ラテン語の動詞
ラテン語の動詞(ラテンごのどうし)は近現代のヨーロッパの主要言語に比べて非常に複雑な形態論的特徴を見せている。これは、サンスクリット語や古代ギリシア語に比べると若干の簡素化が進んでいるとはいえ(双数、アオリスト時制、中動態の消失など)、インド・ヨーロッパ祖語から脈々と受け継がれた特徴である。
ラテン語の動詞には、3つの法(直説法、命令法、接続法)、2つの態(能動態、受動態)、3つの人称(1人称、2人称、3人称)、2つの数(単数、複数)がある。
- 直説法には6つの時制がある。現在、未完了過去(en)、未来、現在完了、過去完了、未来完了
- 接続法には4つの時制がある。現在、過去、現在完了、過去完了。
- 不定詞、分詞には3つの時制(現在、完了、未来)と2つの態がある。
動詞は人称に応じて語形変化し、どの人称かは人称語尾で示される。動詞の語形変化を「活用」(conjugation)と呼ぶ。例えば、動詞amō(「私は愛する」、1人称単数、"I love")の活用は、2人称単数:amās(「君は愛する」、"you love")、3人称単数:amat(「彼/彼女は愛する」、"he/she loves")のように続く。単数と複数でそれぞれ1人称・2人称・3人称の3つの人称がある。
以下、この項ではラテン語動詞の活用の種類と数に始まり、規則動詞・不規則動詞の順に記述していくが、この項目では特に動詞活用の形態論を取り上げ、時制・活用形の意味論や用法・統語論については英語版Latin tenses (en)とLatin syntax (en)を参照のこと。
また、ラテン語の動詞の活用形の総覧には、英語版Wiktionaryのfirst conjugation (第1活用), second conjugation (第2活用), third conjugation (第3活用), fourth conjugation (第4活用)を参照のこと。
活用の種類と数
編集古代ローマ人による動詞の分類はヴァッロ(紀元前1世紀)の頃に始まり、その初期には、2人称単数の語尾がa, e, iのどれになるかに着目して活用を三つのタイプに分類していた(紀元後4世紀のドナトゥス、"coniugationes verbis accidunt tres: prima, secunda, tertia"、「動詞の活用は三つに分かれる。第1、第2、第3」、"there are three different conjugations for verbs: the first, second, and third")[1]。これに対し、サケルドス(en)(紀元後3世紀)、ドシテウス(en)(同4世紀)、プリスキアヌス[2](同500年頃)は四つのグループを識別していた[3]。
近代の文法学者[4]も通常、四つの活用パターンを採用しており、識別には能動態現在不定詞(または、受動態現在不定詞)の語尾が-āre, -ēre, -ere, -īreのどれになるかに着目する。つまり、第1活用:amō, amāre(「愛する」、"to love")、第2活用:videō, vidēre(「見る」、 "to see")、第3活用:regō, regere(「支配する」、"to rule")、第4活用:audiō, audīre(「聞く」、"to hear")の分類となる。この他に、capiō, capere(「つかむ」、"to capture")のように第3活用と第4活用が混ざった混合型の活用パターンもある。
規則変化の動詞は上記の四つのどれかに分類されるが、この他にわずかながら不規則活用の動詞も若干あり、その中でも重要性の高いものが英語のbe動詞に相当するsum, esse(「~である」、"to be")である。その他の種類として、異態動詞(deponent verb)と半異態動詞(セミ異態動詞、semi-deponent verb)(=語形は受動態だが意味が能動の意味になる動詞)、欠損動詞(defective verb、=ある時制の活用形を欠いている動詞)がある。
主要部分
編集ラテン語の動詞には複数の語幹があり、能動態の直説法現在時制と現在不定詞は共通の現在語幹から作られるが、その他の時制には別の語幹が必要になる。通常、能動態の現在不定詞から動詞の活用パターンが識別できるが、それだけでは全ての活用形を作るには不十分である。
ラテン語の辞書には次の四つの「主要部分」(principal parts)が掲載されており(異態動詞と欠損動詞ではそれより少ない)、ここから全ての活用形を導き出すことができるようになっている。
- 能動態直説法現在時制の1人称単数形
- 能動態現在不定詞
- 能動態直説法現在完了時制の1人称単数形
- スピーヌム。もしくは、受動態完了分詞(語幹がスピーヌムと同じ)。後者を採用する辞書・教科書では、自動詞には能動態未来分詞を掲載するのが通例となっている。この4番目の主要部分を持たない動詞も存在する。
規則変化
編集第1活用
編集第1活用は長母音のāを特徴とし、能動態現在不定詞の-āreの語尾で識別される。完了時制以外の時制の活用は次の通り。
直説法 | 接続法 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
現在 | 未来 | 未完了過去 | 現在 | 過去 | |||
能動態 | I love 愛する |
I will love 愛するだろう |
I was loving 愛していた |
I may love 愛すること |
I might love 愛するかもしれないこと | ||
1人称単数 2人称単数 3人称単数 1人称複数 2人称複数 3人称複数 |
amō amās amat amāmus amātis amant |
amābō amābis amābit amābimus amābitis amābunt |
amābam amābās amābat amābāmus amābātis amābant |
amem amēs amet amēmus amētis ament |
amārem amārēs amāret amārēmus amārētis amārent | ||
受動態 | I am loved 愛される |
I will be loved 愛されるだろう |
I was being loved 愛されていた |
I may be loved 愛されること |
I might be loved 愛されるかもしれないこと | ||
1人称単数 2人称単数 3人称単数 1人称複数 2人称複数 3人称複数 |
amor amāris amātur amāmur amāminī amantur |
amābor amāberis/e* amābitur amābimur amābiminī amābuntur |
amābar amābāris/e* amābātur amābāmur amābāminī amābantur |
amer amēris/e* amētur amēmur amēminī amentur |
amārer amārēris/e* amārētur amārēmur amārēminī amārentur |
*受動態の2人称単数形、amāberis, amābāris, amēris, amārērisには短縮形のamābere, amābāre, amēre, amārēreの語形もある。-reは初期のラテン語やキケロの作品(ただし、直説法現在を除く)では規則的な活用形だったが、後の時代には-risが使われるようになった[5]。
初期のラテン語(プラウトゥス)では、3人称単数の-atと-etは長母音の-ātと -ētの音で発音されていた[5]。
その他の語形は以下の通り。
- (能動態)不定詞:amāre「愛すること」("to love")
- 受動態不定詞:amārī「愛されること」("to be loved")(初期のラテン語ではしばしばamārierの語形も現れる)[5][6]
- 命令法(現在):amā! (複数:amāte!)「愛しなさい!」("love!")
- 命令法未来:amātō! (複数:amātōte!)「愛しなさい!(未来のある時点で)」("love!")
- 受動態命令法:amāre! (複数:amāminī!)「愛されなさい!」("be loved!")(通常、異態動詞のみに現れる)
- 現在分詞:amāns (複数:amantēs)「愛している」("loving")
- 未来分詞:amātūrus (複数:amātūrī)「愛しているだろう」("going to love")
- 動形容詞(ゲルンディウム):amandus (複数:amandī)「愛されるべき」("needing to be loved")
- 動名詞:amandī「愛することの」("of loving"), amandō「愛することによって」("by/for loving"), ad amandum「愛するために」("in order to love")
主要部分の組み合わせには次の四つのパターンがある。
- 完了時制の語尾が-āvīとなる。第1活用の動詞の大半はこのパターンであるため、これが「規則変化」とされる。
- amō, amāre, amāvī, amātum「愛する」("to love")
- imperō, imperāre, imperāvī, imperātum「命令する」("to order")
- laudō, laudāre, laudāvī, laudātum「讃える」("to praise")
- negō, negāre, negāvī, negātum「否定する」("to deny")
- nūntiō, nūntiāre, nūntiāvī, nūntiātum「告げる」("to announce, report")
- ōrō, ōrāre, ōrāvī, ōrātum「祈る」("to beg, pray")
- parō, parāre, parāvī, parātum「準備する」("to prepare")
- portō, portāre, portāvī, portātum「運ぶ」("to carry")
- pugnō, pugnāre, pugnāvī, pugnātum「戦う」("to fight")
- putō, putāre, putāvī, putātum「思う」("to think")
- rogō, rogāre, rogāvī, rogātum「尋ねる」("to ask")
- servō, servāre, servāvī, servātum「保存する」("to save")
- vocō, vocāre, vocāvī, vocātum「呼ぶ」("to call")
- 完了時制の語尾が-uīとなる。
- fricō, fricāre, fricuī, frictum「こする」("to rub")
- secō, secāre, secuī, sectum「切る」("to cut, to divide")
- vetō, vetāre, vetuī, vetitum「禁じる」("to forbid, to prohibit")
- 完了時制の語尾が–īとなり、語幹の母音が長母音化する。
- iuvō, iuvāre, iūvī, iūtum「助ける」("to help, to assist")
- lavō, lavāre, lāvī, lautum「洗う」("to wash, to bathe")
- 完了時制が畳音(en)により作られる。
- dō, dare, dedī, datum「与える」("to give")
- stō, stāre, stetī, statum「立つ」("to stand")
dō「私は与える」("I give")は、2人称単数dāsと命令法dāを除いて長母音が短母音aとなるため、不規則変化とされる。例:dabō「私は与えるだろう」("I will give")
stō「私は立つ」("I stand")ではスピーヌムのstatumとその派生語形でも長母音のāが短母音化するが、その他の活用形は規則変化である。
異態動詞では、全ての動詞が次のパターンに従う(上の表の受動態と同じ)[6]。
- arbitror, arbitrārī, arbitrātus sum「考える」("to think")
- cōnor, cōnārī, cōnātus sum「試みる」("to try")
- cūnctor, cūnctārī, cūnctātus sum「ためらう」("to hesitate")
- hortor, hortārī, hortātus sum「熱心に勧める」("to exhort")
- mīror, mīrārī, mīrātus sum「驚く」("to be surprised, to be amazed at")
完了時制
編集完了時制には三つがあり、その活用は以下のようになる。
直説法 | 接続法 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
現在完了 | 未来完了 | 過去完了 | 現在完了 | 過去完了 | |||
能動態 | I loved 愛した |
I will have loved 愛しただろう |
I had loved 以前愛していた |
I loved 愛したこと |
I had loved 愛したかもしれないこと | ||
1人称単数 2人称単数 3人称単数 1人称複数 2人称複数 3人称複数 |
amāvī amāvistī amāvit amāvimus amāvistis amāvērunt/-ēre* |
amāverō amāverīs/is amāverit amāverīmus/-imus amāverītis/-itis amāverint |
amāveram amāverās amāverat amāverāmus amāverātis amāverant |
amāverim amāverīs amāverit amāverīmus amāverītis amāverint |
amā(vi)ssem* amāvissēs amāvisset amāvissēmus amāvissētis amāvissent | ||
受動態 | I was loved 愛された |
I will have been loved 愛されただろう |
I had been loved 以前愛されていた |
I was loved 愛されたこと |
I had been loved 愛されたかもしれないこと | ||
1人称単数 2人称単数 3人称単数 1人称複数 2人称複数 3人称複数 |
amātus sum amātus es amātus est amātī sumus amātī estis amātī sunt |
