マギー・メイ

イギリス・リヴァプールの民謡
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マギー・メイ」(Maggie MayMaggie Mae)は、イギリスリヴァプールに伝わる民謡である。歌詞は、港町に集まる船乗りを相手にしていたコソ泥の娼婦を歌ったもの。1950年代後半よりスキッフル・バージョンが広く普及した。

1964年にライオネル・バート英語版は、本作およびその裏話を元に、リヴァプールのドックを舞台としたミュージカルを制作。このミュージカルは、「Maggie May」と称され、ロンドンで2年間上演された。

1970年に発売されたビートルズのアルバム『レット・イット・ビー』には、録音されたテイクから一部を抜粋した音源が収録された。

背景

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イギリスのミュージシャン、スタン・ヒューギル英語版は、1830年にヴァン・ディーメンズ・ランドに向けて出航した女性囚人船「カインズ」の船員であるチャールズ・ピックネルの日記に、本作の草案が記されていたとしている。このことから、歌詞中のマギーの運命として言及されている実際の流刑期間にさかのぼることができる[1]

1856年にベンジャミン・ハンビー英語版の作品としてアメリカのプランテーション・ソングDarling Nellie Gray」が発表された。同作ののサビの歌詞に「Oh, my poor Nellie Gray, they have taken you away, I'll never see my darling anymore.」というセリフがあり、本作との関連性が指摘されている[2]ジョー・ウィルソン英語版が作詞を手がけたジョーディー英語版の「Keep Your Feet Still」にも同じフレーズが含まれている[3]

レコーディング

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「マギー・メイ」は、1950年代後半に多数のアーティストによって演奏され、当時のスキッフル・ブームに合わせたアレンジが加えられた。この時期、ライム・ストリートは「マギー・メイのお気に入りの場所」として定着していた[1]

A.L.ロイド英語版は、1956年に発売したアルバム『English Drinking Songs』に本作を収録し、ライナーノーツで「船乗りのバラードの最後の一撃。どの船にもありながら、ソングブックには載っていない曲」と述べている[4]。リズ・ウィンタース&ボブ・コートは、1957年にスキッフル調にアレンジしたバージョンを発売[5]ヴァイパーズ・スキッフル・グループ英語版も同年にスキッフル・バージョンを発売している[6][7]。ヴァイパーズ・スキッフル・グループによるバージョンは、発売当時最も有名な演奏となったが、歌詞に性的な表現が含まれていることを理由にBBCラジオより放送禁止処分を受けた[8]

1964年にライオネル・バート英語版は、リヴァプールのドックを舞台としたミュージカル「Maggie May」を制作し、本作を使用した[9]。歌詞が多少変更されており、バートのバージョンでは三人称で歌われ、マギー・メイが街を去ることを嘆くヒロインとなっている。このバージョンは、ミュージカルのキャストであるケネス・ヘイグ英語版によって歌われた[10]。その後、ジュディ・ガーランドが1964年に発売したEP『Maggie May』でこのバージョンで録音した[11]

サーチャーズスピナーズ英語版のヒューイー・ジョーンズらも本作を録音しており、ジョーンズは「本物のマギー・メイはデューク・ストリートで暮らし、1952年に死んだ」と主張している[12]

ビートルズによる演奏

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マギー・メイ
ビートルズ楽曲
収録アルバムレット・イット・ビー
英語名Maggie Mae
リリース1970年5月8日
録音
ジャンルスキッフル[13]
時間40秒
レーベルアップル・レコード
作詞者
  • 民謡
作曲者
  • 民謡
    • (編曲 : ジョン・レノン
    • ポール・マッカートニー
    • ジョージ・ハリスン
    • リチャード・スターキー)
レット・イット・ビー 収録曲
レット・イット・ビー
(A-6)
マギー・メイ
(A-7)
アイヴ・ガッタ・フィーリング
(B-1)

「マギー・メイ」は、ビートルズの前身バンドであるクオリーメンが1957年7月6日にセント・ピーターズ教会英語版で行なったライブのセットリストに含まれており、その後もウォーミングアップとして演奏していた[14]。その後、ゲット・バック・セッションを行なっていた1969年1月24日に本作を録音した[14][注釈 1]。ビートルズの演奏は、バイパー・スキッフル・グループのバージョンがベースと考えられており、レノンはリヴァプール訛りで歌っている[15]

1970年5月8日にオリジナル・アルバム『レット・イット・ビー』が発売され、A面7曲目[16]に「マギー・メイ」の断片が収録された[17]。ビートルズのバージョンでは、編曲者としてメンバー4人の名前が表記されている[18]。また、ビートルズがカバー曲を録音したのは、1965年の「アクト・ナチュラリー」以来で、活動期では最後となった[19]

