ホンダ・ドリーム
概要
編集由来は創業者である本田宗一郎の『夢=dream』を引用[注 1]したもので、1950年代以降は主として同社の排気量250ccクラスから上級モデルやフラグシップとなる高性能モデルに与えられたシリーズ商標である[2]。1970年代半ばで使用が中止されたが、1990年代以降は単独車名として使用するモデルが製造販売される。
車種一覧
編集#単独車名で使用されるモデルを除いて記載された車名の前にすべてドリームが付帯する。
C70シリーズ以前のモデル
編集D
編集1949年8月に発売された本格的オートバイでドリームシリーズ第1号である[3]。車体はフレームに鋼板チャンネル型を採用し、サスペンションは前輪をテレスコピック、後輪をリジットとした。内径x行程=50.0x51.0(mm)・排気量98ccの空冷2ストローク単気筒ロータリーバルブエンジンを搭載し、最高出力3ps/5,000rpm[注 2]・最高速度50km/hのスペックを持つ[3]。
2速マニュアルトランスミッションを搭載するが、1速はシフトペダルを爪先で踏込んだ状態でのみ、2速は踵で踏込んだ状態でのみ、それ以外はニュートラル状態という乾式コーンクラッチを採用[4]。また前輪ブレーキレバーはハンドル左側に装着され、右側はエンジンを停止させるためのデコンプレバーという特異性がある[4]。このため販売当初は爆発的に売れたもののすぐに不振となり後述するE型へモデルチェンジされた[4]。
E
編集1951年10月発売。車体構造こそ上述のD型を継承するものの極初期生産分を除いてリヤサスペンションをブランジャーへ、搭載するエンジンを内径x行程=57.0x57.0(mm)・排気量148ccの同社初となる空冷4ストローク単気筒OHVへ変更したモデルで、車両重量はD型の80kgから97kgへ増加したが、最高出力5.5ps/5,000rpm・最大トルク0.8kg-m/3,000rpm・最高速度75km/hへスペックアップした。またエンジンオイルの潤滑はドライサンプを採用する。
搭載されるミッションは引き続き2速とされたが、クラッチを乾式コーンから湿式多板へ、転倒時の安全対策からハンドルバー端を支点にするオポジットレバーによるクラッチを左側に、前輪ブレーキを右側に配置する設計変更を実施した。
後に同社2代目社長となる河島喜好が設計・開発を担当し、発売に先立ち1951年7月15日に箱根峠越えテスト走行のテストライダーを務めた[5]。
本モデルは以下に示すモデルチェンジを繰り返し、月産台数をD型の最高160台程度から、当初は500台、1953年には2,000台、1954年には年間で32,000台まで増加させた[6]。
- 2E
1952年1月発売[7]。シリンダー内径を57.0→60.0(mm)へボアアップし、排気量を159ccへアップさせたモデル。最高出力 6.0ps/5,400rpm・最大トルク1.0kg-m/3,000rpmとなったほかにスピードメーターの装備やチャンネルフレームを縁取っていたモールの意匠を変更した。
- 3E
1953年発売[7]。搭載ミッションを2速→3速へ変更。
- 4E
1954年1月発売[7]。法規制の改正により搭載するエンジンを新設計した内径x行程=60.0x60.0(mm)・排気量220ccへ変更したモデル。最高出力8.0ps/5,000rpmへアップしたものの車両重量も142kg増加したほか、最高速度は90km/hとなった。
- 6E
1955年11月発売[7]。E型最終モデル。再びエンジンの設計変更を実施し、内径x行程=65.0x57.0(mm)・排気量220cc・最高出力6.5ps/4,800rpm・最大トルク1.1kg-m/3,000rpmとなった。車両重量は97kg、最高速度も80km/hとスペックダウンした。
S
編集空冷4ストロークSOHC単気筒エンジンを搭載するシリーズ。以下のバリエーションが製造・販売された。
- SA
1955年6月発売。プレスバックボーンフレームを採用し、サスペンションは前輪をテレスコピック、後輪をスイングアーム。ドライブチェーンを車体右側に、マフラーを左側に配置する。エンジンは内径x行程=60.0x64.0(mm)・圧縮比7.5・排気量246cc・最高出力10.5ps/5,000rpm・最大トルク1.9kg-m/4,500rpm・最高速度100km/hのスペックを持つ。またEシリーズで採用されていたオポジットレバーは通常のタイプとされたほか、トランスミッションも4速となった。車両重量171kg。
1956年に7kg軽量化・ウィンカー標準装備・最高出力を12psへアップ・前輪サイズを2.75→3.00へアップのマイナーチェンジを実施。
- SB
1955年4月発売。SAとの相違は内径x行程=76.0x76.0(mm)・排気量344ccのエンジンを搭載する点で最高出力は14.5ps/5,400rpmとされた。また外観上ではテレスコピックフォークがSAの塗装仕上げに対してボトムケースをクロームメッキ仕上げとして差別化を図った。
1956年のモデルチェンジで最高出力を16psへアップ。
- ME・MF
1957年モデルへのチェンジの際にSA・SBからの型式名と共に以下の仕様変更を実施。
- 前輪サスペンションをボトムリンクへ変更。
- 前輪サイズを19→18インチにダウン。
- MFは最高出力20ps/6,500rpm・最大トルク2.6kg-m/3,500rpmへアップ。
C