amātus erō amātus eris amātus erit amātī erimus amātī eritis amātī erunt |
amātus eram amātus erās amātus erat amātī erāmus amātī erātis amātī erant |
amātus sim amātus sīs amātus sit amātī sīmus amātī sītis amātī sint |
amātus essem amātus essēs amātus esset amātī essēmus amātī essētis amātī essent |
*詩文・韻文では(リウィウスのような散文でも)、直説法現在完了の3人称複数はしばしばamāvēruntに代わりamāvēreが用いられる[7]。
*能動態完了時制の子音-v-は、特に接続法過去完了ではしばしば脱落する(amāvissem→amāssem)。直説法現在完了ではamāvistī→amāstī、過去完了ではamāverat→amāratの省略も見られる。
直説法未来完了は、初期のラテン語では短母音のiだったが(amāveris, amāverimus, amāveritis)、キケロの時代には長母音のīに変化していた。同形の接続法現在完了も同様[8]。ウェルギリウスはどちらの時制にも短母音のiを用いた。ホラティウスは二つの語形を混用していた。オウィディウスは未来完了で二つの語形を用いたが、接続法現在完了には長母音のīを用いた[9]。
受動態には女性形・中性形もある。例:amāta est「彼女は愛された」("she was loved")、nūntiātum est「それは告知された」("it was announced")
受動態で、直説法現在完了のamātus sumがamātus fuī、接続法過去完了のamātus essemがamātus foremとなるケースもある。Latin tenses (en)を参照。
その他の語形は次の通り。
- 能動態完了不定詞:amāvisse (amāsse)「愛したこと」("to have loved")
- 受動態完了不定詞:amātus esse (amātum esse)「愛されたこと」("to have been loved")
- 受動態完了分詞:amātus, -a, -um「(誰かに)愛された」("loved (by someone)")
第2活用
編集第2活用は長母音のēを特徴とし、直説法現在1人称単数の語尾-eōと能動態不定詞の語尾-ēreで識別される。
直説法 | 接続法 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
現在 | 未来 | 未完了過去 | 現在 | 過去 | |||
能動態 | I see 見る |
I will see 見るだろう |
I was seeing 見ていた |
I may see 見ること |
I might see 見るかもしれないこと | ||
1人称単数 2人称単数 3人称単数 1人称複数 2人称複数 3人称複数 |
videō vidēs videt vidēmus vidētis vident |
vidēbō vidēbis vidēbit vidēbimus vidēbitis vidēbunt |
vidēbam vidēbās vidēbat vidēbāmus vidēbātis vidēbant |
videam videās videat videāmus videātis videant |
vidērem vidērēs vidēret vidērēmus vidērētis vidērent | ||
受動態 | I am seen 見られる |
I will be seen 見られるだろう |
I was being seen 見られていた |
I may be seen 見られること |
I might be seen 見られるかもしれないこと | ||
1人称単数 2人称単数 3人称単数 1人称複数 2人称複数 3人称複数 |
videor vidēris vidētur vidēmur vidēminī videntur |
vidēbor vidēberis/e vidēbitur vidēbimur vidēbiminī vidēbuntur |
vidēbar vidēbāris/e vidēbātur vidēbāmur vidēbāminī vidēbantur |
videar videāris/e videātur videāmur videāminī videantur |
vidērer vidērēris/e vidērētur vidērēmur vidērēminī vidērentur |
受動態のvideorは「私は(他人に)~のように見える」("I seem")の意味にもなる。
その他の語形は次の通り。
- (能動態)不定詞:vidēre「見ること」("to see")
- 受動態不定詞:vidērī 「見られること」("to be seen")
- 命令法:vidē! (複数:vidēte!) 「見ろ!」("see!")
- 命令法未来:vidētō! (複数:vidētōte!)「見ろ!(未来のある時点で)」("see! (at a future time)")
- 受動態命令法:vidēre! (複数:vidēminī!)「見られろ!」("be seen!")(通常、異態動詞にのみ現れる)
- 現在分詞:vidēns (複数:videntēs)「見ている」("seeing")
- 未来分詞:vīsūrus (複数:vīsūrī)「見ているだろう」("going to see")
- 動形容詞(ゲルンディウム):videndus (複数:videndī)「見られるべき」("needing to be seen")
- 動名詞:videndī「見ることの」("of seeing"), videndō「見ることによって」("by /for seeing"), ad videndum「見るために」("in order to see")
主要部分の組み合わせには次のパターンがある。
- 現在完了の語尾が-uīとなる。このパターンの動詞は「規則変化」とされる。
- dēbeō, dēbēre, dēbuī, dēbitum「負う」("to owe, be obliged")
- doceō, docēre, docuī, doctum「教える」("to teach, to instruct")
- iaceō, iacēre, iacuī, iacitum「横たわる」("to lie (on the ground/bed)")
- mereō, merēre, meruī, meritum「値する」("to deserve")
- misceō, miscēre, miscuī, mixtum「混ぜる」("to mix")
- moneō, monēre, monuī, monitum「警告する」("to warn, advise")
- noceō, nocēre, nocuī, nocitum「害となる」("to be harmful")
- praebeō, praebēre, praebuī, praebitum「提示する」("to provide, show")
- teneō, tenēre, tenuī, tentum「つかむ」("to hold, to keep")
- terreō, terrēre, terruī, territum「脅す」("to frighten, to deter")
- timeō, timēre, timuī, –「恐れる」("to fear")
- valeō, valēre, valuī, (valitum)「価値がある」("to be strong")
- 現在完了の語尾が–ēvīとなる。
- dēleō, dēlēre, dēlēvī, dēlētum「壊す」("to destroy")
- fleō, flēre, flēvī, flētum「泣く」("to weep")
語尾が-vīとなる動詞では、短縮形をとるのが通常で、dēlēveram→dēlēram, dēlēvissem→dēlēssem, dēlēvistī→dēlēstīのように変化する[10]。
- 現在完了の語尾が–īvīとなる。
- cieō, ciēre, cīvī, citum「動かす」("to arouse, to stir")
- 現在完了の語尾が-sīとなる(子音cとgの後では–xīに変わる)。
- ārdeō, ārdēre, ārsī, ārsum「燃える」("to burn")
- augeō, augēre, auxī, auctum「増える」("to increase, to enlarge")
- haereō, haerēre, haesī, haesum「付く」("to stick, to adhere, to get stuck")
- iubeō, iubēre, iussī, iussum「命じる」("to order")
- maneō, manēre, mānsī, mānsum「留まる」("to remain")
- persuādeō, persuādēre, persuāsī, persuāsum「説得する」("to persuade")
- rīdeō, rīdēre, rīsī, rīsum「笑う」("to laugh")
- 現在完了が畳音で作られ、語尾が-īとなる。
- mordeō, mordēre, momordī, morsum「噛む」("to bite")
- spondeō, spondēre, spopondī, spōnsum「誓う」("to vow, to promise")
- 現在完了の語尾が-īとなり、語幹の母音が長母音化する。
- caveō, cavēre, cāvī, cautum「用心する」("to be cautious")
- faveō, favēre, fāvī, fautum「好む」("to favour")
- foveō, fovēre, fōvī, fōtum「愛する」("to caress, to cherish")
- sedeō, sedēre, sēdī, sessum「座る」("to sit")
- videō, vidēre, vīdī, vīsum「見る」("to see")
- 現在完了の語尾が-īとなる。
- respondeō, respondēre, respondī, respōnsum「答える」("to reply")
- strīdeō, strīdēre, strīdī, –「ヒューっと音を立てる」("to hiss, to creak") (第3活用のstrīdōの語形もある)
異態動詞は少数で、上記のterreōに準ずるものが大半であるが、fateorとconfiteorでは完了分詞にssの子音が現れる[11]。
- fateor, fatērī, fassus sum「告白する」("to confess")
- mereor, merērī, meritus sum「値する」("to deserve")
- polliceor, pollicērī, pollicitus sum「約束する」("to promise")
以下の動詞は三つの完了時制で態が受動態となるため、不完全な異動動詞(半異態動詞、セミ異態動詞、semi-deponent verb)とされる[12]。
- audeō, audēre, ausus sum「敢えて~する」("to dare")
- gaudeō, gaudēre, gāvīsus sum「喜ぶ」("to rejoice, to be glad")
- soleō, solēre, solitus sum「慣れる」("to be accustomed")
第3活用
編集第3活用は語幹の短母音e, i, uを特徴とし、能動態現在不定詞の–ereで識別される。
直説法 | 接続法 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
現在 | 未来 | 未完了過去 | 現在 | 過去 | |||
能動態 | I lead 導く |
I will lead 導くだろう |
I was leading 導いていた |
I may lead 導くこと |
I might lead 導くかもしれないこと | ||
1人称単数 2人称単数 3人称単数 1人称複数 2人称複数 3人称複数 |
dūcō dūcis dūcit dūcimus dūcitis dūcunt |
dūcam dūcēs dūcet dūcēmus dūcētis dūcent |
dūcēbam dūcēbās dūcēbat dūcēbāmus dūcēbātis dūcēbant |
dūcam dūcās dūcat dūcāmus dūcātis dūcant |
dūcerem dūcerēs dūceret dūcerēmus dūcerētis dūcerent | ||
受動態 | I am led 導かれる |
I will be led 導かれるだろう |
I was being led 導かれていた |
I may be led 導かれること |
I might be led 導かれるかもしれないこと | ||
1人称単数 2人称単数 3人称単数 1人称複数 2人称複数 3人称複数 |
dūcor dūceris dūcitur dūcimur dūciminī dūcuntur |
dūcar dūcēris/re dūcētur dūcēmur dūcēminī dūcentur |
dūcēbar dūcēbāris/re dūcēbātur dūcēbāmur dūcēbāminī dūcēbantur |
dūcar dūcāris/re dūcātur dūcāmur dūcāminī dūcantur |
dūcerer dūcerēris/re dūcerētur dūcerēmur dūcerēminī dūcerentur |
第3活用(と第4活用)では未来時制 (-am, -ēs, -et他)が第1・第2活用(-bō, -bis, -bit他)と異なっているのが顕著な特徴である。
その他の語形は次の通り。
- (能動態)不定詞:dūcere「導くこと」("to lead")
- 受動態不定詞:dūcī「導かれること」("to be led") (第1・第2活用と違い、第3活用では子音のrは入らない)
- 命令法:dūc! (複数:dūcite!)「導け!」("lead!")
