燐灰石
燐灰石(りんかいせき、apatite、アパタイト)は、リン酸塩鉱物の鉱物グループに対する一般的な名称。化学組成の違いによって多彩な色をもちいくつかの種類があり、単に燐灰石といった場合はフッ素燐灰石をさすことが多い[1]。
成分・種類
編集産出地
編集天然では、火成岩・堆積岩・変成岩の各岩石の副成分をなしており、非常に広く産出される鉱物であるが、経済的に重要なものはリン鉱石の主成分をなすもので、phosphate rock(りん鉱[2])とよばれる。
産地としては、ミャンマー、スリランカ、ブラジル、マダガスカルなどが有名である。スペイン産の帯黄緑色のものは希少であり、アスパラガス・ストーン(Asparagas stone)と呼ばれる。緑色のものはモロキサイト とも呼ばれる。
性質・特徴
編集化学組成は Ca5(PO4)3(F,Cl,OH)1、結晶系は六方晶系。比重 3.1 - 3.2。屈折率 1.632 - 1.646。モース硬度5の基準となる標準物質である[3]。
結晶は六角柱状、六角板状で産出される。透明~半透明のガラス光沢~亜樹脂光沢で、緑色または褐色が多いが、無色、濃青色、紫色、白色、灰色など様々な色のものが存在する。フッ素燐灰石の場合、本来は無色か白色であるが、リンとカルシウムの一部が別の元素と置き換わることにより、多彩な色に変化する。
用途・加工法
編集透明で大きく色の美しいものは宝石となるが、そのようなものはめったに採ることができないため、小さなものが様々なアクセサリー用に加工されている。天然に数多く産出されるため一般に値段は安いが、硬度が小さいため、宝飾品としてはあまり適さない。ただ、美しい輝きをしているため、鉱物標本としては人気が高い。
燐灰石の用途として重要なのは、化学肥料(リン酸塩)の原料である。また、産業用の化学製品の原料にもされる。
水酸燐灰石は歯や骨の主成分であり[4]、歯科医療でのデンタルインプラントの原料、歯磨剤の原料、人工骨の原料としても使用されている。
語源
編集英語の apatite は、ごまかし、策略を意味するギリシア語の apate に由来している。これは、アクアマリン・クリソタイル・紫水晶・蛍石・電気石など他の鉱物と見間違えやすかったためと言われる[5]。
脚注
編集- ^ 松原聰監修、2009、『鉱物の不思議がわかる本』、成美堂出版 ISBN 978-4-415-03570-3 pp. p.135
- ^ 文部省 編『学術用語集 原子力工学編』日本原子力学会、1978年。ISBN 4-339-06573-0、ISBN-13:978-4-339-06573-2、NCID BN00571594、全国書誌番号:78005358。
- ^ 青木正博、2011、『鉱物・岩石入門』、誠文堂新光社 ISBN 978-4-416-21138-0 p. p.48
- ^ 堀秀道、1997、『楽しい鉱物図鑑(2)』、草思社 ISBN 978-4-7942-0753-1 pp. pp.115-116
- ^ A.G.Werner, 1786
参考文献
編集- 黒田吉益、諏訪兼位『偏光顕微鏡と岩石鉱物 第2版』共立出版、1983年、179-180頁。ISBN 4-320-04578-5。
- 松原聰『日本の鉱物』学習研究社〈フィールドベスト図鑑〉、2003年、138-139頁。ISBN 4-05-402013-5。
- 国立天文台編 編『理科年表 平成20年』丸善、2007年、643頁。ISBN 978-4-621-07902-7。
- 青木正博『鉱物分類図鑑 : 見分けるポイントがわかる』誠文堂新光社、2011年、113頁。ISBN 978-4-416-21104-5。
関連項目
編集外部リンク
編集- Apatite Group (英語), MinDat.org, 2012年7月18日閲覧。
- Apatite (英語), WebMineral.com, 2012年7月18日閲覧。
- 福岡正人. “Apatite〔燐灰石〕グループ”. 地球資源論研究室. 広島大学大学院総合科学研究科. 2012年7月18日閲覧。[リンク切れ]
- “標本名索引-英名”. 地質標本館. 産業技術総合研究所地質調査総合センター. 2012年7月18日閲覧。[リンク切れ]