プロダクションカー世界ラリー選手権
プロダクションカー世界ラリー選手権(Production car World Rally Championship)は、2002年から2012年まで開催されていた国際自動車連盟(FIA)公認の世界ラリー選手権(WRC)のカテゴリの一つである。略称はPCWRCまたはPWRC。現在のWRC2の前身。
概要
編集元々はグループNカップというカテゴリであったが、さほど評価が高くなくドライバーのモチベーションも上がらなくなっていた為、ジュニアラリー選手権(JRC)と共にFIAが世界選手権として決定しPWRCに移行という形で2002年に始まった。当初はPWRCが世界選手権として成立するかという不安もあったが、初年度のエントリー台数は20台を超える盛況を見せた。
日本人ドライバーは新井敏弘や奴田原文雄らがPWRCに参戦した。新井は2005年度と2007年度に年間総合優勝をしており、日本人ドライバーとして初のFIA世界選手権のチャンピオンとなった。また奴田原も2006年度の開幕戦モンテカルロで優勝するなど好成績を残しており、両者はライバル関係にあった。これ以外にスポット参戦ではあるが、2007年ラリージャパングループNクラスで優勝した田口勝彦などもいる。
ゼッケン番号は大体が31 - 60番となっており、その内31 - 58番までが通年エントリーを行ったドライバー及びチームで、59・60番は、開催地域から選出される地元枠である。なお、このゼッケン番号はジュニア世界ラリー選手権でも適用された。
開催地域は、全12 - 16戦程度で行われる世界ラリー選手権のうち、約半数の6 - 8箇所で、その内、1、2のイベントをスキップする(参戦しない)。この数はその年のPWRCの開催数により変動する。ヨーロッパ外イベントが大半を占めていたが、これはジュニア世界ラリー選手権(JWRC)が主にヨーロッパ内で行われるイベントであり、出来るだけそれと重ならないようにするためであった。なお2008年のラリー・フィンランドではJWRCと同時開催となったため、ゼッケン番号が重複しない様に+100番となっていた。
車両について
編集ラリーに用いる車両は、年間2,500台以上生産された市販車で、FIAの"グループN"公認を取得したものをベースとしており、PWRCでは排気量2,000 cc以上の「N4クラス」で総合優勝が争われる。 このグループNという規定は、市販車をベースとしている点ではWRCのWRカーと同じだが、改造範囲が厳しく制限されている。ロールケージ等の安全対策やサスペンションの交換等、改造を最小限に抑えており、FIAの車両規定で最も市販車に近い。そのためベースとなる市販車のポテンシャルがそのまま影響し、車両そのものの高性能さが要求される。また参戦車両の種類を増やすために、特例として00年代半ばから年間1,000台以上生産された市販車でも、FIAの公認を取得してベース車とすることができ、さらにLSDの追加やブレーキの強化も可能となるなど、改造範囲が拡大された。これは後述するスーパー2000との性能差を埋める事と、安全性強化のためである。
グループNは高性能四輪駆動車を数多く売れる市場である日本の三菱・スバルが圧倒的に有利で、ほとんどのドライバーが三菱・ランサーエボリューションとスバル・インプレッサを用いた。初期は三菱が28連勝を記録するなど圧倒的な戦績を収めていたが、スバルが2003年から本格参戦を開始するとスバルの方が一時は優位となった。また初期には、三菱と資本提携していたマレーシアのプロトンが、ランサーエボリューションⅥをベースとしたパートで参戦し、2002年にチャンピオンを獲得している。
2007年からは、FIAが新しく設定した新カテゴリであるスーパー2000の出場(後にポイント加算も)が認められた。
2010年からは、スーパー2000車両を対象にしたS2000世界ラリー選手権(SWRC)が創設されたため、PWRCは再びグループN車両のみによって戦われることになった。
2011年にはJWRCがワンメイク化されたことに伴い、2WDのグループR(R1〜R3)規定がPWRCに参戦可能となり、賞典(プロダクションカーカップ・フォー・2WD)も別に設けられた。
2013年にWRC直下のカテゴリが「WRC2」(R4、R5、スーパー2000、N4)と「WRC3」(R1〜R3)の2カテゴリに再編されたため、PWRCとしての歴史は幕を下ろした。「WRC2」にはN4規定車種のみで対象された「プロダクションカーカップ」が設定されたが、現在は消滅しており年間エントリーも不可になっている。
- 2009年の参戦車種
- 三菱・ランサーエボリューションIX、X
- スバル・インプレッサWRX STI (GRB、GDB)
- シュコダ・ファビア S2000
- アバルト・グランデプント S2000
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Impreza WRX STI 2006 新井敏弘選手モデル
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LANCER Evolution IX 2006年 奴田原文雄選手
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アバルト・グランデプントSuper2000(写真は国内選手権の0カー)
- 2011年の参戦車種
- 三菱・ランサーエボリューションIX、X
- スバル・インプレッサWRX STI (GRB、GDB)
- シトロエン・DS3 R3
- ルノー・クリオ R3
開催地域
編集参戦者は8戦中6戦を選んで出場し、残り2戦は休場する。また、第2 - 5戦はJWRCと併催のため、エントリーNo.に+100が付くことがある。
2008年
編集ラリー名称 | 開催国 | 優勝者 | 車種 | |
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1 | ウッディホルム・スウェディッシュラリー | スウェーデン | ユホ・ハンニネン | 三菱・ランサーエボリューションIX |
