メルテンスの定理(メルテンスのていり、Mertens' theorems)は、1874年ポーランド数学者フランツ・メルテンス英語版によって証明された、素数を含んだの評価に関する一連の定理である。 評価の厳しさは素数定理よりも弱いが、素数定理に比べ、証明が比較的容易である。

定理

編集

p が素数を走るとき、次の評価が成り立つ。

 
 
 

O, o はランダウの記号である。これらの不等式を順に、第一定理から第三定理と呼ぶ。

また第二定理に現れる定数 b をMeissel–Mertens定数英語版という。

第一定理の証明

編集

素数 p が n の階乗   を割り切る回数を   とおくと ルジャンドルの公式 より

 

であるから

 

が成り立つ。よって

 

となるから

 

となるが、チェビシェフ関数の初等的な評価より

 

が成り立ち、階乗の増大度について、

 

がすぐわかる(スターリングの公式はより強い近似を与えるが、上の近似はより容易に導かれる)から

 

となる定数  が存在する。一方

 

となる定数   が存在することは

 

が収束することからわかる。

第二定理の証明

編集

  とおく。第一定理より   である。よって積分

 

 のとき収束する。したがって、アーベルの総和公式より

 

となるので、第二定理は

 

について成り立つ。

第三定理の証明

編集

収束性は

 

および

 

から、第二定理よりすぐに導かれる。

定数部分が   であることの証明は概略のみ述べる。

 

とおく( g (s) についての等式はリーマンゼータ関数のオイラー積から得られる)。アーベルの総和公式を用いて

 

が得られる。ここで   とおくとオイラーの定数の積分表示から

 

となる。これと第二定理を用いて

 

が示せる。  より

 

つまり

 

である。再び第二定理を用いて

 

が得られ、第三定理が示される。

参考文献

編集
  • Hardy, G.H.; Wright, E.M. (2008) [1938]. An Introduction to the Theory of Numbers. Revised by D.R. Heath-Brown and J.H. Silverman. Foreword by Andrew Wiles. (6th ed.). Oxford: Oxford University Press. ISBN 978-0-19-921986-5. Zbl 1159.11001 
  • Apostol, Tom A. (1976). Introduction to analytic number theory. Undergraduate Texts in Mathematics. Springer-Verlag. doi:10.1007/978-1-4757-5579-4. ISBN 978-1-4757-5579-4. MR0434929. Zbl 0335.10001