2003年に発売された『レット・イット・ビー...ネイキッド』では、「ディグ・イット」と共に収録曲から外されているが[20]、同作のボーナスCD「フライ・オン・ザ・ウォール」に抜粋した音源が収録されている[21][22]

2010年に公開された映画『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』では、若い頃のレノン(演:アーロン・ジョンソン)がセント・ピーターズ教会でクオリーメンとして長いバージョンを歌っている[23]

2017年に公開された映画 『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』では、マッカートニー演じる「アンクル・ジャック」(主人公ジャック・スパロウの叔父)が口ずさんでいる[24]

クレジット

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※出典[25]

脚注

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注釈

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  1. ^ セッション当時、ジョン・レノンはリハーサルが滞るたびにかつてのライブのレパートリーを演奏して楽しんでいた[15]。ただし、歌詞を完全に覚えておらず、不完全な演奏となっている[15]

出典

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  1. ^ a b Hugill 1979, pp. 404–406.
  2. ^ Barrow & Poirier 2010, p. 82.
  3. ^ Coltman 2008, p. 60.
  4. ^ English Drinking Songs (Media notes). A.L. Lloyd. Riverside Records. 1956.
  5. ^ Billboard: 57. (2 September 1957). 
  6. ^ Perone 2009, p. 9.
  7. ^ Billboard: 56. (29 April 1957). 
  8. ^ Strinati 1992, p. 305.
  9. ^ Dudgeon 2012, p. 156.
  10. ^ The Stage Year Book. Stage Offices. (1965). p. 66 
  11. ^ Wright 2010, pp. 244–245.
  12. ^ BBC Liverpool Local History”. BBC. 2021年7月17日閲覧。
  13. ^ Barrell 2017, p. 63.
  14. ^ a b Barrow & Poirier 2010, p. 85.
  15. ^ a b c Rowley 2013, p. 67.
  16. ^ Russell 2006, p. 153.
  17. ^ Barrow & Poirier 2010, p. 86.
  18. ^ Meltzer 2017, p. 52.
  19. ^ Guesdon & Margotin 2014, p. 792.
  20. ^ Womack 2009, p. 140.
  21. ^ Russell 2006, p. 356.
  22. ^ Womack 2014, p. 229.
  23. ^ Spitz 2005, pp. 57–61.
  24. ^ Pirates of the Caribbean: Dead Men Tell No Tales”. IMDb. 2018年11月17日閲覧。
  25. ^ MacDonald 2005, p. 336.

参考文献

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  • Barrell, Tony (2017). The Beatles on the Roof. Omnibus Press. ISBN 1-7832-3969-7 
  • Barrow, Logie; Poirier, Francois (2010). Keeping the Lid on: Urban Eruptions and Social Control Since the 19th Century. Cambridge Scholars. ISBN 1-4438-2206-X 
  • Coltman, Bob (2008). Paul Clayton and the folksong revival. Scarecrow Press. ISBN 0-8108-6132-1 
  • Dudgeon, Piers (2012). Our Liverpool: Memories of Life in Disappearing Britain. Headline. ISBN 0-7553-6444-9 
  • Hugill, Stan (1979). Shanties from the Seven Seas: Shipboard Work Songs and Songs Used as Work Songs from the Great Days of Sail. Routledge. ISBN 0-7100-1573-9 
  • MacDonald, Ian (2005). Revolution in the Head: The Beatles' Records and the Sixties (2nd Revised ed.). London: Pimlico (Rand). ISBN 1-84413-828-3 
  • Meltzer, Peter E. (2017). So You Think You Know Rock and Roll?: An In-Depth Q&A Tour of the Revolutionary Decade 1965-1975. Skyhorse Publishing. ISBN 1-5107-1768-4 
  • Perone, James E. (2009). Mods, Rockers, and the Music of the British Invasion. ABC-CLIO. ISBN 978-0-275-99860-8 
  • Rowley, David (2013). All Together Now: The Abc of the Beatles Songs and Albums. Troubador Publishing Limited. ISBN 1-7808-8680-2 
  • Russell, Jeff P. (2006). The Beatles Complete Discography. Universe. ISBN 0-7893-1373-1 
  • Spitz, Bob (2005). The Beatles: The Biography. New York: Little, Brown and Company. ISBN 978-0-316-80352-6 
  • Strinati, Dominic (1992). Come on Down?: Popular Media Culture in Post-War Britain. Routledge. ISBN 978-0415063272 
  • Womack, Kenneth (2009). The Cambridge Companion to the Beatles. Cambridge University Press. ISBN 1-1398-2806-1 
  • Womack, Kenneth (2014). The Beatles Encyclopedia: Everything Fab Four [2 volumes]. ABC-CLIO. ISBN 0-3133-9172-6 
  • Wright, Adrian (2010). A Tanner's Worth of Tune: Rediscovering the Post-War British Musical. Boydell & Brewer. ISBN 1-8438-3542-8 

外部リンク

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