2 | ラリーアルゼンティーナ | アルゼンチン | アンドレアス・アイグナー | 三菱・ランサーエボリューションIX |
3 | BP・アルティメイト・アクロポリスラリー | ギリシャ | アンドレアス・アイグナー | 三菱・ランサーエボリューションIX |
4 | ラリー オブ ターキー | トルコ | アンドレアス・アイグナー | 三菱・ランサーエボリューションIX |
5 | ネステオイル・ラリーフィンランド | フィンランド | ユホ・ハンニネン | 三菱・ランサーエボリューションIX |
6 | レプコ・ラリーニュージーランド | ニュージーランド | マーティン・プロコップ | 三菱・ランサーエボリューションIX |
7 | パイオニア・カロッツェリア・ラリージャパン | 日本 | ユホ・ハンニネン | 三菱・ランサーエボリューションIX |
8 | ウェールズ・ラリーGB | イギリス | パトリック・フローディン | スバル・インプレッサWRX STI |
2009年
編集ラリー名称 | 開催国 | 優勝者 | 車種 | |
---|---|---|---|---|
1 | ラリー・ノルウェー | ノルウェー | パトリック・サンデル | シュコダ・ファビアSuper2000 |
2 | ザ・キプロス・ラリー | キプロス | パトリック・サンデル | シュコダ・ファビアSuper2000 |
3 | ボーダフォン・ラリー・ド・ポルトガル | ポルトガル | アーミンド・アラウージョ | 三菱・ランサーエボリューションⅨ |
4 | ラリー・アルゼンチーナ | アルゼンチン | ナサール・アルアティヤ | スバル・インプレッサWRX STI |
5 | ラリー・ド・イタリア・サルディニア | イタリア | ナサール・アルアティヤ | スバル・インプレッサWRX STI |
6 | アクロポリス・ラリー | ギリシャ | ランブロス・アサナソウラス | シュコダ・ファビアSuper2000 |
7 | レプコ・ラリー・オーストラリア | オーストラリア | マーティン・プロコップ | 三菱・ランサーエボリューションIX |
8 | ウェールズ・ラリーGB | イギリス | マーティン・プロコップ | 三菱・ランサーエボリューションIX |
2010年
編集ラリー名称 | 開催国 | 優勝者 | 車種 | |
---|---|---|---|---|
1 | スウェーディッシュ・ラリー | スウェーデン | パトリック・フローディン | スバル・インプレッサWRX STI |
2 | ラリー・メキシコ | メキシコ | アーミンド・アラウージョ | 三菱・ランサーエボリューションIX |
3 | ヨルダン・ラリー | ヨルダン | パトリック・フローディン | スバル・インプレッサWRX STI |
4 | ラリー・ニュージーランド | ニュージーランド | ヘイデン・パッドン | 三菱・ランサーエボリューションIX |
5 | ラリー・フィンランド | フィンランド | オット・タナク | 三菱・ランサーエボリューションX |
6 | ラリー・ドイツ | ドイツ | アーミンド・アラウージョ | 三菱・ランサーエボリューションX |
7 | ラリー・ジャパン | 日本 | パトリック・フローディン | スバル・インプレッサWRX STI |
8 | ラリー・アルザス | フランス | アーミンド・アラウージョ | 三菱・ランサーエボリューションX |
9 | ウェールズ・ラリーGB | イギリス | オット・タナク | 三菱・ランサーエボリューションX |
2011年
編集ラリー名称 | 開催国 | 優勝者 | 車種 | |
---|---|---|---|---|
1 | ラリー・スウェーデン | スウェーデン | マルティン・セメラド | 三菱・ランサーエボリューションIX |
2 | ボーダフォン・ラリー・ド・ポルトガル | ポルトガル | ヘイデン・パッドン | スバル・インプレッサWRX STI |
3 | ラリー・アルゼンチーナ | アルゼンチン | ヘイデン・パッドン | スバル・インプレッサWRX STI |
4 | ラリー・フィンランド | フィンランド | ヘイデン・パッドン | スバル・インプレッサWRX STI |
5 | ラリー・オーストラリア | オーストラリア | ヘイデン・パッドン | スバル・インプレッサWRX STI |
6 | RACCラリー・ド・エスパーニャ | スペイン | パトリック・フローディン | スバル・インプレッサWRX STI |
7 | ウェールズ・ラリーGB | イギリス | パトリック・フローディン | スバル・インプレッサWRX STI |
歴代チャンピオン
編集チャンピオン | 車両 | |
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2012 | ベニート・ゲラ | 三菱・ランサーエボリューションX |
2011 | ヘイデン・パッドン | スバル・インプレッサWRX STI |
2010 | アーミンド・アラウージョ | 三菱・ランサーエボリューションIX / X |
2009 | アーミンド・アラウージョ | 三菱・ランサーエボリューションIX |
2008 | アンドレアス・アイグナー | 三菱・ランサーエボリューションIX |
2007 | 新井敏弘 | スバル・インプレッサWRX STI |
2006 | ナサール・アルアティヤ | スバル・インプレッサWRX STI |
2005 | 新井敏弘 | スバル・インプレッサWRX STI |
2004 | ナイオール・マクシェア | スバル・インプレッサWRX STI |
2003 | マーチン・ロウ | スバル・インプレッサWRX STI |
2002 | カラムジット・シン | プロトン・ペルト |
関連項目
編集- モータースポーツ
- 世界ラリー選手権
- ラリージャパン
- 新井敏弘
- 奴田原文雄
- グループN
- ヤリ=マティ・ラトバラ - PCWRCを経て、2007年からフォード・フォーカスWRCを運転。