- 命令法未来:dūcitō! (複数:dūcitōte!)「導け!(未来のある時点で)」("lead! (at a future time)")
- 受動態命令法:dūcere! (複数:dūciminī!)「導かれろ!」("be led!")(通常、異態動詞にのみ現れる)
- 現在分詞:dūcēns (複数:dūcentēs)「導いている」("leading")
- 未来分詞:ductūrus (複数:ductūrī)「導くだろう」("going to lead")
- 動形容詞:dūcendus (複数:dūcendī)「導かれるべき」("needing to be led")
- 動名詞:dūcendī「導くことの」("of leading"), dūcendō「導くことによって」("by /for leading"), ad dūcendum「導くために」("in order to lead")
次の四つの動詞は命令法2人称単数で語尾に母音が付かない。dūc!「導け!」("lead!"), dīc!「言え!」("say!"), fer!「運べ!」("bring!"), fac!「行え!」("do!")。 また、語尾が-eとなるcurre「走れ!」("run!")のような動詞もある[5]。
完了時制の作り方には次のパターンがある。
- 語尾が-sīとなる(子音のc, hの後では-xīに変わる)。
- carpō, carpere, carpsī, carptum「摘み取る」("to pluck, to select")
- cēdō, cēdere, cessī, cessum「行く、去る」("to yield, depart")
- claudō, claudere, clausī, clausum「閉める」("to close")
- contemnō, contemnere, contempsī, contemptum「軽蔑する」("to despise, disdain, treat with contempt")
- dīcō, dīcere, dīxī, dictum「言う」("to say")
- dīvidō, dīvidere, dīvīsī, dīvīsum「分ける」("to divide")
- dūcō, dūcere, dūxī, ductum「導く」("to lead")
- flectō, flectere, flexī, flexum「曲げる」("to bend, to twist")
- gerō, gerere, gessī, gestum「着る」("to wear, to bear; wage (war)")
- mittō, mittere, mīsī, missum「送る」("to send")
- regō, regere, rēxī, rēctum「支配する」("to rule")
- scrībō, scrībere, scrīpsī, scrīptum「書く」("to write")
- tegō, tegere, tēxī, tēctum「覆う」("to cover, conceal")
- trahō, trahere, trāxī, trāctum「引く」("to drag, to pull")
- vīvō, vīvere, vīxī, victum「住む」("to live")
- 完了時制が畳音で作られ、語尾が–īとなる。
- cadō, cadere, cecidī, cāsum「落ちる」("to fall")
- caedō, caedere, cecīdī, caesum「殺す」("to kill, to slay")
- currō, currere, cucurrī, cursum「走る」("to run, to race")
- discō, discere, didicī, –「習う」("to learn")
- fallō, fallere, fefellī, falsum「からかう」("to cheat")
- occīdō, occīdere, occīdī, occīsum「殺す」("to kill")
- pēdō, pēdere, pepēdī, pēditum「放屁する」("to fart")
- pellō, pellere, pepulī, pulsum「打つ」("to beat, to drive away")
- pōscō, pōscere, popōscī, –「要求する」("to claim, request")
- tangō, tangere, tetigī, tāctum「触れる」("to touch, to hit")
- tendō, tendere, tetendī, tentum/tēnsum「広げる」("to stretch")
dō, dare, dedī, datum「与える」("to give")は第1活用だが、複合動詞を形成すると第3変化となり、畳音が現れる。
- condō, condere, condidī, conditum「打ち立てる」("to found")
- crēdō, crēdere, crēdidī, crēditum「信じる」("to entrust, believe")
- dēdō, dēdere, dēdidī, dēditum「降伏する」("to surrender")
- perdō, perdere, perdidī, perditum「壊す」("to destroy, lose")
- reddō, reddere, reddidī, redditum「返す」("to give back")
- trādō, trādere, trādidī, trāditum「手渡す」("to hand over")
同様にsistōの複合動詞でも畳音が現れる。sistōは他動詞だが、複合動詞になると自動詞に変わる[13]。
- sistō, sistere, (stitī), statum「立てる」("to cause to stand")
- cōnsistō, cōnsistere, cōnstitī, cōnstitum「停止する」("to come to a halt")
- dēsistō, dēsistere, dēstitī, dēstitum「やめる」("to stand off")
- resistō, resistere, restitī, restitum「抵抗する」("to resist")
- 語尾が-vīとなる。
- linō, linere, lēvī (līvī), litum「塗る」("to smear, to daub") (第4活用のliniō, linīre, līvī, lītumの語形もある)
- petō, petere, petīvī, petītum「攻める」("to seek, to attack")
- quaerō, quaerere, quaesīvī, quaesītum「探す」("to look for, ask")
- serō, serere, sēvī, satum「撒く」("to sow, to plant")
- sternō, sternere, strāvī, strātum「広げる」("to spread, to stretch out")
- terō, terere, trīvī, trītum「こする」("to rub, to wear out")
- 語尾が-īとなり、語幹の母音が長母音化する。fundō, relinquōやvincōのように、現在語幹に子音のnがあると、完了時制で脱落する。また、*e-agī > ēgī, *e-emī > ēmīのように、完了時制の長母音が語源的に畳音に由来するケースもある[14]。
- agō, agere, ēgī, āctum「行う」("to do, to drive")
- cōgō, cōgere, coēgī, coāctum「集まる」("to compel, gather together")
- emō, emere, ēmī, ēmptum「買う」("to buy")
- fundō, fundere, fūdī, fūsum「注ぐ」("to pour")
- legō, legere, lēgī, lēctum「選ぶ、読む」("to collect, to read")
- relinquō, relinquere, relīquī, relictum「残す」("to leave behind")
- rumpō, rumpere, rūpī, ruptum「壊す」("to burst")
- vincō, vincere, vīcī, victum「打ち負かす」("to conquer, to defeat")
- 語尾が-īとなる。
- ascendō, ascendere, ascendī, ascēnsum「登る」("to climb, to go up")
- cōnstituō, cōnstituere, cōnstituī, cōnstitūtum「設立する」("to establish, decide, cause to stand")
- dēfendō, dēfendere, dēfendī, dēfēnsum「防御する」("to defend")
- expellō, expellere, expulī, expulsum「強要する」("to drive out, expel")
- īcō, īcere, īcī, ictum「叩く」("to strike")
- metuō, metuere, metuī, metūtum「恐れる」("to fear, be apprehensive")
- occīdō, occīdere, occīdī, occīsum「殺す」("to kill")
- ostendō, ostendere, ostendī, ostentum (ostensum)「見せる」("to show")
- tollō, tollere, sustulī, sublātum「持ち上げる」("to lift, raise, remove")
- vertō, vertere, vertī, versum「ひっくり返す」("to turn")
- vīsō, vīsere, vīsī, vīsum「訪れる」("to visit")
- 語尾が–uīとなる。
- colō, colere, coluī, cultum「耕す」("to cultivate, to till")
- cōnsulō, consulere, cōnsuluī, cōnsultum「助言する」("to consult, act in the interests of")
- gignō, gignere, genuī, genitum「生む、生じる」("to beget, to cause")
- molō, molere, moluī, molitum「挽く」("to grind")
- pōnō, pōnere, posuī, positum「置く」("to place")
- texō, texere, texuī, textum「編む」("to weave, to plait")
- vomō, vomere, vomuī, vomitum「吐く」("to vomit")
- 直説法現在の1人称単数の語尾が–scōとなる。
- adolēscō, adolēscere, adolēvī, adultum「育つ」("to grow up, to mature")
- nōscō, nōscere, nōvī, nōtum「知る」("to get to know, to learn")
- pāscō, pāscere, pāvī, pāstum「給餌する」("to feed upon, to feed (an animal)")
- quiēscō, quiēscere, quiēvī, quiētum「休む」("to rest, keep quiet")
異態動詞には次の例がある。
- complector, complectī, complexus sum「抱く」("to embrace")
- fruor, fruī, frūctus sum「楽しむ」("to enjoy") (fruitusの語形もある)
- fungor, fungī, fūnctus sum「遂行する」("to perform, discharge, busy oneself with")
- lābor, lābī, lāpsus sum「滑る」("to glide, slip")
- loquor, loquī, locūtus sum「話す」("to speak")
- nītor, nītī, nīxus sum「寄りかかる」("to lean on; to strive") (nīsusの語形もある)
- queror, querī, questus sum「不平を言う」("to complain")
- sequor, sequī, secūtus sum「従う」("to follow")
- ūtor, ūtī, ūsus sum「用いる」("to use")
- vehor, vehī, vectus sum「乗る」("to ride")
異態動詞には-scorの語尾をとるものがある。
- adipīscor, adipīscī, adeptus sum「獲得する」("to obtain")
- īrāscor, īrāscī, īrātus sum「怒る」("to get angry")
- nancīscor, nancīscī, nactus sum「獲得する」("to obtain")
- nāscor, nāscī, nātus sum「産まれる」("to be born")
- oblīvīscor, oblīvīscī, oblītus sum「忘れる」("to forget")
- proficīscor, proficīscī, profectus sum「出発する」("to set out")
- ulcīscor, ulcīscī, ultus sum「復讐する」("to avenge, take vengeance on")
完了時制でのみ態が受動態に変わる不完全な異態動詞としては次の例がある[12]。
- fīdō, fīdere, fīsus sum「信じる」("to trust")
次の動詞では完了時制以外でのみ態が受動態に変わる[12]。
- revertor, revertī, revertī「裏返す」("to turn back")
第3活用:-iō形
編集第3活用のうち、–iōの語尾をもつ動詞は第3活用と第4活用の中間形とされる。第4活用に似た語形も現れる。
直説法 | 接続法 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
現在 | 未来 | 未完了過去 | 現在 | 過去 | |||
能動態 | I capture つかむ |
I will capture つかむだろう |
I was capturing つかんでいた |
I may capture つかむこと |
I might capture つかむかもしれないこと | ||
1人称単数 2人称単数 3人称単数 1人称複数 2人称複数 3人称複数 |
capiō capis capit capimus capitis capiunt |
capiam capiēs capiet capiēmus capiētis capient |
capiēbam capiēbās capiēbat capiēbāmus capiēbātis capiēbant |
capiam capiās capiat capiāmus capiātis capiant |
caperem caperēs caperet caperēmus caperētis caperent | ||
