リン酸塩皮膜処理
リン酸塩皮膜処理(リンさんえん ひまくしょり)とは、リン酸鉄、リン酸亜鉛、リン酸マンガンなどのリン酸塩の溶液を用いて金属の表面に化学的にリン酸塩皮膜を生成させる化成処理のこと[1]。
工業用途で本格的に発展させたパーカー兄弟の姓をとって、「パーカライジング」「パーカー処理」とも呼ばれる[2]。
概要
編集主に鋼の表面処理の一つであり、表面に不溶性のリン酸塩皮膜を作り表面の腐食の進行を抑えるために行う。塗装前の鉄製品にたいしても行われる[3]。
腐食を抑える表面保護効果のほかに、塑性加工時の金属石鹸系潤滑剤の下地処理用途としても用いられる。この目的にはリン酸カルシウムなどが多く使われ添加物の使用、液温を制御したリン酸塩溶液を用い、さらに化成処理時間を調整することによって皮膜の性質を変化させることができる[3]。
工程
編集歴史
編集リン酸塩皮膜処理自体は古代エジプトで古くから行われており、19世紀にピラミッドを発掘した際に出土品から皮膜処理された鉄片が発見されている。1906年にそれをヒントにイギリスで最初の特許が取得された。当時は沸騰させた処理液に2~3時間浸漬させる方法であり、工業的には発展の余地があった[6]。
1915年にアメリカのパーカー兄弟がイギリスの特許使用権を取得して パーカー・ラストプルーフ社 を設立し、本格的に工業的に発展していった。当時の戦時需要や自動車産業に用いられ、パーカライジング の名称で広まっていった[2]。日本においても1928年(昭和3年)にパーカー社の技術が導入され、日本パーカライジングが設立されている[6]。
関連項目
編集脚注
編集外部リンク
編集- パーカー豆知識 - 日本パーカライジング
- ケミコート - ケミコート
- ぴかまく公論 パーカー処理(りん酸塩処理)~100年の歴史~ - ぴか☆まくモール(表面処理技術の情報サイト)[リンク切れ]
- 石渡正武「欧米におけるカーボデー塗装分野の現況-2-」『金属表面技術』第18巻第9号、表面技術協会、1967年、362-370頁、doi:10.4139/sfj1950.18.362、ISSN 18843395、NAID 130003993721、OCLC 9648344125、国立国会図書館書誌ID:8172506、2023年4月1日閲覧。
- 石井均「リン酸塩処理の基礎 (小特集 化成処理の基礎と応用)」『表面技術』第61巻第3号、表面技術協会、2010年、216-222頁、doi:10.4139/sfj.61.216、ISSN 09151869、NAID 10026348712、OCLC 9657066860、国立国会図書館書誌ID:10607234、2023年4月1日閲覧。
- ASIOS『謎解き 超常現象4』彩図社、2015年、2034頁。ISBN 9784801300507。 NCID BA89766547。OCLC 902685635。国立国会図書館書誌ID:025978010 。2023年4月1日閲覧。
- 小崎匠「表面処理(5)金属材料向け化成処理について」『材料』第68巻第2号、日本材料学会、2019年、174-179頁、doi:10.2472/jsms.68.174、ISSN 05145163、NAID 130007602758、OCLC 8014507639、国立国会図書館書誌ID:029529523、2023年4月1日閲覧。