マッド・ドッグス&イングリッシュメン
『マッド・ドッグス&イングリッシュメン』(Mad Dogs & Englishmen)は、イングランドの歌手ジョー・コッカーが1970年に発表した初のライブ・アルバム。同年3月末にニューヨークのフィルモア・イーストで録音され、2枚組のLPレコードとして発売された。
『マッド・ドッグス&イングリッシュメン』 | ||||
---|---|---|---|---|
ジョー・コッカー の ライブ・アルバム | ||||
リリース | ||||
録音 | 1970年3月27日 - 28日 ニューヨーク フィルモア・イースト | |||
ジャンル | ロック、ブルースロック、スワンプ・ロック | |||
時間 | ||||
レーベル | A&Mレコード | |||
プロデュース | デニー・コーデル、レオン・ラッセル | |||
専門評論家によるレビュー | ||||
チャート最高順位 | ||||
| ||||
ジョー・コッカー アルバム 年表 | ||||
|
本作を発売したA&Mレコードの設立者の1人であるジェリー・モスは、本作を評して「まれに見るレコードで、我々が出してきたレコードの中でも特に偉大なものの1つ」であると語っている[6]。
CDでは1枚にまとめられた。オリジナル・アルバムの録音・発表から35周年に当たる2005年には、多くのボーナス・トラックを追加したCD2枚組のデラックス・エディション盤が発売された[7]。
背景
編集コッカーが1970年3月から5月にかけて行ったアメリカ・ツアーには、彼のバック・バンドであるグリース・バンドのメンバーだったクリス・ステイントンに加えて、本作をプロデュースしたレオン・ラッセルの人脈のアメリカ人ミュージシャンが多数参加した。その中には、この年にデレク・アンド・ザ・ドミノスのメンバーとなるカール・レイドルとジム・ゴードン、翌1971年に初のソロ・アルバムを発表するリタ・クーリッジ、後にジョン・レノンやジョージ・ハリスンのレコーディングに参加するジム・ケルトナー、後にローリング・ストーンズのサポート・メンバーとなるボビー・キーズがいた。本作のもう1人のプロデューサーだったデニー・コーデルはゴードン、ケルトナー、チャック・ブラックウェル[8]と3人ものドラマーを起用する案に反対してラッセルに「1人で十分」と言ったが、ラッセルは「2人に『来るな』なんて言えるのかい?」と反論したという[6]。
3月13日からリハーサルが始められ、17日のリハーサルではシングル用の「あの娘のレター」「スペース・キャプテン」が録音された[9]。コッカーら一行は19日にデトロイトへ向かい、翌日に初日の公演を行った[9]。
本作には初日から約一週間後にニューヨークのフィルモア・イーストで行われた公演の模様が収録された。彼の前2作のスタジオ・アルバムでは取り上げられていなかったローリング・ストーンズの「ホンキー・トンク・ウィメン」やボブ・ディランの「北国の少女」、コーラスのクーリッジがリード・ボーカルを担当したデラニー&ボニー・アンド・フレンズの「スーパースター」等のカヴァーが収録された。
反響
編集母国イギリスでは初の全英アルバムチャート入りを果たして最高16位に達した[3]。アメリカのBillboard 200でも初のトップ10入りを果たし、『ビルボード』誌のR&Bアルバム・チャートでは23位に達した[1]。オランダのアルバム・チャートでは、1971年10月に2週間トップ10入りした[2]。
デラックス・エディション盤
編集2005年に発売されたCD2枚組のデラックス・エディション盤には、コッカー以外のメンバーがリード・ボーカルを担当したものを含むライブ音源8曲と、スタジオ録音の4曲が追加され、曲順も変更された。
ライブ音源のうちクローディア・レニアが歌った「レット・イット・ビー」のカヴァーは、レオン・ラッセルとレニアが連名で発表したシングル「バラード・オブ・マッド・ドッグス&イングリッシュメン」(1971年)のB面収録曲だった[10]。ディスク2の最後の4曲がスタジオ録音による音源で、「あの娘のレター」と「スペース・キャプテン」は未発表だったステレオ・ミックスのヴァージョンが収録された[11]。
収録曲
編集オリジナル盤
編集- イントロダクション - Introduction - 0:43
- ホンキー・トンク・ウィメン - Honky Tonk Women (Mick Jagger, Keith Richards) - 3:47
- イントロダクション - Introduction - 0:17
- スティックス・アンド・ストーンズ - Sticks and Stones (Titus Turner, Henry Glover) - 2:37
- クライ・ミー・ア・リヴァー - Cry Me a River (Arthur Hamilton) - 4:00
- バード・オン・ザ・ワイアー - Bird on the Wire (Leonard Cohen) - 6:34
- フィーリン・オールライト - Feelin' Alright (Dave Mason) - 5:47
