ヤマ (ヨガ哲学)
禁戒。ヒンドゥー教とヨガの倫理哲学
ヤマ(サンスクリットयम、 yamas、禁戒) は、ヨガ哲学においての倫理規範を表す。ヤマとは制御や抑制を意味する。ヤマは、ヒンドゥー教の古典に由来し、自己規制のためのリストであり、戒律または誓約として表される。対をなすヤマが"してはいけないこと"を表すのに対し、ニヤマは"するべきこと"を表す。ヤマとニヤマは、人生を良く生きるための個人的義務とされている[1]。
由来と意味
編集ヤマの最初の言及は、紀元前2千年紀に編纂されたリグ・ヴェーダにあり、その後ヒンドゥー教の様々な文献で論じられている[2]。代表的には、紀元後4~5世紀に編纂されたパタンジャリのヨーガ・スートラで、5つのヤマが列挙され、多くのヒンドゥー経典でも"戒律"として定義されている。
パタンジャリは、ヨガの8つの実践である八支則の第一段階にヤマを位置づけている。これは、悟りを開き心身一如の実現に向けたヨガ実践の出発点です。ヤマとは、"有害な行為、言葉、思考の自制"を意味します[3]。
出典によるヤマ
編集ヤマの種類は出典により異なる
5つのヤマ
編集- アヒンサー (अहिंसा): Nonviolence 非暴力
- サティヤ(सत्य): Truthfulness 嘘をつかないこと
- アステーヤ (अस्तेय): Not stealing 盗まないこと
- ブラフマチャリヤ(ब्रह्मचर्य): Chastity,marital fidelity, sexual restraint 貞操、夫婦の貞操、性的節制
- アパリグラハ (अपरिग्रहः): Non-avarice, non-possessiveness 過度の欲望を控えること、所有欲に囚われないこと
10のヤマ
編集en:Shandilya Upanishad[5]、ハタ・ヨーガ・プラディーピカー[6]など
上記5つに加えて
- クシャマー(क्षमा): 忍耐力、寛容
- ドゥリティ(धृति): 目標達成のための決意
- ダヤー(दया): 思いやり,慈悲
- アールジャヴァ(आर्जव): 偽りのなさ、誠実さ
- ミターハーラ (मिताहार):適度な食事
古代・中世の60以上のインド文献でヤマについて論じられている。ほとんどはサンスクリット語で、いくつかは地域のインド語である。 リストに挙げられたヤマの順序、各ヤマの名称と性質、相対的な重点の置き方は文献により異なる[7]。
脚注
編集- ^ Lasater, Judith (November–December 1998). “Beginning the Journey”. Yoga Journal: 42–48.
- ^ Monier-Williams, Monier. “Yama”. Sanskrit English Dictionary with Etymology. Oxford University Press. p. 846
- ^ Sturgess, Stephen (2014). Yoga Meditation: Still Your Mind and Awaken Your Inner Spirit. Oxford, UK: Watkins Publishing Limited. pp. 18–19. ISBN 978-1-78028-644-0
- ^ Āgāśe, K. S. (1904). Pātañjalayogasūtrāṇi. Puṇe: Ānandāśrama. p. 102
- ^ Aiyar, K. N. (1914). Thirty Minor Upanishads. Kessinger Publishing. pp. 173–176. ISBN 978-1164026419
- ^ Svātmārāma; Pancham Sinh (1997). The Hatha Yoga Pradipika (5 ed.). Forgotten Books. p. 14. ISBN 978-1605066370 . "अथ यम-नियमाः अहिंसा सत्यमस्तेयं बरह्यछर्यम कश्हमा धृतिः दयार्जवं मिताहारः शौछम छैव यमा दश १७"
- ^ Bharti, S.V. (2001). Yoga Sutras of Patanjali: With the Exposition of Vyasa. Motilal Banarsidas. pp. 672–680. ISBN 978-8120818255