編集実用車的な位置付けがされ後のCDシリーズのベースとなったモデル。車体はプレスバックボーンフレーム・前輪ボトムリンクサス・右チェーン左マフラーなどME・MFから踏襲するもののデザインは125ccクラスのC90・C92と共通する神社仏閣と呼ばれる新しいタイプに変更、16インチタイヤを装着する。搭載されるエンジンは前傾25°の空冷4ストロークSOHC2気筒だが、車名が70からはじまる排気量247ccモデルが内径x行程=54.0x54.0(mm)・圧縮比8.2・最高出力18ps/7,400rpm・最大トルク1.8kg-m/6,000rpm。車名が75からはじまる排気量305ccモデルが内径x行程=60.0x54.0(mm)・圧縮比8.2・最高出力21ps/7,200rpm・最大トルク2.2kg-m/6,000rpmの相違がある。なお北米向け輸出仕様はCAの車名となる。
- C70/C75
1957年10月1日発売[8]。ME・MFからのフルモデルチェンジ車。電装は6V。
- C71/C76
1958年6月発売[8]。電装を強化しセルモーターを装備。本モデルより輸出を開始。
- C72/C77
1960年4月発売[8]。電装を12V化したほか以下の改良を実施。
- クランク周辺の部品点数を削減
- 潤滑方式をウエットサンプへ変更
- C72は圧縮比を8.3とし最高出力を20psへアップ
- C72II
1961年発売。C72のプレスハンドルをアップタイプのパイプハンドルへ換装したモデル。
- C72III
1963年発売。C72IIからのモデルチェンジ車で、タンクを大型化ならびにデザイン変更・リヤウインカーを車体ビルトインからステーを介在させる方式へ変更・テールランプを大型化・シートを大型化などを実施。
- C78
1963年発売。C72IIIに該当するモデルチェンジ車。
なお、本シリーズは同一名称であっても微妙な設計変更を実施したほか、後述するCB72スーパースポーツ/CB77スーパースポーツをはじめとする派生車種が多数存在する。
CB
編集詳細についてはホンダ・CBならびに各モデルのリンク先も参照のこと。
- CB72スーパースポーツ
- CB77スーパースポーツ
- CB250
- CB250T
- CB350
- CB350FOUR
- CB360T
- CB400FOUR
- CB450
- CB500FOUR
- CB500T
- CB550FOUR
- CB750FOUR
CBM
編集ホンダ・ドリームCB72スーパースポーツ#ドリームCBM72スーパースポーツを参照のこと。
CD
編集ホンダ・ドリームCB250#派生車種を参照のこと。
CJ
編集ホンダ・ドリームCB250#派生車種を参照のこと。
CL
編集CBシリーズからの派生車種でセンターアップマフラーやブロックタイプタイヤへ換装を行いオン・オフロード両用としたスクランブラータイプ。以下のモデルが製造販売された。
競合他社のモデルがオフ性能をより強化したデュアルパーパスへシフトしたことから、性能に見劣りがするようになり、日本国内向け仕様は1974年までにSLシリーズへ移行する形で生産中止となった。
CM
編集ホンダ・ドリームCB72スーパースポーツ#ドリームCM72を参照のこと。
CP
編集ホンダ・ドリームCB72スーパースポーツ#ドリームCP77スーパースポーツを参照のこと。
CR
編集- ※詳細はホンダ・ロードレーサー#CRシリーズを参照のこと。
ロードレースに使用する競技用車両。C71/C76をベースにしたCR71/CR76、C72/C77をベースにしたCR72/CR77が製造された。
CS
編集Cシリーズからの派生車種でスポーツ性を高めたモデルである。本シリーズは搭載するミッションが日本国内仕様車はロータリー式、輸出仕様車はリターン式という差異がある。以下の車種が製造された。
- CS71スポーツ/CS76スポーツ
1958年にC71/C76と同時発売。圧縮比を8.2から9.1へアップさせCS71スポーツは最高出力20ps/8,400rpm、CS71スポーツは最高出力24ps/8,000rpmをマークする。またマフラーはアップタイプを装着する。
- CS72スポーツ/CS77スポーツ
1960年にC72/C77と同時発売。本モデルではエンジンの高圧縮比化は施されずに出力はベースモデルと同一である。
SL
編集CLシリーズよりオフでの走破性を重視した上で後継も兼ねるデュアルパーパスモデルで以下のモデルが製造された。
- SL250S[注 4]
1972年4月10日発表、同月11日発売[9]。排気量248ccから最高出力22ps/8,000rpm・最大トルク2.0kg-m/6,500rpmのスペックを持つ空冷4ストローク4バルブSOHC単気筒エンジンを搭載する。軽量化のため強制開閉式キャブレター・アルミニウムホイールリム・マグネシウム合金製クランクケースカバーを採用し、乾燥車両重量は136kgとされた。
翌1973年に2ストロークエンジンを搭載するエルシノアMT250が発売されたことから製造中止となった[注 5]。
- SL350
ホンダ・ドリームCB250#派生車種を参照のこと。
単独車名で使用されるモデル
編集以下の5モデルが該当する。
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ 本田技研工業公式HP 語り継ぎたいこと 『失敗を恐れたらチャレンジはできない』本格的2輪車・ドリームD型登場 p1
- ^ 三栄書房 『百年のマン島』
- ^ a b HONDA Collection HONDA DREAM D
- ^ a b c 本田技研工業公式HP 語り継ぎたいこと 『失敗を恐れたらチャレンジはできない』本格的2輪車・ドリームD型登場 p2
- ^ 本田技研工業公式HP 語り継ぎたいこと 箱根越え伝説のドリームE型誕生『4ストロークのHonda』ここに始まる p1
- ^ 本田技研工業公式HP 語り継ぎたいこと 箱根越え伝説のドリームE型誕生『4ストロークのHonda』ここに始まる p2
- ^ a b c d 本田技研工業公式HP 2輪製品アーカイブ ドリームE
- ^ a b c 本田技研工業公式HP 2輪製品アーカイブ ドリームC70
- ^ 1972年4月10日プレスリリース