- スーパースター - Superstar (Leon Russell, Bonnie Bramlett) - 5:02
- イントロダクション - Introduction - 0:16
- レッツ・ゴー・ゲット・ストーンド - Let's Go Get Stoned (Valerie Simpson, Nickolas Ashford, Joseph Armstead) - 7:30
- ブルー・メドレー - Blue Medley - 12:46
- アイル・ドラウン・イン・マイ・オウン・ティアーズ - I'll Drown in My Own Tears (Henry Glover)
- 僕のベイビーに何か - When Something Is Wrong with My Baby (Isaac Hayes, David Porter)
- アイヴ・ビーン・ラヴィング・ユー・トゥー・ロング - I've Been Loving You Too Long (Otis Redding, Jerry Butler)
- イントロダクション - Introduction - 0:21
- 北国の少女 - Girl from the North Country (Bob Dylan) - 2:32
- ギヴ・ピース・ア・チャンス - Give Peace a Chance (L. Russell, B. Bramlett) - 4:24
- イントロダクション - Introduction - 0:41
- シー・ケイム・イン・スルー・ザ・バスルーム・ウィンドウ - She Came in Thru the Bathroom Window (John Lennon, Paul McCartney) - 3:01
- スペース・キャプテン - Space Captain (Matthew Moore) - 5:15
- あの娘のレター - The Letter (Wayne Carson Thompson) - 4:46
- デルタ・レディ - Delta Lady (L. Russell) - 5:40
2005年デラックス・エディション盤
編集※は2005年盤に追加収録された音源。
ディスク1
編集- ホンキー・トンク・ウィメン - Honky Tonk Women (Mick Jagger, Keith Richards) - 4:57
- シー・ケイム・イン・スルー・ザ・バスルーム・ウィンドウ - She Came in Thru the Bathroom Window (John Lennon, Paul McCartney) - 3:18
- ザ・ウェイト - The Weight (Robbie Robertson) - 5:57(※)
- スティックス・アンド・ストーンズ - Sticks and Stones (Titus Turner, Henry Glover) - 2:46
- バード・オン・ア・ワイアー - Bird on a Wire (Leonard Cohen) - 6:31
- クライ・ミー・ア・リヴァー - Cry Me a River (Arthur Hamilton) - 4:05
- スーパースター - Superstar (Leon Russell, Bonnie Bramlett) - 4:59
- フィーリン・オールライト - Feelin' Alright (Dave Mason) - 5:47
- サムシング - Something (George Harrison) - 5:33(※)
- ダーリン・ビー・ホーム・スーン - Darling Be Home Soon (John Sebastian) - 5:48(※)
- レット・イット・ビー - Let It Be (J. Lennon, P. McCartney) - 3:40(※)
- ファーザー・オン・アップ・ザ・ロード - Further on Up the Road (Don Robey, Joe Veasey) - 4:00(※)
ディスク2
編集- レッツ・ゴー・ゲット・ストーンド - Let's Go Get Stoned (Valerie Simpson, Nickolas Ashford, Joseph Armstead) - 8:04
- スペース・キャプテン - Space Captain (Matthew Moore) - 5:19
- ハミングバード - Hummingbird (L. Russell) - 4:07(※)
- ディキシー・ララバイ - Dixie Lullaby (L. Russell, Chris Stainton) - 2:57(※)
- あの娘のレター - The Letter (Wayne Carson Thompson) - 4:31
- デルタ・レディ - Delta Lady (L. Russell) - 7:02
- ギヴ・ピース・ア・チャンス - Give Peace a Chance (L. Russell, B. Bramlett) - 4:45
- オールド・タイム・ブルース・メドレー - Blue Medley - 12:36
