確率論や統計学において、確率変数 X の積率母関数またはモーメント母関数(英: moment-generating function)は、期待値が存在するならば次の式で定義される。
![{\displaystyle M_{X}(t):=E\left(e^{tX}\right),\quad t\in \mathbb {R} }](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/3280fa2a4e23f5711e63a990fd3e767e00eb55be)
積率母関数がそのように呼ばれるのは、t = 0 の周囲の開区間上でそれが存在する場合、それが確率分布のモーメントの母関数であるからである。
![{\displaystyle E\left(X^{n}\right)=M_{X}^{(n)}(0)={\frac {d^{n}M_{X}}{dt^{n}}}(0)}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/62a59fd93f2e429a60a17732715a2c3cef714b0a)
積率母関数がそのような区間について定義される場合、それにより確率分布が一意に決定される。
積率母関数で重要なことは、積分が収束しない場合、積率(モーメント)と積率母関数が存在しない可能性がある点である。これとは対照的に特性関数は常に存在するため、そちらを代わりに使うこともある。
より一般化すると、n-次元の確率変数ベクトル(ベクトル値確率変数)
の場合、
の代わりに
を使い、次のように定義する。
![{\displaystyle M_{\boldsymbol {X}}({\boldsymbol {t}}):=E\left(e^{{\boldsymbol {t}}\cdot {\boldsymbol {X}}}\right)}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/2f8a5527143ef88e304a7d6455d7c0bad3597403)
積率母関数はリーマン=スティルチェス積分で次のように与えられる。
-
ここで F は累積分布関数である。
X が連続な確率密度関数 f(X) を持つ場合、 は f(x) の両側ラプラス変換である。
-
ここで、 は i番目のモーメントである。
2つの独立な確率変数の和の積率母関数は次のようになる。
-
X1, X2, ..., Xn が一連の独立確率変数で(分布が同一である必要は無い)、
-
としたとき(ai は定数)、Sn の確率密度関数はそれぞれの Xi の確率密度関数の畳み込みとなり、Sn の積率母関数は次のようになる。
-
分布
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積率母関数
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二項分布 |
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コーシー分布 |
存在しない[1]。
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指数分布 |
for
|
正規分布 |
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ポアソン分布 |
|
- ^ Allan Gut: Probability: A Graduate Course. Springer-Verlag, 2012, ISBN 978-1-4614-4707-8, Chapter 8, Example 8.2.