ミヤマシキミ
ミヤマシキミ(深山樒[3]、学名: Skimmia japonica)は、ミカン科ミヤマシキミ属の常緑低木。雌雄異株[2][4][5]。有毒植物。
ミヤマシキミ | ||||||||||||||||||||||||
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福島県浜通り地方 2017年5月
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分類(APG III) | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Skimmia japonica Thunb. var. japonica (1783)[1] | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
ミヤマシキミ(深山樒)[2] |
名称
編集和名ミヤマシキミは、「深山樒」の意で、山中に生え、枝葉の様子がシキミ(樒) Illicium anisatum に似ることによる[5][3]。ただし、シキミはミカン科ではなく、マツブサ科の植物である。
分布と生育環境
編集日本では、本州(宮城県以南[5]、関東地方以西[3])、四国、九州に分布し[6]、日本国外では、台湾の高所にも分布する[4]。低山地の林内の林下に生育する[4][6]。日陰に強く、日当たりのよくない場所でも生育する[6]。
形態・生態
編集常緑広葉樹の低木で[6]、樹高は50 - 150センチメートル (cm) になる[3]。幹は基部から直立して分枝する[3]。樹皮は灰色で、若い枝は緑色で無毛、いぼ状の腺点がある。葉は枝先にやや集まって互生し、葉身は長さ4 - 9 cm[3]、幅2 - 3.5 cmの披針形から倒披針状長楕円形で、先は短くとがり、基部はくさび形、葉縁は全縁になる。葉質は革質で両面は無毛、表面は光沢があり[6]、裏面には油点が散在する[3]。葉柄は長さ0.5 - 1 cmになり、すこし赤紫色を帯びる[2][4][5]。
花期は3 - 5月[6]。雌雄異株[6]。枝先に円錐花序をだして長さ2 - 5 cmの散房状になり、白色の香りのある花を多数つける[6][3]。花序軸に短毛が散生する。萼は広鐘形で小さく、浅く4裂し、萼裂片は広三角形で長さ約1ミリメートル (mm) になり先はややとがる。花は直径5 - 6 mm、花弁は4枚あり[3]、長楕円形で長さ4 - 5 mmになり、まばらに油点がある。雄花には雄蕊が4個あって花弁と同長で直立し、雌花には4個の小さな退化雄蕊と中央に1個の雌蕊がある[3]。子房は4室に分かれ、各室に1個の胚珠が下垂し、花柱は太く、柱頭は平たく浅く4 - 5裂する。
果実は球形の核果・液果で、直径8 - 9 mmになり[3]、12月 - 翌2月に赤く熟し、4個の核を含む。核は広卵形で長さ6 - 8 mmになり、先がとがり、1個の種子を含む[2][4][5]。4 - 5月ごろは、花と前年の果実を同時に観賞できる[6]。果実は赤く美しいが、有毒である[3]。
利用等
編集有毒植物で葉、果実にアルカロイドのスキミアニンやジクタムニンがあり、葉に多く含まれる[2][7]。誤食するとけいれんを伴う中毒を起こす[7]。かつては、頭痛や目まいなどの民間薬として使用され、また、煎じた汁は虫下しとして使われた[2]。
下位分類
編集和名、学名はYistによる。
- ウチダシミヤマシキミ Skimmia japonica Thunb. var. japonica f. yatabei H.Ohba[8]
- ツルシキミ Skimmia japonica Thunb. var. intermedia Komatsu f. repens (Nakai) Ohwi[9]
- ウチダシツルシキミ Skimmia japonica Thunb. var. intermedia Komatsu f. intermedia (Komatsu) T.Yamaz.[10]
- リュウキュウミヤマシキミ Skimmia japonica Thunb. var. lutchuensis (Nakai) Hatus. ex T.Yamaz.[11]
- ナガバツルミヤマシキミ Skimmia japonica Thunb. var. intermedia Komatsu f. longifolia (Makino)[12]
- 別名、ナガバツルシキミ[12]。
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ウチダシミヤマシキミ。葉の表面がへこむ。
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ウチダシミヤマシキミの葉の裏面。腺点がある。
脚注
編集- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Skimmia japonica Thunb. var. japonica ミヤマシキミ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月30日閲覧。
- ^ a b c d e f g h 『樹に咲く花(離弁花2)山溪ハンディ図鑑4』pp.238-239
- ^ a b c d e f g h i j k l 西田尚道監修 学習研究社編 2009, p. 80.
- ^ a b c d e f g h i 『改訂新版 日本の野生植物 3』pp.304-305
- ^ a b c d e f g h i 『新牧野日本植物圖鑑』p.379
- ^ a b c d e f g h i j 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 127.
- ^ a b c 『日本の有毒植物 フィールドベスト図鑑16』p.77
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Skimmia japonica Thunb. var. japonica f. yatabei H.Ohba”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年9月30日閲覧。
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Skimmia japonica Thunb. var. intermedia Komatsu f. repens (Nakai) Ohwi”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年9月30日閲覧。
- ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Skimmia japonica Thunb. var. intermedia Komatsu f. intermedia (Komatsu) T.Yamaz.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年9月30日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Skimmia japonica Thunb. var. lutchuensis (Nakai) Hatus. ex T.Yamaz.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年9月30日閲覧。
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Skimmia japonica Thunb. var. intermedia Komatsu f. longifolia (Makino)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年9月30日閲覧。
参考文献
編集- 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 3』平凡社、2016年。
- 佐竹元吉監修『日本の有毒植物』〈フィールドベスト図鑑16〉学研教育出版、2012年。
- 西田尚道監修 学習研究社編『日本の樹木』 5巻、学習研究社〈増補改訂 ベストフィールド図鑑〉、2009年8月4日、80頁。ISBN 978-4-05-403844-8。
- 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、127頁。ISBN 4-522-21557-6。
- 牧野富太郎原著、大橋広好・邑田仁・岩槻邦男編『新牧野日本植物圖鑑』北隆館、2008年。
- 茂木透、高橋秀男他『樹に咲く花(離弁花2)』〈山溪ハンディ図鑑4〉山と溪谷社、2000年。