マイヤーソン徴候(マイヤーソンちょうこう、英:Myerson's sign)は、神経学における症候の一つ。

眉間をハンマーや指で軽く叩くと、正常では両側眼輪筋の収縮すなわち瞬目(しゅんもく、まばたきのこと)が起こる。これを眉間反射(glabellar reflex)という。これを何度も行ううちに眼輪筋の収縮は弱くなり、数回のうちに収縮しなくなるのが正常の反応である。

しかしパーキンソン症候群などの場合この反射が亢進し、何度叩いても瞬目が起こるようになる。これをマイヤーソン徴候と呼ぶ。これは原始反射で、乳幼児では正常にみられるが、成人では前頭葉からの抑制がかかって普通は見られない。しかし何らかの原因で抑制が解除されると、成人でもこの反射が出現するようになる[1]。パーキンソン症候群やパーキンソン病で主徴候ではないが、補助的診断として行う。ただし、神経質な人の場合は正常でもこのような症状が出るため、注意が必要である。

パーキンソン症候群の患者と健常対照者の比較試験では、感度は比較的高い (83.3%) ものの特異度に欠ける (47.5%)[2]との報告がある。

マイヤーソン徴候の感度・特異度と陽性的中率 (%)[2]
 疾患または症候群   感度   特異度   陽性的中率
パーキンソン症候群 83.3 47.5 70.4
パーキンソン病 80.5 47.5 61.1
進行性核上性麻痺 91.7 47.5 34.4
多系統萎縮症 85.7 47.5 22.2
  1. ^ Thomas, RJ (Jun 1994). “Blinking and the release reflexes: are they clinically useful?”. J Am Geriatr Soc 42 (6): 609-613. PMID 8201145. 
  2. ^ a b Brodsky, H; DatVuong, K; Thomas, M; Jankovic, J (Sep 2004). “Glabellar and palmomental reflexes in parkinsonian disorders” (full text). Neurology 63 (6): 1096-1098. doi:10.1212/01.WNL.0000140249.97312.76. PMID 15452308. http://www.neurology.org/content/63/6/1096.full. 

出典

編集
  • 田崎義昭・斎藤佳雄著、坂井文彦改訂『ベッドサイドの神経の診かた』改訂16版、南山堂、2004年、pp.123-124
  • Allan H. Ropper, Martin A. Samuels "Adams and Victor's principle of neurology" 9th ed. McGraw-Hill, 2009, p.269, p.1036