・甲殻類等)』環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室編、ぎょうせい、2014年、58頁。
- ^ a b World Spider Catalog (2024). “Calommata signata,” In: World Spider Catalog. Version 25.5. Natural History Museum Bern, online at http://wsc.nmbe.ch, accessed on 19 August 2024. doi:10.24436/2
- ^ a b c 小野展嗣「ワスレナグモ科」、小野展嗣 編著『日本産クモ類』、東海大学出版会、2009年、86頁。
- ^ a b c d e f 岸田久吉「日本産蜘蛛類(其二)」『科学世界』第7巻 5号、科学世界社、1913年、415-418頁。
- ^ a b c d 齋藤三郎「ワスレナグモ Calommata signata Karsch の採集」『Acta Arachnologica』第8巻 4号、東亜蜘蛛学会、1943年、123-124頁。
- ^ 佐藤隆士・和田年史・中島ちづる・鶴崎展巨「新たに確認された鳥取県東部のワスレナグモの生息地」『山陰自然史研究』第3巻、鳥取県生物学会、2007年、6-10頁。
- ^ a b c d e f 新海栄一『ネイチャーガイド 日本のクモ』文一総合出版、2006年11月30日、25頁。ISBN 4-8299-0174-8。
- ^ a b 白甲鏞「ヒメワスレナグモ Calommata pumila Kishida ♂ の記載」『Acta Arachnologica』第3巻 3号、東亜蜘蛛学会、1938年、96-99頁。
- 小野展嗣編著、『日本産クモ類』(2009)、東海大学出版会
- 八木沼健夫、『原色日本クモ類図鑑』(1986)、保育社
- 八木沼健夫・平嶋義宏・大熊千代子、『クモの学名と和名:その語源と解説』(1990年)、九州大学出版会