リッターカー
リッターカーとは、排気量1,000ccクラスの小型乗用車(排気量1リッターのカー)。和製英語である[1]。現在では英語由来のコンパクトカー、スモールカー、欧州での自動車分類であるAセグメントといった言葉も使われるようになっている。
概要
編集日本の大衆車が、厳しい自動車排出ガス規制の影響もあって、排気量や車体サイズが肥大化する傾向が強まっていた1970年代後半、ダイハツ工業はシャレードという名の小型車を発売した(1977年)。シャレードは当時としても小さなエンジンに簡素で小柄な車体を組み合わせており、オーナーにとって経済的なことはもちろん、環境に与える悪影響も少ないと判断された。シャレードの開発思想は当時の自動車評論家から高い評価を受け、販売面でもヒットとなったのである。シャレードのエンジンが1,000ccだったことからリッターカーという言葉が生まれ、「大衆向け乗用車を生産する自動車メーカーはリッターカーを積極的に開発すべきだ」という声も上がるほどだった。
なおシャレードの宣伝キャッチコピーは「5ヘーベカー」(5m2カー)というもので、リッターカーというのはマスコミが作った造語と見られる。
日本国内で販売され、1970年代後半以降のリッターカーにカテゴライズされた主な車種は、上記のシャレードのほか、
- ダイハツ工業/トヨタ自動車:YRV(1,000cc3気筒エンジン搭載車のみ、親会社トヨタへのOEM供給なし)、ミラジーノ1000(親会社トヨタへのOEM供給なし)、ストーリア/デュエット(1,300cc4気筒エンジン搭載車除く)、ヴィッツ→ヤリス(/プラッツ→ベルタ)(いずれも4気筒、3気筒を問わず各種1,000ccエンジン搭載車のみ)、ブーン/パッソ(2代目モデルまでの1,300cc4気筒エンジン搭載車除く。このほか後述する欧州仕様3代目モデルのスバル・ジャスティもこの兄弟車となる。)、トール/ルーミー/タンク(このほか後述する日本仕様2代目モデルのスバル・ジャスティもこの兄弟車となる。)、ロッキー(2代目モデル)/ライズ(1,000cc3気筒エンジン搭載車のみ)
- 日産自動車:マーチ(3代目までの1,000cc4気筒エンジン搭載車のみ)
- スズキ:カルタス(1,000cc3気筒エンジン搭載車のみ)やワゴンRワイド(のちワゴンR+→ワゴンRソリオ→ソリオ)(2代目モデルまでのターボを含む1,000cc4気筒エンジン搭載車のみ)、スイフト(1,000cc3気筒ターボエンジン搭載車のみ)、バレーノ(1,000cc3気筒ターボエンジン搭載車のみ)、XBEE
- SUBARU:ジャスティ(日本仕様を含む初代モデルの1,000cc3気筒エンジン搭載車、および日本仕様2代目、欧州仕様3代目)、ドミンゴ
- 三菱自動車工業:ミラージュ(6代目の前期モデルのみ)
などがある。
ヨーロッパでは日本で言うリッターカー(Aセグメント)が量販クラスであり、庶民の足として使われている。一方、日本では同じくAセグメントに分類される存在で税制などの点で様々な特典のある軽自動車という枠が存在するため、リッターカーは中途半端な存在と見られやすい面もある。しかしヨーロッパでの戦略を考えると、良質なリッターカーの開発は欠かせないとされる。トヨタがスターレットより若干小さい初代ヴィッツ(日本以外の国ではヤリス)を開発したのも、それまで弱点と言われたヨーロッパ市場に本格攻勢をかけるためだったと言われる。今ではさらに小さく1LエンジンがメイングレードのアイゴやiQ(2020年6月現在絶版)をラインアップに加えている。その点で国産各社のリッターカーの動向は非常に重大な意味を持つと見る意見が多い。
上記のスバル・ドミンゴやワゴンRワイドをはじめとして日本の熾烈な競争で鍛えられた軽自動車をベースにエンジンスワップを含む仕様変更を施してリッターカーを作るケースも散見され、欧州市場に輸出されるケースは少なくない。また新興国戦略においても、プロトン・ジュアラ(≒三菱・タウンボックスワイド)やマルチ・800、大宇・ティコ(ともに≒スズキ・アルト)、プロドゥア・クナリ(≒ダイハツ・ムーヴ)のように重要な役目を果たす事例が多々見られる。