受動態 | I am captured つかまれる |
I will be captured つかまれるだろう |
I was being captured つかまれていた |
I may be captured つかまれること |
I might be captured つかまれるかもしれないこと | ||
1人称単数 2人称単数 3人称単数 1人称複数 2人称複数 3人称複数 |
capior caperis capitur capimur capiminī capiuntur |
capiar capiēris/re capiētur capiēmur capiēminī capientur |
capiēbar capiēbāris/re capiēbātur capiēbāmur capiēbāminī capiēbantur |
capiar capiāris/re capiātur capiāmur capiāminī capiantur |
caperer caperēris/re caperētur caperēmur caperēminī caperentur |
その他の語形は次の通り。
- (能動態)不定詞:capere「つかむこと」("to capture, to take")
- 受動態不定詞:capī「つかまれること」("to be captured") (第3活用では子音のrが欠落する)
- 命令法:cape! (複数:capite!)「つかめ!」("capture!")
- 命令法未来:capitō! (複数:capitōte!)「つかめ!」(未来のある時点で)("capture! (at a future time)")
- 受動態命令法:capere! (複数:capiminī!)「つかまれろ!」("be captured!") (通常、異態動詞のみに現れる)
- 現在分詞:capiēns (複数:capientēs)「つかんでいる」("capturing")
- 未来分詞:captūrus (複数:captūrī)「つかむだろう」("going to capture")
- 動形容詞:capiendus (複数:capiendī)「つかまれるべき」("needing to be captured") (capiundusの語形もある)
- 動名詞:capiendī「つかむことの」("of capturing"), capiendō「つかむことによって」("by /for capturing"), ad capiendum「つかむために」("in order to capture")
次の動詞が含まれる。
- accipiō, accipere, accēpī, acceptum「受け入れる」("to receive, accept")
- capiō, capere, cēpī, captum「つかむ」("to take, capture")
- cōnspiciō, cōnspicere, cōnspexī, cōnspectum「つかみとる」("to take, capture")
- cupiō, cupere, cupīvī, cupītum「望む」("to desire, long for")
- faciō, facere, fēcī, factum「行う」("to do, to make")
- fugiō, fugere, fūgī, fugitum「逃げる」("to flee")
- iaciō, iacere, iēcī, iactum「投げる」("to throw")
- interficiō, interficere, interfēcī, interfectum「殺す」("to kill")
- rapiō, rapere, rapuī, raptum「奪う」("to plunder, seize")
- respiciō, respicere, respexī, respectum「振り返る」("to look back")
異態動詞には次のものがある。
- aggredior, aggredī, aggressus sum「攻撃する」("to attack")
- ēgredior, ēgredī, ēgressus sum「外へ出る」("to go out")
- morior, morī, mortuus sum「死ぬ」("to die")
- patior, patī, passus sum「被る」("to suffer, to allow")
- prōgredior, prōgredī, prōgressus sum「攻撃する」("to attack")
- regredior, regredī, regressus sum「後退する」("to go back")
第4活用
編集第4活用は長母音のīを特徴とし、能動態現在不定詞の–īreで識別される。
直説法 | 接続法 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
現在 | 未来 | 未完了過去 | 現在 | 過去 | |||
能動態 | I hear 聞く |
I will hear 聞くだろう |
I was hearing 聞いていた |
I may hear 聞くこと |
I might hear 聞くかもしれないこと | ||
1人称単数 2人称単数 3人称単数 1人称複数 2人称複数 3人称複数 |
audiō audīs audit audīmus audītis audiunt |
audiam audiēs audiet audiēmus audiētis audient |
audiēbam audiēbās audiēbat audiēbāmus audiēbātis audiēbant |
audiam audiās audiat audiāmus audiātis audiant |
audīrem audīrēs audīret audīrēmus audīrētis audīrent | ||
受動態 | I am heard 聞かれる |
I will be heard 聞かれるだろう |
I was being heard 聞かれていた |
I may be heard 聞かれること |
I might be heard 聞かれるかもしれないこと | ||
1人称単数 2人称単数 3人称単数 1人称複数 2人称複数 3人称複数 |
audior audīris audītur audīmur audīminī audiuntur |
audiar audiēris/re audiētur audiēmur audiēminī audientur |
audiēbar audiēbāris/re audiēbātur audiēbāmur audiēbāminī audiēbantur |
audiar audiāris/re audiātur audiāmur audiāminī audiantur |
audīrer audīrēris/re audīrētur audīrēmur audīrēminī audīrentur |
その他の語形は次の通り。
- (能動態)不定詞:audīre「聞くこと」("to hear")
- 受動態不定詞:audīrī「聞かれること」("to be heard")
- 命令法:audī! (複数:audīte!)「聞け!」("hear!")
- 命令法未来:audītō! (複数:audītōte!)「聞け!」(未来のある時点で)("hear! (at a future time)")
- 受動態命令法:audīre! (複数:audīminī!)「聞かれろ!」("be heard!") (通常、異態動詞のみに現れる)
- 現在分詞:audiēns (複数:audientēs)「聞いている」("hearing")
- 未来分詞:audītūrus (複数:audītūrī)「聞くだろう」("going to hear")
- 動形容詞:audiendus (複数:audiendī)「聞かれるべき」("needing to be heard")
- 動名詞:audiendī「聞くことの」("of hearing"), audiendō「聞くことによって」("by /for hearing"), ad audiendum「聞くために」("in order to hear")
主要部分の作り方には次のパターンがある。
- 完了時制の語尾が-vīとなる。このパターンが「規則変化」とされる。
- audiō, audīre, audīvī, audītum「聞く」("to hear, listen (to)")
- custōdiō, custōdīre, custōdīvī, custodītum「守る」("to guard")
- dormiō, dormīre, dormīvī (dormiī), dormītum「眠る」("to sleep")
- impediō, impedīre, impedīvī, impedītum「妨げる」("to hinder, impede")
- mūniō, mūnīre, mūnīvī, mūnītum「建てる」("to fortify, to build")
- pūniō, pūnīre, pūnīvī, pūnītum「罰する」("to punish")
- sciō, scīre, scīvī, scītum「知る」("to know")
- 完了時制の語尾が-uīとなる。
- aperiō, aperīre, aperuī, apertum「開ける」("to open, to uncover")
- 完了時制の語尾が-sīとなる(cの後では-xīに変わる)。
- saepiō, saepīre, saepsī, saeptum「囲む」("to surround, to enclose")
- sanciō, sancīre, sānxī, sānctum「承認する」("to confirm, to ratify")
- sentiō, sentīre, sēnsī, sēnsum「感じる」("to feel, to perceive")
- vinciō, vincīre, vīnxī, vīnctum「縛る」("to bind")
- 完了時制の語尾が-īとなり、畳音を伴う。
- reperiō, reperīre, repperī, repertum「見つける」("to find, discover")
- 完了時制の語尾が-īとなり、母音が長母音化する。
- veniō, venīre, vēnī, ventum「来る」("to come, to arrive")
- inveniō, invenīre, invēnī, inventum「見つける」("to find")
異態動詞には次のものがある[15]。
- assentior, assentīrī, assēnsus sum「賛成する」("to assent")
- experior, experīrī, expertus sum「経験する、試す」("to experience, test")
- largior, largīrī, largītus sum「気前よく与える」("to bestow")
- mentior, mentīrī, mentītus sum「嘘をつく」("to tell a lie")
- mētior, mētīrī, mēnsus sum「計測する」("to measure")
- mōlior, mōlīrī, mōlītus sum「動かす」("to exert oneself, set in motion, build")
- potior, potīrī, potītus sum「獲得する」("to obtain, gain possession of")
- sortior, sortīrī, sortītus sum「くじ引きをする」("to cast lots")
orior, orīrī, ortus sum「のぼる」("to arise")も第4活用だが、現在時制3人称単数oriturと接続法過去orererでは第3活用と同じく短母音になる。ただし、adorior「攻撃する」("to rise up, attack")のような複合動詞になると完全な第4活用となる。
完了時制では-v-を省略することもある。例:audīvistī, audīvērunt, audīverat, audīvisset→audīstī, audiērunt, audierat, audīsset
ただし、キケロは短縮形のaudiī, audiitよりも完全形のaudīvī, audīvitを好んで用いていた[10]。
不規則変化
編集sum, possum
編集英語のbe動詞に相当するsum, esse, fuī「~である」("to be")の活用は不規則変化となる[16]。以下には、その複合動詞であるpossum, posse, potuī(「potis sum」の縮約形)の活用を合わせて掲げる。補充動詞である。
直説法 | 接続法 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
現在 | 未来 | 未完了過去 | 現在 | 過去 | |||
能動態 | I am ~である |
I will be ~だろう |
I was ~であった |
I may be ~であること |
I might be ~であるかもしれないこと | ||
1人称単数 2人称単数 3人称単数 1人称複数 2人称複数 3人称複数 |
sum es est sumus estis sunt |
erō eris erit erimus eritis erunt |
eram erās erat erāmus erātis erant |
sim sīs sit sīmus sītis sint |
essem essēs esset essēmus essētis essent | ||
能動態 | I am able できる |
I will be able できるだろう |
I was able できていた |
I may be able できること |
I might be able できるかもしれないこと | ||
1人称単数 2人称単数 3人称単数 1人称複数 2人称複数 3人称複数 |
possum potes potest possumus potestis possunt |
poterō poteris poterit poterimus poteritis poterunt |
poteram poterās poterat poterāmus poterātis poterant |
possim possīs possit possīmus possītis possint |
possem possēs posset possēmus possētis possent |
初期のラテン語(プラウトゥスなど)では、接続法現在(sim, sīs, sit)にsiem, siēs, siētの活用形もあった。韻文では、fuam, fuās, fuatの活用形もある[17]。
接続法過去にはforem, forēs, foretの語形もある。Latin tenses#Foret (en)を参照。
その他の語形は次の通り。
- 不定詞:esse「~であること」("to be"), posse「できること」("to be able")
- 完了不定詞:fuisse「~であったこと」("to have been"), potuisse「できたこと」("to have been able")
- 未来不定詞:fore「~であるだろうこと」("to be going to be") (別形futūrus esseの語形もある)
- 命令法:es! (複数:este!)「~であれ!」("be!")
