フォボス1号
フォボス1号(ロシア語: Фобос-1)は1988年にソビエト連邦によって打ち上げられた火星探査機。火星とその衛星フォボスの探査を予定したが、火星へ向かう途中で交信が途絶え失敗に終わった。同型機としてフォボス2号がある[1]。
フォボス1号 | |
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所属 | ソビエト連邦 |
国際標識番号 | 1988-058A |
カタログ番号 | 19281 |
状態 |
運用終了 太陽を周回中 |
目的 | 惑星・衛星探査 |
観測対象 | 火星・フォボス |
打上げ機 | プロトンロケット |
打上げ日時 | 1988年7月7日 |
通信途絶日 | 1988年9月2日 |
質量 | 6220kg |
姿勢制御方式 |
三軸制御 28基のスラスターによる |
概要
編集フォボス1号はフォボス計画で製造された2機の同型の探査機の1つである。1988年7月7日にバイコヌール宇宙基地からプロトンロケットで打ち上げられ、火星へ向かう軌道に乗った。
打ち上げ後、地上とフォボス1号との間では定期的な通信を行っていた。しかし1988年9月2日の地上からの呼びかけに探査機は反応せず、その後交信を回復できないまま計画は失敗した[2]。
調査の結果、8月29日から8月30日にかけて探査機にアップロードされたソフトウェアに問題があったことが判明した。このソフトウェアには探査機の姿勢制御スラスターを停止させるという致命的なエラーが含まれていた。その結果、探査機は太陽電池パネルを太陽に向けられなくなり、バッテリを使い果たしてしまったと考えられている[3]。
失敗の原因
編集フォボス1号の失敗が明らかになった後、なぜ致命的なコードが実行されてしまったのか調査が行われた。
失敗の原因となった「姿勢制御を停止させる」という指示は、地上試験でルーチン的に使われていたテスト用コードで、本来なら打上げ前にPROM (programmable read-only memory) から外しておくべきものだった。しかし、実際には外されていなかった。その理由は、打上げまでのスケジュールが厳しかったため、PROM内のコードをクリアする専用装置を使う余裕がなかったことである。代わりに、このコマンドシーケンスを安全な状態にロックして打ち上げることになった。しかし、飛行中にアップロードされた(ガンマ線分光計を起動させる)コマンドシーケンスに1文字のエラー(抜け)があり、これが不運なことにテスト用のプログラムを走らせるコードになってしまった。コードに従って姿勢制御を停止した探査機は無秩序な回転を始め、2日後の次の交信機会まで誰もこの異常に気づかなかったため、喪失に至ってしまった[4]。
関連項目
編集脚注
編集- ^ 並木伸一郎 2010, p. 434.
- ^ 学研教育出版 2014, p. 130.
- ^ トム・チヴァース & 樋口武志 2021, p. 99.
- ^ “Phobos 1 & 2 computer failures”. The Risk Digest 1989年9月14日 2011年11月28日閲覧。
参考文献
編集- Phobos 1 NASA - NSSDC
- 並木伸一郎 (2010). 未確認飛行物体UFO大全. 学研パブリッシング. p. 434. ISBN 9784054044425
- 学研教育出版 (2014). UFOと宇宙人の大百科. 学研教育出版. p. 130. ISBN 9784052039461
- トム・チヴァース; 樋口武志 (2021). AIは人間を憎まない. 飛鳥新社. p. 99. ISBN 9784864107716