プロキシマ・ケンタウリd

プロキシマ・ケンタウリd英語: Proxima Centauri d)またはプロキシマd英語: Proxima d[1]とは、地球からケンタウルス座の方向に約4.2光年離れた、太陽以外で最も地球に近い恒星として知られている プロキシマ・ケンタウリ の周りを公転している太陽系外惑星である。

プロキシマ・ケンタウリd
Proxima Centauri d
プロキシマ・ケンタウリdの想像図。奥には主星プロキシマ・ケンタウリと他の2つの惑星が描かれている。 (提供: ESO/L. Calçada)
プロキシマ・ケンタウリdの想像図。奥には主星プロキシマ・ケンタウリと他の2つの惑星が描かれている。
(提供: ESO/L. Calçada)
星座 ケンタウルス座
分類 太陽系外惑星
軌道の種類 周回軌道
発見
発見年 2020年[1](惑星候補として)
2022年(正式な発表)[2]
発見者 ESPRESSO
発見方法 ドップラー分光法[1]
現況 確認[1]
位置
元期:J2000.0
赤経 (RA, α)  14h 29m 42.9s[1]
赤緯 (Dec, δ) −63° 10′ 10″[1]
視線速度 (Rv) -22.40 ± 0.5 km/s[3]
固有運動 (μ) 赤経: -3781.306 ミリ秒/[3]
赤緯: 769.766 ミリ秒/年[3]
年周視差 (π) 768.5004 ± 0.2030ミリ秒[3]
(誤差0%)
距離 4.244 ± 0.001 光年[注 1]
(1.3012 ± 0.0003 パーセク[注 1]
プロキシマ・ケンタウリの位置は赤色の丸で示されている。
プロキシマ・ケンタウリの位置は赤色の丸で示されている。
軌道要素と性質
軌道の種類 周回軌道
軌道長半径 (a) 0.02885+0.00019
−0.00022
au[4]
(4,315,899+28,424
−32,912
km
離心率 (e) 0.04+0.15
−0.04
[4]
公転周期 (P) 5.122+0.002
−0.036
[4]
近点引数 (ω) 4.0+2.0
−1.7
°[4]
準振幅 (K) 0.39±0.07 m/s[4]
プロキシマ・ケンタウリの惑星
物理的性質
半径 0.81 ± 0.08 R(推定)[4]
質量 ≥0.26 ± 0.05 M[4]
平衡温度 (Teq) 360 K[4](87
他のカタログでの名称
プロキシマd
アルファケンタウリCd[1]
GL 551 d[1]
HIP 70890 d[1]
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発見

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プロキシマ・ケンタウリの周囲を公転している惑星としては、2016年プロキシマ・ケンタウリb2019年にはプロキシマ・ケンタウリcがすでに発見されていたが、2020年5月ヨーロッパ南天天文台 (ESO) の超大型望遠鏡VLTに搭載されているESPRESSO分光器を用いてプロキシマ・ケンタウリbの観測を行った際、原因がはっきりとしなかった振幅がわずか 40 cm/s のプロキシマ・ケンタウリの視線速度の変化が示された[5]。これが惑星による信号である場合、下限質量地球質量の0.29 ± 0.08倍となる惑星である可能性があると考えられ、この惑星候補はプロキシマ・ケンタウリdと呼称された。低質量の赤色矮星には複数の惑星が周囲を公転している傾向が高く、それほど驚くことではない[6]。なお、この信号については惑星が原因だという事は確認されていない[7]が、二次検出も行われている[6]。存在する可能性が指摘された約2年後の2022年2月、ヨーロッパ南天天文台は、VLTによる追加観測によってこの惑星候補プロキシマ・ケンタウリdの存在が確認されたと正式に発表し、同日にその研究論文が公表された[1][2][4]

特性 

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プロキシマ・ケンタウリを公転する3つの惑星の軌道

プロキシマ・ケンタウリdの火星水星に近い下限質量は 0.26 M しかなく、ドップラー分光法(視線速度法)によって発見されたものとしては最も質量が小さな太陽系外惑星である[2][6][8]。プロキシマ・ケンタウリdが主星の手前を通過(トランジット)する事は知られていないが、主星の半径が小さいため、通過を起こす確率は最大でも 2% と推定されている[4]

プロキシマ・ケンタウリからの軌道長半径は約 0.0029 au(約430万 km)で、約5.15日という短い公転周期で軌道を公転している[5][4]。主星からは非常に近い位置に存在していることになるが、主星のプロキシマ・ケンタウリがM型主系列星いわゆる赤色矮星であるため、ボンドアルベドを 0.3 と仮定した時の表面の平衡温度大気の影響を無視した温度)は 360 K(87 )と、地球上において液体で存在できる温度になると計算されている[5]半径は知られていないが、惑星や主星の特性を使って半径を求めるモデルを用いると、地球の0.81倍になると推定されている[4]

脚注

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注釈

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  1. ^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算

出典

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  1. ^ a b c d e f g h i j Planet Proxima Centauri d”. The Extrasolar Planets Encyclopaedia (2020年5月26日). 2020年6月2日閲覧。
  2. ^ a b c eso2202 — Science Release | New planet detected around star closest to the Sun”. European Southern Observatory (2022年2月10日). 2022年2月11日閲覧。
  3. ^ a b c d proxima cen”. Simbad. 2020年9月15日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l Faria, J. P.; Suárez Mascareño, A.; Figueira, P. et al. (2022). “A candidate short-period sub-Earth orbiting Proxima Centauri” (PDF). Astronomy & Astrophysics (EDP Sciences) 658: A115. arXiv:2202.05188. doi:10.1051/0004-6361/202142337. https://www.eso.org/public/archives/releases/sciencepapers/eso2202/eso2202a.pdf. 
  5. ^ a b c Suárez Mascareño, A. et al. (2020). “Revisiting Proxima with ESPRESSO”. Astronomy & Astrophysics 639: A77. arXiv:2005.12114. Bibcode2020A&A...639A..77S. doi:10.1051/0004-6361/202037745. ISSN 0004-6361. 
  6. ^ a b c Proxima Centauri b confirmed as nearest exoworld”. EarthSky (2020年5月31日). 2020年9月15日閲覧。
  7. ^ ESPRESSO confirms the presence of an Earth around the nearest star、UNIVERSITY OF GENEVA.2020年6月3日閲覧。
  8. ^ 最新装置で系外惑星プロキシマbの質量、公転周期を精密測定、アストロピクス.2020年6月3日閲覧。

関連項目

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