- 命令法未来:estō! (複数:estōte!)「~であれ!(未来のある時点で)」("be! (at a future time)")
- 未来分詞:futūrus (複数:futūrī)「~であるだろう」("going to be") (possumには未来分詞と未来不定詞が欠けている)
現在分詞は複合動詞のabsēns「不在である」("absent")とpraesēns「いる」("present")に現れる[17]。
プラウトゥスとルクレティウスの文章では、不定詞posse「できること」("to be able")がpotesseに変わることもあった。
主要部分は複合動詞を併せて次の通り。
- sum, esse, fuī「~である」("to be")
- absum, abesse, āfuī「不在である」("to be away")
- adsum, adesse, adfuī「いる、存在する」("to be present")
- dēsum, dēesse, dēfuī「欠けている」("to be wanting")
- possum, posse, potuī「できる」("to be able")
- prōsum, prōdesse, prōfuī「利する」("to be for, to profit") (子音のdが挿入される)[17]
完了時制は規則変化となる。
未完了過去eramと現在完了fuīの意味の違いについては、Difference between eram and fuī (en)を参照。
volō, nōlō, mālō
編集volō, nōlō, mālō (magis volōの短縮形)は第3活用に似ているが、接続法現在の語尾が-imとなる点が異なっている。補充動詞である。
直説法 | 接続法 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
現在 | 未来 | 未完了過去 | 現在 | 過去 | |||
能動態 | I want 欲する |
I will want 欲するだろう |
I was wanting 欲していた |
I may want 欲すること |
I might want 欲するかもしれないこと | ||
1人称単数 2人称単数 3人称単数 1人称複数 2人称複数 3人称複数 |
volō vīs vult volumus vultis volunt |
volam volēs volet volēmus volētis volent |
volēbam volēbās volēbat volēbāmus volēbātis volēbant |
velim velīs velit velīmus velītis velint |
vellem vellēs vellet vellēmus vellētis vellent | ||
能動態 | I am unwilling 不本意である |
I will be unwilling 不本意だろう |
I was unwilling 不本意だった |
I may be unwilling 不本意であること |
I might be unwilling 不本意かもしれないこと | ||
1人称単数 2人称単数 3人称単数 1人称複数 2人称複数 3人称複数 |
nōlō nōn vīs nōn vult nōlumus nōn vultis nōlunt |
nōlam nōlēs nōlet nōlēmus nōlētis nōlent |
nōlēbam nōlēbās nōlēbat nōlēbāmus nōlēbātis nōlēbant |
nōlim nōlīs nōlit nōlīmus nōlītis nōlint |
nōllem nōllēs nōllet nōllēmus nōllētis nōllent | ||
能動態 | I prefer 優先する |
I will prefer 優先するだろう |
I was preferring 優先していた |
I may prefer 優先すること |
I might prefer 優先するかもしれないこと | ||
1人称単数 2人称単数 3人称単数 1人称複数 2人称複数 3人称複数 |
mālō māvīs māvult mālumus māvultis mālunt |
mālam mālēs mālet mālēmus mālētis mālent |
mālēbam mālēbās mālēbat mālēbāmus mālēbātis mālēbant |
mālim mālīs mālit mālīmus mālītis mālint |
māllem māllēs māllet māllēmus māllētis māllent |
キケロの時代まではvultとvultisはvoltとvoltisのつづりで用いられていた[18]。
受動態の活用はない。
その他の語形は次の通り。
- 不定詞:velle「望むこと」("to want"), nōlle「望まないこと」("to be unwilling"), mālle「優先すること」("to prefer")
- 現在分詞:volēns「望んでいる」("willing"), nōlēns「望まない」("unwilling")
- 命令法:nōlī, 複数:nōlīte (nōlī mīrārī「驚くな!」("don't be surprised!")のような表現に使われる)
主要部分は次の通り。
- volō, velle, voluī「望む」("to want")
- nōlō, nōlle, nōluī「望まない、不本意である」("not to want, to be unwilling")
- mālō, mālle, māluī「優先する」("to prefer")
完了時制は規則変化になる。
eōとその複合動詞
編集eō「行く」("I go")は第4活用の不規則変化となり、語幹の母音eiがeかīに変わることがある。未来時制は第1・第2活用と同じ-bō, -bis, -bitの語尾となる[19]。
直説法 | 接続法 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
現在 | 未来 | 未完了過去 | 現在 | 過去 | |||
能動態 | I go 行く |
I will go 行くだろう |
I was going 行っていた |
I may go 行くこと |
I might go 行くかもしれないこと | ||
1人称単数 2人称単数 3人称単数 1人称複数 2人称複数 3人称複数 |
eō īs it īmus ītis eunt |
ībō ībis ībit ībimus ībitis ībunt |
ībam ībās ībat ībāmus ībātis ībant |
eam eās eat eāmus eātis eant |
īrem īrēs īret īrēmus īrētis īrent |
その他の語形は次の通り。
- (能動態)不定詞:īre「行くこと」("to go")
- 受動態不定詞:īrī「行くこと」("to go")。非人称動詞として用いられる。例:quō īrī dēbēret ignōrantēs「どの道を行くべきか知らずに」("not knowing which way to go")
- 命令法:ī! (複数:īte!)「行け!」("go!")
- 命令法未来:ītō! (複数:ītōte!)「行け!(未来のある時点で)」("go! (at a future time)")。ただし、使用されることは稀である。
- 現在分詞:iēns (複数:euntēs)「行っている」("going")
- 未来分詞:itūrus (複数:itūrī)「これから行くところである」("going to go")
- 動形容詞:eundum「行くべきである」("necessary to go")。非人称動詞としての使用に限定される。
- 動名詞:eundī「行くことの」("of going"), eundō「行くことによって」("by / for going"), ad eundum「行くために」("in order to go")
非人称の受動態、ītur「彼らは行く」("they go")、itum est「彼らは行った」("they went")の使用もしばしば見受けられる[20]。
eōと同様の活用をする動詞には以下がある。
- eō, īre, iī/(īvī), itum「行く」("to go")
- abeō, abīre, abiī, abitum「去る」("to go away")
- adeō, adīre, adiī, aditum「上がる」("to go up to")
- coeō, coīre, coiī, coitum「会う、集まる」("to meet, assemble")
- exeō, exīre, exiī/(exīvī), exitum「外へ出る」("to go out")
- ineō, inīre, iniī, initum「中へ入る」("to enter")
- intereō, interīre, interiī, interitum「消える」("to perish")
- introeō, introīre, introiī, introitum「入ってくる」("to enter")
- pereō, perīre, periī, peritum「死ぬ、消える」("to die, to perish")
- praetereō, praeterīre, praeteriī, praeteritum「通りかかる」("to pass by")
- redeō, redīre, rediī, reditum「帰る、戻る」("to return, to go back")
- subeō, subīre, subiī, subitum「下へ行く」("to go under, to approach stealthily, to undergo")
- vēneō, vēnīre, vēniī, vēnitum「売られる」("to be sold")
これら複合動詞の完了時制では子音の-v-が抜け落ちる[21]。ただし、俗ラテン語の聖書にはexīvitの語形も現れる。
ferōとその複合動詞
編集ferō, ferre, tulī, lātum「運ぶ」("to bring, to bear, to carry")は第3活用だが、語根のfer-に続く母音がしばしば脱落する点が不規則である(語中音消失、語尾音消失)。完了時制tulīとスピーヌム語幹lātumも不規則である[22]。補充動詞である。
直説法 | 接続法 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
現在 | 未来 | 未完了過去 | 現在 | 過去 | |||
能動態 | I bring 運ぶ |
I will bring 運ぶだろう |
I was bringing 運んでいた |
I may bring 運ぶこと |
I might bring 運ぶかもしれないこと | ||
1人称単数 2人称単数 3人称単数 1人称複数 2人称複数 3人称複数 |
ferō fers fert ferimus fertis ferunt |
feram ferēs feret ferēmus ferētis ferent |
ferēbam ferēbās ferēbat ferēbāmus ferēbātis ferēbant |
feram ferās ferat ferāmus ferātis ferant |
ferrem ferrēs ferret ferrēmus ferrētis ferrent | ||
受動態 | I am brought 運ばれる |
I will be brought 運ばれるだろう |
I was being brought 運ばれていた |
I may be brought 運ばれること |
I might be brought 運ばれるかもしれないこと | ||
1人称単数 2人称単数 3人称単数 1人称複数 2人称複数 3人称複数 |
feror ferris fertur ferimur feriminī feruntur |
ferar ferēris/re ferētur ferēmur ferēminī ferentur |
ferēbar ferēbāris/re ferēbātur ferēbāmur ferēbāminī ferēbantur |
ferar ferāris/re ferātur ferāmur ferāminī ferantur |
ferrer ferrēris/re ferrētur ferrēmur ferrēminī ferrentur |
未来時制(-am, -ēs, -et他)が第1・第2活用の語尾(-bō, -bis, -bit他)ではなく第3・第4活用になっている点に注意を要する。
その他の語形は次の通り。
- (能動態)不定詞:ferre「運ぶこと」("to bring")
- 受動態不定詞:ferrī「運ばれること」("to be brought")
- 命令法:fer! (複数:ferte!)「運べ!」("bring!")
