ムカシクロタチ学名Scombrolabrax heterolepis)は、スズキ目ムカシクロタチ亜目に所属する魚類の一種。水深100-900mを主たる生活範囲とする深海魚である。

ムカシクロタチ
ムカシクロタチ Scombrolabrax heterolepis
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
亜綱 : 新鰭亜綱 Neopterygii
: スズキ目 Perciformes
亜目 : ムカシクロタチ亜目 Scombrolabracoidei
: ムカシクロタチ科 Scombrolabracidae
: ムカシクロタチ属 Scombrolabrax
: ムカシクロタチ S. heterolepis
学名
Scombrolabrax heterolepis
Roule, 1921
英名
Longfin escolar

ムカシクロタチ亜目に含まれる魚類は本種のみで、ムカシクロタチ科ムカシクロタチ属はいずれも単型となっている。

分布

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ムカシクロタチは比較的まれな魚類で、太平洋(日本近海を含む)・インド洋大西洋熱帯亜熱帯域の深海に広く分布する一方、太平洋東部と大西洋南東部からは採集記録がない[2]。主な生息深度は100-900mで[3]海底から離れて生活する中層遊泳性の深海魚である。

形態

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体は左右に平たく側扁し、大きな眼をもつなど、外部形態はクロタチカマス科サバ亜目)と類似する。体色は暗褐色で、全長30cm程度にまで成長する。ムカシクロタチは上顎が下顎よりもやや長く、前に突き出すことができること、鰓蓋骨・前鰓蓋骨がギザギザの鋸歯状となっていることで区別される[4]。口は大きく、鋭い牙状の犬歯を備える。浮き袋は弾力性のある壁に覆われ、成魚では椎体の開口部(後述)に収まる。側線背鰭の直下を走行する[5]

背鰭は12本の棘条と14-16本の軟条で構成される[3]。胸鰭は長く発達し、先端は肛門の位置にまで達する[2]。臀鰭の棘条は2-3本、軟条は16-18本。椎骨は30個で、成魚では5-12番目の横突起が背方および側方に拡張し、腹側に開口部を有する[4]

分類

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ムカシクロタチ亜目は1科1属1種の単型で、ムカシクロタチが唯一の構成種である。本種の一般的形態はサバ亜目クロタチカマス科に類似するが、スズキ亜目・サバ亜目の両方の特徴を併せ持つことから、独立の亜目として分類されている。一方、分岐学的な解析に基づき、本種を Pomatomus 属(オキスズキ科)の姉妹群として位置付ける見解もある[4]

  • ムカシクロタチ亜目 Scombrolabracoidei
    • ムカシクロタチ科 Scombrolabracidae
      • ムカシクロタチ属 Scombrolabrax
        • ムカシクロタチ S. heterolepis

出典・脚注

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  1. ^ Iwamoto, T. 2015. Scombrolabrax heterolepis. The IUCN Red List of Threatened Species 2015: e.T21132418A42691879. https://dx.doi.org/10.2305/IUCN.UK.2015-4.RLTS.T21132418A42691879.en. Accessed on 17 November 2023.
  2. ^ a b 『日本の海水魚』 p.653
  3. ^ a b Scombrolabrax heterolepis”. FishBase. 2009年7月20日閲覧。
  4. ^ a b c 『Fishes of the World Fourth Edition』 pp.429-430
  5. ^ 『深海魚 暗黒街のモンスターたち』 p.156

関連項目

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参考文献

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