ムレータ(Muleta)とは、闘牛の最後の場面で闘牛士が使う、赤いフランネル製の布とそれを支える棒のこと。最初の場面で闘牛士が用いるケープ(カポーテ)とは別物である。なお、片仮名表記ではムレタとも書かれるが、本稿では以降ムレータに統一する。

ムレータを使う闘牛士

概説

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ムレータは闘牛の最終局面で使用される道具である。ムレータは、エストック(主に刺突攻撃を行うための)と、闘牛士が最初の場面で用いていたケープとを覆い隠している。闘牛士は、このムレータをの気を引くために使用する。ムレータを右手に持つことをデレチャソ(derecha(右)+zo)、左手に持つことをナトゥラル(natural(ナチュラル))という。

牛は2色性色覚(2色型色覚とも。人間では色盲にあたる)であるため、本来、牛の気を引くために赤色を用いる必要はない。牛はカポーテのピンク色とムレータの赤色を正確に見分けることもできない。にもかかわらずムレータが赤色をしているのは、付着する血痕を見えにくくするため、およびそれが伝統であるためといった見栄え上の意味しかない。

ムレータが使われる場面

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闘牛には様々な場面が存在し、それぞれの場面に固有の名称が与えられている [注釈 1]

「faena」というのは牛を殺す直前に、闘牛士がムレータを使って牛を巧みに操り、牛の肩の間をエストックで刺して、牛の大動脈を切断するのに好都合な場所に追い込む場面である。もしfaenaに失敗した場合、牛を直ちに殺すために、闘牛士は副武器の(もう1本の)剣で牛の脊髄を切断する。これら牛を殺すための所作は、闘牛士が1人で行うものであり、これによって闘牛士は文字通り「牛殺し」の称号を得る。

関連項目

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注釈

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  1. ^ 「faena」の他に有名な場面としては、例えば「veronica」がある。 「veronica」は闘牛士が一箇所で静止した状態でケープを振ることで、突進してくる牛を避ける場面。