ポストモダン地理学
ポストモダン地理学(ポストモダンちりがく、英語: postmodern geography)とは、1980年代以降の英語圏で展開されてきた人文地理学の理論である[1]。ポストモダン地理学は、特定の状況下での社会・空間関係の解明を重視する[2]。
ポストモダン地理学は、人文地理学の中でも、特に北アメリカの都市地理学に影響を与えた[2]。また、社会科学において重視されていなかった空間の重要性を主張し、空間論的転回に影響を与えた[1]。
発展
編集ポストモダン地理学を発展させた地理学者として、デヴィッド・ハーヴェイおよびエドワード・ソジャが挙げられる[3]。デヴィッド・ハーヴェイは『ポストモダニティの条件』[注釈 1]でフレキシブルな蓄積と都市空間の形成、資本の流動化、政治経済の変化、文化の変容などを論じた[3]。他方、エドワード・ソジャは『ポストモダン地理学』[注釈 2]で空間の重要性を主張し、新たな都市論を提示した[3]。
このほか、ロサンゼルス学派の都市地理学者であるマイケル・ディア、アレン・J・スコットなどもポストモダン地理学を発展させてきた[4]。
ロサンゼルス学派の地理学者は、従来のモダニズムの考え方だけでは説明できない様相に都市が変化していると主張し、特に都市の変容の理論化の研究でポストモダン地理学を援用した[2]。
影響
編集批判
編集ポストモダン地理学は、フェミニスト地理学研究者のドリーン・マッシーおよびドイチェなどから批判された[5]。このほか、ハーヴェイおよびソジャの都市論自体がモダニズム的だと批判されたこともある[5]。
脚注
編集注釈
編集- ^ ハーヴェイ, D. 著, 吉原直樹監訳・解説 1999. 『ポストモダニティの条件』 青木書店. Harvey, D. 1989. The Condition of Postmodernity: An Enquiry into the Origins of Cultural Change. Oxford: Blackwell.
- ^ ソジャ, E. 著, 加藤政洋・西部均・水内俊雄・長尾謙吉・大城直樹訳 2003. 『ポストモダン地理学――批判的社会理論における空間の位相』青土社. Soja, E. 1989. Postmodern Geographies: Reassertion of Space in Critical Social Theory. London: Verso.
出典
編集参考文献
編集- 大城直樹 著「文化論的転回とポストモダン地理学」、人文地理学会 編『人文地理学事典』丸善出版、2013年、58-59頁。ISBN 978-4-621-08687-2。
- 加藤政洋『ポストモダン人文地理学とモダニズム的「都市へのまなざし」――ハーヴェイとソジャの批判的検討を通して』 51巻、2号、1999年、164-182頁。doi:10.4200/jjhg1948.51.164。
- フィル・ハバード、ロブ・キチン、ブレンダン・バートレイ、ダンカン・フラー 著、山本正三・菅野峰明 訳『現代人文地理学の理論と実践―世界を読み解く地理学的思考』明石書店、2018年。ISBN 978-4-750-34741-7。
関連項目
編集外部リンク
編集- ポストモダン地理学とは何であったのか? - 大城直樹 10+1 website