- 受動態命令法:ferre! (複数:feriminī!)「運ばれろ!」("be carried!") (ただし、使用されることは稀である)
- 現在分詞:ferēns (複数:ferentēs)「運んでいる」("bringing")
- 未来分詞:lātūrus (複数:lātūrī)「運んでいるだろう」("going to bring")
- 動形容詞:ferendus (複数:ferendī)「運ばれるべき」("needing to be brought")
- 動名詞:ferendī「運ぶことの」("of bringing"), ferendō「運ぶことによって」("by /for bringing"), ad ferendum「運ぶために」("in order to bring")
複合動詞の主要部分には次の例がある[23]。
- afferō, afferre, attulī, allātum「~へ運ぶ」("to bring (to)")
- auferō, auferre, abstulī, ablātum「盗む」("to carry away, to steal")
- cōnferō, cōnferre, contulī, collātum「集める」("to collect")
- differō, differre, distulī, dīlātum「広める」("to put off")
- efferō, efferre, extulī, ēlātum「外へ運び出す」("to carry out")
- offerō, offerre, obtulī, oblātum「提供する」("to offer")
- referō, referre, rettulī, relātum「言及する」("to refer")
完了時制sustulīの現在形はtollōとなる。
- tollō, tollere, sustulī, sublātum「持ち上げる」("to raise, to remove")
fīō
編集不規則動詞のfīō, fierī, factus sum「成る、行われる、される」("to become, to happen, to be done, to be made")はfaciō, facere, fēcī, factum「行う、する」("to do, to make")の受け身の意味を持つ[24]。完了時制はfaciōの受動態完了時制と同形になる。補充動詞である。
直説法 | 接続法 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
現在 | 未来 | 未完了過去 | 現在 | 過去 | |||
能動態 | I become 成る |
I will become 成るだろう |
I was becoming 成っていた |
I may become 成ること |
I might become 成るかもしれないこと | ||
1人称単数 2人称単数 3人称単数 1人称複数 2人称複数 3人称複数 |
fīō fīs fit (fīmus) (fītis) fīunt |
fīam fīēs fīet fīēmus fīētis fīent |
fīēbam fīēbās fīēbat fīēbāmus fīēbātis fīēbant |
fīam fīās fīat fīāmus fīātis fīant |
fierem fierēs fieret fierēmus fierētis fierent |
現在時制の1人称複数・2人称複数は滅多に使われない。
その他の語形は次の通り。
- 不定詞:fierī「成ること」("to become, to be done, to happen")
- 命令法:fī! (複数:fīte!)「成れ!」("become!")
edō
編集edō, edere/ēsse, ēdī, ēsum「食べる」("to eat")は第3活用の規則変化だが、いくつかの活用形に不規則形もある点に注意を要する[25]。
直説法 | 接続法 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
現在 | 未来 | 未完了過去 | 現在 | 過去 | |||
能動態 | I eat 食べる |
I will eat 食べるだろう |
I was eating 食べていた |
I may eat 食べること |
I might eat 食べるかもしれないこと | ||
1人称単数 2人称単数 3人称単数 1人称複数 2人称複数 3人称複数 |
edō edis, ēs edit, ēst edimus editis, ēstis edunt |
edam edēs edet edēmus edētis edent |
edēbam edēbās edēbat edēbāmus edēbātis edēbant |
edam edās edat edāmus edātis edant |
ederem, ēssem ederēs, ēssēs ederet, ēsset ederēmus, ēssēmus ederētis, ēssētis ederent, ēssent |
その他の語形は次の通り。
- (能動態)不定詞:edere/ēsse「食べること」("to eat")
- 受動態不定詞:edī「食べられること」("to be eaten")
- 命令法:ede!/ēs! (複数:edite!/ēste)「食べろ!」("eat!")
- 現在分詞:edēns (複数:edentēs)「食べている」("eating")
- 未来分詞:ēsūrus (複数:ēsūrī)「食べるだろう」("going to eat")
- 動形容詞:edendus (複数:edendī)「食べられるべき」("needing to be eaten")
- 動名詞:edendī「食べることの」("of eating"), edendō「食べることによって」("by /for eating"), ad edendum「食べるために」("in order to eat" / "for eating")
受動態にはēstur「食べられる」("it is eaten")の活用形もある。
初期のラテン語では、接続法現在にedim, edīs, editの活用形もあった。
表記上は、sum「~である」("I am")とēdō「外へ出す、放つ」("I give out, put forth")との混乱が起きやすいので注意を要する。例:ēsse「食べること」("to eat") vs. esse「~であること」("to be")、edit「彼は食べる」("he eats") vs. ēdit「彼は外へ出す」("he gives out")
複合動詞のcomedō, comedere/comēsse, comēdī, comēsum「消費する」("to eat up, consume")も同様に注意を要する。
準動詞
編集準動詞(non-finite form)には分詞(participle)、不定詞(infinitive)、スピーヌム(supine)、動名詞(gerund)、動形容詞(gerundive)がある。
以下の例では次の動詞を用いる。
- 第1活用: laudō, laudāre, laudāvī, laudātum –「褒める」("to praise")
- 第2活用: terreō, terrēre, terruī, territum –「脅す」("to frighten, deter")
- 第3活用: petō, petere, petīvī, petītum –「探す」("to seek, attack")
- 第3活用(-i語幹): capiō, capere, cēpī, captum –「つかむ」("to take, capture")
- 第4活用: audiō, audīre, audīvī, audītum –「聞く」("to hear, listen (to)")
分詞
編集分詞(participle)には次の四つがある。能動態現在分詞(present active participle)、受動態完了分詞(perfect passive participle)、能動態未来分詞(future active participle)、受動態未来分詞(=動形容詞、ゲルンディウム)(future passive participle, =gerundive)。
詳しくは分詞、Participles (en)も参照のこと。
- 能動態現在分詞の格変化は第3格変化の形容詞と同様になる。単数奪格は-eとなり、複数属格は-ium、中性複数主格は-iaとなる。
- 能動態未来分詞の格変化は第1格変化と第2格変化の形容詞と同様になる。
- 男性単数主格はスピーヌムから-umを取り除き、-ūrusを付けて作られる。
- 受動態未来分詞は現在語幹に"-nd-"を付け、第1格変化と第2格変化の語尾を付けて作られる。例えば、laudāreはlaudandusとなり、意味は「褒められるべきである」という義務の意味になる。動形容詞、ゲルンディウム(gerundive)とも呼ばれる。
分詞 | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
laudāre | terrēre | petere | capere | audīre | ||||||
能動態現在分詞 | laudāns, -antis | terrēns, -entis | petēns, -entis | capiēns, -entis | audiēns, -entis | |||||
受動態完了分詞 | laudātus, -a, -um | territus, -a, -um | petītus, -a, -um | captus, -a, -um | audītus, -a, -um | |||||
能動態未来分詞 | laudātūrus, -a, -um | territūrus, -a, -um | petītūrus, -a, -um | captūrus, -a, -um | audītūrus, -a, -um | |||||
動形容詞 | laudandus, -a, -um | terrendus, -a, -um | petendus, -a, -um | capiendus, -a, -um | audiēndus, -a, -um |
不定詞
編集不定詞には次の七つがある。能動態現在不定詞(present active infinitive)、受動態現在不定詞(present passive infinitive)、能動態完了不定詞(perfect active infinitive)、受動態完了不定詞(perfect passive infinitive)、能動態未来不定詞(future active infinitive)、受動態未来不定詞(future passive infinitive)、能動態潜在不定詞(potential active infinitive)。これ以外の不定詞は動形容詞を用いて作られる。
詳しくは、不定詞、Latin infinitive (en)も参照のこと。
- 能動態現在不定詞は(規則動詞の)主要部分の2番目に当たる。間接話法での対格・不定詞構文などで重要な役目を担う。
- laudāre「褒めること」("to praise")
- 受動態現在不定詞は、第1・第2・第4活用では現在語幹に–rīを付けた形である。第3活用では、現在語幹の母音eを–īに換える。
- laudārī「褒められること」("to be praised")
- 能動態完了不定詞は完了語幹に–isseを付けた形である。
- laudāvisse/laudāsse「褒めたこと」("to have praised")
- 受動態完了不定詞は受動態完了分詞に助動詞のesseを組み合わせた形である。数・性・格(主格・対格)を一致させる必要がある。
- laudātus esse「褒められたこと」("to have been praised")
- 能動態未来不定詞は能動態未来分詞に助動詞のesseを組み合わせた形である。数・性・格(主格・対格)を一致させる必要がある。
- laudātūrus esse「(未来のある時点で)褒めること」("to be going to praise")
- esseにはfuturus esseとforeの二つの形がある。
- 受動態未来不定詞はスピーヌムに助動詞のīrīを組み合わせた形である。スピーヌムは数・性が変わっても不変である。
- laudātum īrī「(未来のある時点で)褒められること」("to be going to be praised")
- 通常、この不定詞が用いられるのは間接話法で、Spērat sē absolūtum īrī.[26]「彼は自分が解放されることを望んでいる」("He hopes that he will be acquitted")のように用いられる。
- 能動態潜在不定詞は能動態未来分詞に助動詞のfuisseを組み合わせた形である。
laudāre | terrēre | petere | capere | audīre | |
---|---|---|---|---|---|
能動態現在不定詞 | laudāre | terrēre | petere | capere | audīre |