- アイル・ドラウン・イン・マイ・オウン・ティアーズ - I'll Drown in My Own Tears (Henry Glover)
- 僕のベイビーに何か - When Something Is Wrong with My Baby (Isaac Hayes, David Porter)
- アイヴ・ビーン・ラヴィング・ユー・トゥー・ロング - I've Been Loving You Too Long (Otis Redding, Jerry Butler)
- ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ(心の友) - With a Little Help from My Friends (J. Lennon, P. McCartney) - 8:38(※)
- 北国の少女 - Girl from the North Country (Bob Dylan) - 2:43
- ウォーム・アップ・ジャム インクルーディング アンダー・マイ・サム - Warm-Up Jam (Including Under My Thumb) (M. Jagger, K. Richards) - 5:43(※)
- あの娘のレター(シングル・ヴァージョン/未発表ステレオ・ミックス) - The Letter (Studio Single Version) (W. C. Thompson) - 4:11(※)
- スペース・キャプテン(シングル・ヴァージョン/未発表ステレオ・ミックス) - Space Captain (Studio Single Version) (M. Moore) - 4:31(※)
- バラード・オブ・マッド・ドッグス&イングリッシュメン - The Ballad of Mad Dogs & Englishmen (L. Russell) - 4:00(※)
参加ミュージシャン
編集- ジョー・コッカー - ボーカル
- レオン・ラッセル - リード・ボーカル(on "Hummingbird", "Dixie Lullaby", "The Ballad of Mad Dogs & Englishmen")、ギター、ピアノ、アレンジ
- クリス・ステイントン - ピアノ、オルガン、アレンジ
- ドン・プレストン - リード・ボーカル(on "Further on Up the Road")、リズムギター、コーラス
- カール・レイドル - ベース
- ジム・ゴードン - ドラムス
- ジム・ケルトナー - ドラムス
- チャック・ブラックウェル - パーカッション、ドラムス
- サンディ・コニコフ - パーカッション
- ボビー・トーレス - コンガ
- ジム・プライス - トランペット
- ボビー・キーズ - テナー・サックス
- リタ・クーリッジ - リード・ボーカル(on "Superstar")、コーラス
- クローディア・レニア - リード・ボーカル(on "Let It Be")、コーラス
- ダニエル・ムーア - コーラス
- ドナ・ワイス - コーラス
- パメラ・ポランド - コーラス
- マシュー・ムーア - コーラス
- ドナ・ウォッシュバーン - コーラス
- ニコル・バークレイ - コーラス
- ボビー・ジョーンズ - コーラス
脚注
編集- ^ a b “Joe Cocker - Awards”. AllMusic. 2015年10月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年1月21日閲覧。
- ^ a b dutchcharts.nl - Joe Cocker - Mad Dogs And Englishmen
- ^ a b ChartArchive - Joe Cocker
- ^ norwegiancharts.com - Joe Cocker - Mad Dogs And Englishmen
- ^ 『オリコンチャート・ブックLP編(昭和45年‐平成1年)』(オリジナルコンフィデンス/1990年/ISBN 4-87131-025-6)p.170
- ^ a b 1999年ヨーロッパ盤再発CD(A&M Records/490 449-2)英文ライナーノーツ(J. P. Bean、1999年)
- ^ Amazon.com: Mad Dogs & Englishmen (Dix): Joe Cocker: Music
- ^ “Discogs”. 2024年5月22日閲覧。
- ^ a b 1999年ヨーロッパ盤再発CD(A&M Records/490 449-2)英文ライナーノーツ内「THE MAD DOG DIARY」(John Mendelsohn)
- ^ Leon Russell / Claudia Lennear - The Ballad Of Mad Dogs & Englishmen at Discogs
- ^ マッド・ドッグス&イングリッシュメン+12<デラックス・エディション> |ジョー・コッカー|Listen Japan