レイノルズの輸送定理(レイノルズのゆそうていり)は、主に連続体力学で用いられる定理で、変形形状上の積分で表される物理量物質時間導関数(物質時間微分)について成立する次の式のことである:

概要

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物質点に付随する物理量 の変形形状 における総量は、以下に示す体積積分で求められる:

 

ここで、 は、時刻 における注目する物質点 の物質量である。 は、スカラー値、ベクトル値、テンソル値のどれであっても以後の議論は成立する。

今、上記に示した総量の時間変化率を考える。これは、物質時間導関数(物質時間微分) を用いて次のように表される:

 

上の式では被積分関数である に加えて、積分領域 も時間とともに変化する。そのため、単純に積分と微分の順番を変えることができない。しかし、物質点の速度 を用いて の変形も考慮すれば、微分を積分の中に入れることができる。それを表すのがレイノルズの輸送定理である。

導出

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基準形状(変形なし形状) における座標 と写像 によって、変形形状における座標 を表す。

 

上記の変換に伴って、積分領域を変形形状 から基準形状(変形なし形状) に、積分変数を から に変換する。

 

ここで、基準形状(変形なし形状)κ0 における微小体積dV と、変形形状κt における微小体積dv には体積変化率J を用いて次の関係が成り立つことを利用した。

 

新しい積分領域である基準形状(変形なし形状)κ0 は時間に無関係な一定の領域となるので、体積変化率J が時間によって変化することに注意すると、微分を積分の中に入れることができ、次のように変形できる。

 

この式は

 

であることを利用すると、次のように整理される:

 

今度は、逆の変換に伴って、積分領域を基準形状(変形なし形状)κ0 から変形形状κt に、積分変数をdV からdv に変換する。

 

結局、元の式と比較すると次の関係が成り立つ。

 

連続の方程式は、物理量として密度ρを輸送定理に代入して導かれる。

参考文献

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  • 京谷孝史『よくわかる連続体力学ノート』森北出版、2008年12月。ISBN 978-4-627-94811-2