受動態現在不定詞 | laudārī | terrērī | petī | capī | audīrī |
能動態完了不定詞 | laudāvisse | terruisse | petīvisse | cēpisse | audīvisse |
受動態完了不定詞 | laudātus esse | territus esse | petītus esse | captus esse | audītus esse |
能動態未来不定詞 | laudātūrus esse | territūrus esse | petītūrus esse | captūrus esse | audītūrus esse |
受動態未来不定詞 | laudātum īrī | territum īrī | petītum īrī | captum īrī | audītum īrī |
能動態潜在不定詞 | laudātūrus fuisse | territūrus fuisse | petītūrus fuisse | captūrus fuisse | audītūrus fuisse |
受動態未来不定詞が用いられるのは稀で、古代ローマ人もしばしば、代替形としてfore utに接続法の従属節を組み合わせる形を用いていた。
スピーヌム
編集スピーヌムは主要部分の4番目に当たる。その語形変化は男性名詞の第4格変化に似ている。スピーヌムは対格と奪格のみをとる。
詳しくは、スピーヌム、Latin supine (en)も参照のこと。
- 対格は語尾が–umとなり、動作の動詞とともに用いて目的を表す。動作の動詞は、実質上、ほぼīre「行く」("to go")やvenīre「来る」("to come")などに限定される。必要に応じて目的語を伴うことができる。
- Pater līberōs suōs laudātum vēnit. – 「父は自分の子供たちを褒めに来た」("The father came to praise his children")
- 奪格は語尾が–ūとなり、「特定の奪格」(=物事を特定するための奪格、ablative of specification)として用いられる。
- Arma haec facillima laudātū erant. – 「これらの武器は最も称賛されやすかった」("These arms were the easiest to praise")
スピーヌム | |||||
---|---|---|---|---|---|
laudāre | terrēre | petere | capere | audīre | |
対格 | laudātum | territum | petītum | captum | audītum |
奪格 | laudātū | territū | petītū | captū | audītū |
動名詞
編集動名詞は能動態現在分詞に語形が似ており、現在分詞の語尾-nsを-ndusに変え、前の長母音āやēを短母音化する。動名詞はラテン語名詞システムにおける中性名詞に当たるが、主格はない。「~すること」を意味し、不定詞に格変化がない点を補完する機能を担っている。属格形のlaudandīは「褒めることの」("of praising")、与格形のlaudandōは「褒めることのために」("for praising")、対格形のlaudandumは「褒めることを」("praising")、奪格形のlaudandōは「褒めることによって」「褒めることに関して」("by praising", "in respect to praising")の意味となる。
詳しくは、動名詞、Latin gerund (en)も参照のこと。
動名詞 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
laudāre | terrēre | petere | capere | audīre | ||
対格 | laudandum | terrendum | petendum | capiendum | audiendum | |
属格 | laudandī | terrendī | petendī | capiendī | audiendī | |
与格 | laudandō | terrendō | petendō | capiendō | audiendō | |
奪格 |
前置詞のadとともに用いると「目的」の意味になる。例:paratus ad oppugnandum - 「攻撃する準備ができている」("ready to attack")
ただし、目的語が付くと動名詞の使用は避けられ、動形容詞(ゲルンディウム、「~されるべき」)を用いる受動構文が使われた。例えば、「敵を攻撃する準備ができている」("ready to attack the enemy")は、paratus ad hostēs oppugnandumの構文よりも、paratus ad hostēs oppugnandōsの構文が好まれていた[28]。前者は対格(単数)のoppugnandumに目的語(複数)のhostēsが付く構文で、意味が「敵を(hostēs)攻撃する(oppugnandum)準備ができている(paratus ad)」となるのに対し、後者は前置詞のadにhostēs(複数)が付いてそのhostēsを動形容詞のoppugnandōsで修飾する構文となり、文字通りの意味が「攻撃されるべき(oppugnandōs)敵を(hostēs)準備できている(paratus ad)」となる。
動形容詞
編集動形容詞は動名詞と語形が似ているが、ラテン語の格変化システムにおける第1格変化と第2格変化の形容詞である。その機能は受動態未来分詞で、「(将来において)~されるべき」("(which is) to be ...ed")の意味になる。esseとともに用いると義務の意味(「~しなければならない」)となる。
詳しくは、Latin gerundive (en)、Latin periphrastic tenses (en)も参照のこと。
- Puer laudandus est - 「その少年は褒められなければならない」("The boy needs to be praised")
- Oratio laudanda est - 「その演説は褒められなければならない」("The speech is to be praised")。この場合、「褒める」行為者を与格で言うことができる。Oratio nobis laudanda est - 「その演説は私たちによって褒められなければならない」「私たちはその演説を褒めなければならない」("The speech is to be praised by us", "We must praise the speech")
動形容詞 | ||||
---|---|---|---|---|
laudāre | terrēre | petere | capere | audīre |
laudandus, -a, -um | terrendus, -a, -um | petendus, -a, -um | capiendus, -a, -um | audiendus, -a, -um |
古い時代のラテン語では、-undumの語尾をとる第3格変化と第4格変化の動形容詞があり、faciendumがfaciundumになっていた[5]。この語形はeō「行く」("I go")の動形容詞eundum est「行く必要がある」("it is necessary to go")に残っている。
迂言的な活用
編集能動態と受動態には迂言的な活用形もある。
能動態
編集能動態では未来分詞を用いる。esseに未来分詞を組み合わせ、意味は「私は褒めるつもりである」("I am going to praise")、「私は褒めるつもりだった」("I was going to praise")のようになる。
活用 | 意味 | |
---|---|---|
直説法現在 | laudātūrus sum | 褒めるつもりである I am going to praise |
直説法未完了過去 | laudātūrus eram | 褒めるつもりだった I was going to praise |
直説法未来 | laudātūrus erō | 褒めるつもりだろう I shall be going to praise |
直説法現在完了 | laudātūrus fuī | 褒めるつもりでいる I have been going to praise |
直説法過去完了 | laudātūrus fueram | 褒めるつもりでいた I had been going to praise |
直説法未来完了 | laudātūrus fuerō | 褒めるつもりでいただろう I shall have been going to praise |
接続法現在 | laudātūrus sim | 褒めるつもりであること I may be going to praise |
接続法過去 | laudātūrus essem | 褒めるつもりであるかもしれないこと I should be going to praise |
接続法現在完了 | laudātūrus fuerim | 褒めるつもりでいたこと I may have been going to praise |
接続法過去完了 | laudātūrus fuissem | 褒めるつもりでいたかもしれないこと I should have been going to praise |
受動態
編集受動態ではesseに動形容詞を組み合わせて義務の意味になる。例えば、「私は褒められる必要がある」("I am needing to be praised")、「私は褒められる必要があった」("I was needing to be praised")のような意味となる。
活用 | 意味 | |
---|---|---|
直説法現在 | laudandus sum | 褒められるべきである I am needing to be praised |
直説法未完了過去 | laudandus eram | 褒められるべきだった I was needing to be praised |
直説法未来 | laudandus erō | 褒められるべきだろう I will be needing to be praised |
直説法現在完了 | laudandus fuī | 褒められるべきだった I was needing to be praised |
直説法過去完了 | laudandus fueram | 褒められるべきだった I had been needing to be praised |
直説法未来完了 | laudandus fuerō | 褒められるべきだっただろう I will have been needing to be praised |
接続法現在 | laudandus sim | 褒められるべきこと I may be needing to be praised |
接続法過去 | laudandus essem | 褒められるべきかもしれないこと I should be needing to be praised |
接続法現在完了 | laudandus fuerim | 褒められるべきだったこと I may have been needing to be praised |
接続法過去完了 | laudandus fuissem | 褒められるべきだったかもしれないこと I should have been needing to be praised |
現在不定詞 | laudandus esse | 褒められるべきであること To be needing to be praised |
完了不定詞 | laudandus fuisse | 褒められるべきだったこと To have been needing to be praised |
その他
編集異態動詞と半異態動詞
編集異態動詞(deponent verb)とは受動態の活用をしながら能動の意味になる動詞を指す。主要部分は4番目のスピーヌムを省いて三つのみとなる。これは、3番目の要素である現在完了(通常の動詞は能動態)が受動態(迂言的な語形)となり、そこに用いられる完了分詞が4番目のスピーヌムと同じ語幹になるためである。
- 第1活用: mīror, mīrārī, mīrātus sum – 「称賛する」(to admire, wonder)
- 第2活用: polliceor, pollicērī, pollicitus sum – 「提供する」(to promise, offer)
- 第3活用: loquor, loquī, locūtus sum – 「言う」(to speak, say)
- 第4活用: mentior, mentīrī, mentītus sum – 「嘘をつく」(to tell a lie)
異態動詞は、通常の動詞の受動態には存在しない要素、すなわち、動名詞・スピーヌム・現在分詞・未来分詞・未来不定詞を、能動態の活用パターンに従って作る。
