ミジンコウキクサ属
ミジンコウキクサ属 (学名: Wolffia) はサトイモ科ウキクサ亜科に属する水草の1属である。池など淡水域の水面に浮遊して生育する。植物体は極めて微小 (0.3–1.5 mm) であり、根を欠く (右図)。世界最小の種子植物の属であり、また世界最小の花 (0.1–0.2 mm) をつける[5][6][7]。約11種が世界中に分布しており、日本ではミジンコウキクサ (Wolffia globosa) が見られる。
ミジンコウキクサ属 | |||||||||||||||||||||
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指についた Wolffia arrhiza
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分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Wolffia Horkel ex Schleid, 1844[1] | |||||||||||||||||||||
タイプ種 | |||||||||||||||||||||
Wolffia michelii Schleiden, 1844 = Wolffia arrhiza (L.) Horkel ex Wimm., 1857[2][3] | |||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||
watermeal[4] | |||||||||||||||||||||
下位分類 | |||||||||||||||||||||
特徴
編集微小な浮遊植物であり、水面に生育する[8]。植物体は葉状体 (葉と茎の区別がなく、フロンド frond ともよばれる[9]) だけからなり、根を欠く[1][8] (下図1)。ただし Wolffia microscopica では葉状体裏面から偽根 (pseudoroot) とよばれる突起が伸長する[10]。葉状体は長径 0.3–1.5 mm、球状から長卵形で厚さは厚く、脈を欠く[1][5][8][11]。葉状体全面が透明感がある緑色から濃緑色であり、ウキクサのように裏面が赤味を帯びることはない[8][12]。表皮に色素細胞をもつ種もいる (Wolffia borealis, Wolffia brasiliensis)[12]。シュウ酸カルシウム結晶を含まない[12]。通気組織を欠く[1]。葉状体基部に1個の出芽嚢があり、そこから新たな葉状体を形成して出芽状に増殖するため、葉状体は単体または2個がつながった状態でいる[1][5][8] (下図1)。増殖速度が極めて速く (被子植物の中で最速ともされる)、倍加時間が1日以下のこともある[13]。多くの種において、娘葉状体が水底に沈んで越冬する殖芽として機能することがある[12]。
葉状体上面中央付近の窪み (花孔; floral cavity) の中に、1個の雄しべと1個の雌しべからなる微小な花を1個つける[1][6][8][9][12] (1個の雄花と1個の雌花とされることもある[7][14]) (上図1b)。一般的に花をつけるのはまれであるが、Wolffia microscopica は他の種よりも頻繁に花を形成する[9]。雄しべの葯は2花粉嚢からなる[8]。植物体の中で、雄しべの花糸にのみ維管束が痕跡的に存在する[5]。雌しべは基部側に位置し、柱頭は漏斗状、分泌滴を分泌する[9][12]。子房は1室、1個の直生胚珠を含む[1][8][12]。果実は胞果、ほぼ球形 (ときにやや扁平)、1個の種子を含む[12]。種子は円錐形の蓋をもち、ほぼ平滑で明瞭な肋を欠く[1][8][12]。
Wolffia australiana において核ゲノム塩基配列 (357 Mbp; Mbp = 100万塩基対)、および1日を通したトランスクリプトーム (転写産物) 日周変化データが報告されている[13]。属内でゲノムサイズに大きな多様性があり、Wolffia arrhiza のゲノムサイズは 1,881 Mbp と推定されている[15]。またミジンコウキクサ (Wolffia globosa) などでは、色素体DNAの塩基配列が報告されている[16][17]。
分布・生態
編集南北アメリカ、アフリカ、ヨーロッパ、西アジア、南アジア、東アジア、東南アジア、オーストラリアなど世界中の熱帯から温帯域に分布している[1][5]。日本にはミジンコウキクサ (Wolffia globosa) が生育している[5][注 1]。湖沼や水路など、淡水止水域または緩やかな流水域の水面に生育する[21] (右図2)。
人間との関わり
編集ミジンコウキクサ属は増殖が速く、タンパク質含量が高い (乾燥重量の30%前後)[22]。また他のウキクサ類とは異なり、シュウ酸塩を含まない[23]。そのためミジンコウキクサ属を食用とするための研究が行われており、また実際にタイなどではミジンコウキクサが市場で食用に売買されている地域もある (khai-nam とよばれる)[16][23][24]。家畜や観賞魚用の飼料に用いられている例もある[23][25]。また環境浄化 (栄養塩の除去など) への利用を目的とした研究も行われている[26][27]。
系統と分類
編集ミジンコウキクサ属にはおよそ11種が知られている[1][8][28] (下表)。ただし分子系統学的解析からは、この中で Wolffia brasiliensis は他のミジンコウキクサ属の種よりも別属である Wolffiella に近縁であることが示唆されることがある[29] (下系統樹)。
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ウキクサ亜科 (特にミジンコウキクサ属) の系統仮説[29][30] |
ミジンコウキクサ属の種までの分類体系[1][29][30][28]
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脚注
編集注釈
編集- ^ 日本で見られるミジンコウキクサの学名には、Wolffia microscopica や Wolffia arrhiza が充てられていたことがある[18][19][20]。
- ^ 分子系統学的研究からは、Wolffia borealis と Wolffia brasiliensis の近縁性は支持されていない[29][30] (上図)。
- ^ Wolffia elongata は独自の Elongatae 節に分類されていたが[28]、分子系統学的研究からは Wolffia 節に含まれることが示されている[29][30] (上図)。
- ^ Wolffia australiana は Wolffia 節に分類されていたが[28]、この分類学的位置は分子系統学的研究からは支持されていない[29][30] (上図)。
出典
編集- ^ a b c d e f g h i j k l m n “Wolffia”. Plant of the World online. Kew Botanical Garden. 2021年6月22日閲覧。
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- ^ “Wolffia michelii”. Plant of the World online. Kew Botanical Garden. 2021年6月28日閲覧。
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外部リンク
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