半異態動詞(セミ異態動詞、semi-deponent verb)とは、未完了相の時制(現在、未完了過去など)を通常の動詞の能動態活用パターンで作りながら、完了相の時制(現在完了、過去完了、未来完了など)は通常の動詞の受動態や異態動詞のように迂言的に作る、という、折衷的な異態動詞のことを指す。受動態完了分詞を持たず、その代わりに能動態完了分詞を持つのが特徴である。
- audeō, audēre, ausus sum – 「敢えて~する」(to dare, venture)
通常の動詞の受動態が自動詞になるのに対し、異態動詞では他動詞になるものがあり、この場合は目的語を従えることができる。
- hostes sequitur. – 「彼は敵を追う」("he follows the enemy")
注意:現代のロマンス系言語では文法上、異態動詞(や受動態の単純的な活用形も)を欠いている。古代ラテン語の異態動詞は、消滅した(そして、別の通常動詞や似た意味の動詞に置き換わった)か、異態動詞の語形を変化させたか、のいずれかの過程を辿った。後者の例では、mīrārīがスペイン語とイタリア語ではmirar, mirareに変わり、ラテン語での全ての活用形が、往時には存在しなかった能動態活用形へ転移した。また、audeōはosar, osareに変わったが、これは分詞aususを元に-ar動詞, -are動詞を創出した例である(母音のauはoに変わった)。
欠損動詞
編集欠損動詞(defective verb)とはある種の活用形を欠く(=活用表が不完全で空白のある)動詞を指す。
- 活用形が完了時制しかないものの、意味としては未完了の意味になる動詞がある。この場合、現在完了時制で現在を表し、過去完了時制で未完了過去を、未来完了時制で未来を表す。ōdīは語形は完了時制だが、「私は憎む」("I hate")という現在時制の意味になる。こうした動詞の主要部分には、直説法現在完了の1人称単数形と能動態完了不定詞を入れる。
- ōdī, ōdisse (未来分詞:ōsūrus) – 「憎む」(to hate)
- meminī, meminisse (命令法:mementō, mementōte) – 「記憶する」(to remember)
- coepī, coeptum, coepisse – 「開始済みである」(to have begun)
「手渡しなさい」("Hand it over")を意味するcedo (複数:cette)には命令法しかなく、従って2人称の語形しかない。
以下に不規則活用の動詞を示す。
aiō
編集aiō「表明する」("I affirm, state")の活用は次の通り。
aiōの活用 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
直説法 現在 |
直説法 未完了過去 |
接続法 現在 |
命令法 現在 | |||||
単数 | 複数 | 単数 | 複数 | 単数 | 複数 | 単数 | ||
1人称 | aiō | — | aiēbam | aiēbāmus | — | — | — | |
2人称 | ais | aiēbās | aiēbātis | aiās | ai | |||
3人称 | ait | aiunt | aiēbat | aiēbant | aiat | aiant | — |
- 能動態現在分詞:aiēns, aientis
inquam
編集inquam「言う」("I say")の活用は次の通り。
inquamの活用 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
直説法現在 | 直説法 未来 |
直説法 現在完了 |
直説法 未完了過去 | |||||
単数 | 複数 | 単数 | 単数 | 単数 | ||||
1人称 | inquam | inquimus | — | inquiī | — | |||
2人称 | inquis | inquitis | inquiēs | inquistī | ||||
3人称 | inquit | inquiunt | inquiet | inquit | inquiēbat |
for
編集for「話す」("to speak")の活用は次の通り。
forの活用 | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
直説法 現在 |
直説法 未来 |
直説法 現在完了 |
直説法 過去完了 |
命令法 現在 | ||||||
単数 | 複数 | 単数 | 単数 | 単数 | 単数 | 複数 | ||||
1人称 | for | — | fābor | fātus sum | fātus eram | — | — | |||
2人称 | — | — | — | — | fāre | fāminī | ||||
3人称 | fātur | fantur | fābitur | — | — |
- 能動態現在分詞:fāns, fantis
- 能動態現在不定詞:fārī (別形:fārier)
- スピーヌム:(対格) fātum, (奪格) fātū
- 動形容詞:fandus, –a, –um
- 動名詞:(属格)fandī, (与格・奪格)fandō(対格は無し)
ロマンス系言語ではこうした動詞をほぼ失っているが、ōdīのように生き残った動詞もある。ただし、イタリア語のodiareでは全ての活用形を有し(=欠損動詞ではない)、規則変化の動詞となっている。
非人称動詞
編集非人称動詞(impersonal verb)とは主語の人を欠く動詞のことで、英語では主語に「もの、こと」を表す代名詞のitを用いるが("It seems", "it is raining"など)、ラテン語では3人称単数の活用形を用いる。このタイプの動詞は主要部分の4番目(スピーヌム)を欠くという特徴がある。
- pluit, pluere, plūvit/pluit – 「雨が降る」(to rain, "it rains")
- ningit, ningere, ninxit – 「雪が降る」(to snow, "it snows")
- oportet, oportēre, oportuit – 「~するのが正しい」「~すべきだ」(to be proper, "it is proper", "one should/ought to")
- licet, licēre, licuit – 「許されている」「~してもいい」(to be permitted [to], "it is allowed [to]")
不規則な能動態未来分詞
編集能動態未来分詞は通常、スピーヌムの–umを取ってその代わりに–ūrusを付けて作るが、不規則な作り方もある。
能動態 現在 不定詞 |
スピーヌム | 能動態 未来 分詞 |
意味 |
---|---|---|---|
iuvāre | iūtum | iuvātūrus | 助けるだろう("going to help") |
lavāre/lavere | lavātum (受動態完了分詞lautus) |
lavātūrus | 洗うだろう("going to wash") |
parere | partum | paritūrus | 生み出すだろう("going to produce") |
ruere | rutum | ruitūrus | 落ちるだろう("going to fall") |
secāre | sectum | secātūrus | 切るだろう("going to cut") |
fruī | frūctum/fruitum | fruitūrus | 楽しむだろう("going to enjoy") |
nāscī | nātum | nātūrus/nascitūrus | 生まれるだろう("going to be born") |
morī | mortuum | moritūrus | 死ぬだろう("going to die") |
orīrī | ortum | oritūrus | のぼるだろう("going to rise") |
活用の代替形
編集活用形の中には、代替の語形が存在するものもある。古代ローマの著作家の中にはこの代替形を好んで用いた者もいた。
- 受動態の語尾–risが–reになる。
- laudābāris→laudābāre
- 完了時制の語尾–ēruntが–ēreになる(主に韻文で)。
- laudāvērunt→laudāvēre
- 受動態不定詞の語尾–īが–ierになる。
- laudārī→laudārier, dicī→dicier
活用の短縮形
編集活用形には、ある要素の省略・短縮が可能なケースがある。
- 完了時制の語尾–vの省略。
- laudāvisse→laudāsse
- laudāvistī→laudāstī
- laudāverant→laudārant
- laudāvisset→laudāsset
- nōscere「習う」("to learn")、movēre「動かす」("to move")とその複合動詞でも–vの省略が可能。
- nōvistī→nōstī
- nōvistis→nōstis
- commōveram→commōram
- commōverās→commōrās
脚注
編集- ^ Donatus [Ars Maior], 10.16.
- ^ Priscian, Liber octauus de uerbo (Corpus Grammaticorum Latinorum)
- ^ Daniel J. Taylor "Latin declensions and conjugations: from Varro to Priscian" Historie Épistémologie Langage 13.2 (1991), pp. 85–93.
- ^ e.g. Gildersleeve and Lodge, 3rd edition (1895), §120.
- ^ a b c d e Gildersleeve & Lodge (1895), p. 89.
- ^ Gildersleeve & Lodge, Latin Grammar (1895), §163.
- ^ Gildersleeve & Lodge (1895), p. 91.
- ^ C.J. Fordyce (1961), Catullus, note on Catullus 5.10.
- ^ Wackernagel (2009) Lectures on Syntax, p. 305, note 7.
- ^ a b Gildersleeve & Lodge (1895), p. 90.
- ^ Gildersleeve & Lodge, Latin Grammar (1895), §164.
- ^ a b c Gildersleeve & Lodge (1895), p. 114.
- ^ Gildersleeve & Lodge (1895), p. 105.
- ^ Gildersleeve & Lodge (1895), p. 107.
- ^ Gildersleeve & Lodge Latin Grammar (1985), §166.
- ^ Gildersleeve & Lodge (1895), pp. 66–68.
- ^ a b c Gildersleeve & Lodge (1895), p. 68.
- ^ Gildersleeve & Lodge (1895), p. 121.
- ^ Gildersleeve & Lodge (1895), pp. 115–6.
- ^ Gildersleeve & Lodge (1895), p. 116.
- ^ Gildersleeve & Lodge (1895), pp. 116, 90.
- ^ Gildersleeve & Lodge (1895), pp. 117–8.
- ^ Gildersleeve & Lodge (1895), p. 118.
- ^ Gildersleeve & Lodge (1895), p. 119.
- ^ Gildersleeve & Lodge (1895), pp. 118–119.
- ^ Cicero, Sull. 21.
- ^ Quintilian, 5.12.3.
- ^ Eitrem, S. (2006). Latinsk grammatikk (3 ed.). Oslo: Aschehoug. pp. 111
参考文献
編集- Bennett, Charles Edwin (1918). New Latin Grammar
- Gildersleeve, B.L. & Gonzalez Lodge (1895). Gildersleeve's Latin Grammar. 3rd Edition. (Macmillan)
- J.B. Greenough; G.L. Kittredge; A.A. Howard; Benj. L. D'Ooge, eds. (1903). Allen and Greenough's New Latin Grammar for Schools and College. Ginn and Company.
外部リンク
編集- Verbix(ラテン語の動詞の活用を表示)
- Latin Verb Synopsis Drill(ラテン語動詞活用の実力をテスト)
- Arbuckle Latin Conjugator(ラテン語の動詞の活用と英訳を表示)