家や敷地などで他との境界に設置する囲い
フェンスから転送)

(さく、: fence フェンス)とは、

  • 角材丸太をまばらに(地面などに)立てて、そこに横向きの材である「貫(ぬき)」を通し、土地や区画の境界などに設置する囲いのこと[1]。横向きに伸びる材料は、角材や丸太が用いられることもあるが、代わりに金網などが用いられることもあり、またロープチェーンなどが用いられることもある。柵はとは違って隙間があり、柵越しに反対側の景色を見ることができる、という特徴がある。
  • 木の柱を立てて並べて、敵を防ぐために作った砦[1]。→城柵を参照。
  • しがらみと読めば)構造は同じだが、水流の向きを変えたり水流を抑えるために川の中に設けたものを指す[1]。→#しがらみ
ポーランドの野外博物館の周囲の柵。伝統的で素朴な材料・技術で造られたもの。
米国ペンシルベニア州チェスター郡ウエストタウン郡区の大きな農地を囲うためのオーソドックスな木製の柵

目的別の柵

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住宅用途

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柵は一般的に敷地の境界を示す目的[2]や屋上広場・2階以上のバルコニーの外周部に安全の目的[3]で設けられる。

布団干しやハンキングバスケットなど吊るすことは本来の用途ではないため避けるべきである[4]。また、ガーデニングにより植木鉢などを吊るしたい場合はその用途に応じた設計を行わなければならない[4]

農業用途

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オーストリアの田舎の牧草地を囲う、現代の木製の柵。物理柵の例。
 
電気柵の例。

牧畜用途

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牧畜用の柵である牧柵には、(現代では)、物理柵と心理柵(電気牧柵)がある[5][6]

  • 物理柵 - バラ線や木柵など物理的に隔てる柵[5]。経費や設置労力はかかるが耐久性は高い[5]
  • 心理柵(電気牧柵) - 電気を流し牛などの家畜が(痛みを学習して)近づかなくなる精神的効果を利用した柵[5]

鳥獣防除

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対象
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鳥獣防除用の防護柵には農地のみを囲むものと集落全体を囲むものがある[7]

  • 農地のみを囲む柵
    • 個別柵 - 個人が管理する個々の農地を囲む柵[7]
    • グループ柵 - 隣接する複数の農地を囲む柵[7]
  • 集落柵 - 集落で管理する集落全体を囲む柵[7]
物理柵と心理柵
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  • 物理柵 - 金網やトタンなどで作った一定の高さの強度を持たせた柵[7]
  • 心理柵 - 電気柵のように野生動物の学習効果を利用した柵[7]

道路用

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道路では車両の対向車線や歩道など誤った進行方向への逸脱、歩行者車道の横断防止や運転者の視線誘導などを目的に防護柵が設置される[8]。種類としてガードレール・ガードケーブル・ボックスビームなどが挙げられるほか、車両の路外逸脱を防ぐため変形しないための剛性防護柵もある[8]。落下物や跳石などが橋梁カルバートの下に落ちないようにするため落下物防止柵が設けられることがある[9]。また、関係者以外の者や動物が侵入するのを防ぐため立入防止柵動物侵入防止柵の設置が行われることもある[10]

公園用

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児童遊園

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児童遊園にある遊具には子供の不用意な設置面への転落を防ぐ簡易的な柵・ガイドバーとしてのガードレールや、子供の不適切な公道などによって高所から落下するのを防止する目的での落下防止柵が設けられる[11]。遊具利用者が身体を支え、安定させるためにガードレールや落下防止柵に手摺を設けることもある[11]複合系遊具では上段踊り場から下段踊り場の落下防止柵やガードレールの上面へ容易に登れないような高さにしなければならない[12]

乳幼児児童とでは運動能力や危険回避能力が異なるため、乳幼児が遊ぶエリアは年齢制限エリアとしてゾーニングを行ったうえで外周に柵を設ける必要がある[13]

ブランコの外側には衝突事故を防ぐため境界柵を設ける[14]砂場には犬猫が進入しないように砂場柵を設ける[15][16]

自然公園

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設置場所や目的に応じて機能を設定して整備を行う[17]。一般の利用者を対象とした柵と動物の侵入を防ぐための柵では安全性に対する考え方が大きく異なり、また多くの人の利用を想定したエリアの柵と自然の保護を最優先にすべきエリア(特別保護地区など)の柵では規模や構造などの条件が大きく異なる[17]。自然公園などで用いられる柵は転落防止柵・立入防止柵・注意喚起柵・侵入防止柵・その他の柵の5種類に分類される[18]

防災用

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風による障害を防ぐため防風柵が設置されることがあり、鉄道の場合はパネルの充実率が100%の防風壁を除いた防風対策工を防風柵と位置付けている[19]。また、落石が見込まれる場所では落石対策工の1つとして落石防護柵が設置される[20]

防雪用

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吹雪や吹き溜まりを防止するための柵として防雪柵が設置される[21]。防雪柵には飛雪の吹込みを防ぐ吹きだめ柵[22]と防雪柵の下部間隙から吹き抜ける強い風で堆雪を吹き払う吹き払い柵がある[23]

また、雪崩が発生しやすい場所では雪崩を未然に防ぐ雪崩予防柵[24]と一旦発生した雪崩を止めるための雪崩防護柵[25]が設置される。雪崩の原因となる雪庇を作らせないために雪庇予防柵を設けることがあり、雪庇予防柵も吹きだめ柵と吹き払い柵に分かれる[26]

材質

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手摺を設ける場合は多くが柵と一体的な構成とされているが、笠木調のウッド素材やアルミ形材に木粉入り樹脂を圧着した手摺とすることもある[27]

アルミ形材

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アルミニウム押出成形した素材であり、質量が軽く金属の質感を持つ[2]。大量製品向きで比較的安価なため、主流商品として使用される[2]

アルミ鋳物

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アルミニウムを溶融させてからに流して成形した素材で、形材よりコストがかかるが曲線的なデザインにしやすくよく使用される材料である[2]。形材のようなロングスパンには不向きだが、石やレンガなどの自然素材にマッチしやすく組み合わせて利用されることが多い[2]

木材

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木材を使用した素材であり、質感に優れるが耐久性に劣る[2]。耐久性を高めるため柱など構造となる芯材にはアルミを用い、化粧材として木材を用いた複合製品が多くみられる[2]

鋼材

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防護柵などの強度が必要なものやメッシュ状のフェンスに鋼材が用いられる[28]。十分な強度を持つ反面で腐食対策を施す必要があるため、デザインの自由度が低くバリエーションが少ない[28]

その他の材質

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柵の材質としては、ステンレスが単体・複合で利用されることがあるほか、柱はアルミダイカストを用いたもの、フレームがアルミ形材でパネルがFRP板・アクリル樹脂板・ポリカーボネート板などを用いたもの、発泡樹脂に木粉と樹脂を配合して圧着した後にアルミ形材に差し込んで成形した部材、木粉とプラスチックを溶融した人工木材などを利用した製品もある[28]

デザイン

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柵の基本的なデザインとしては縦格子型・横格子型・枡目が挙げられる[28]

柵を介しての視線を遮りたい場合は板を採光・通風に考慮した上で鎧戸のように並べたルーバーフェンスやアルミ板に多数の孔を設けたパンチングメタルフェンスを用いることがある[29]

しがらみ

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構造

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溜池遺構に編み込まれたしがらみ

しがらみは川中に杭を打ち横木を噛ますことで水流の向きを変える構造のことだが、遺跡発掘調査から土木基礎構造(埋め殺し)にも用いられてきたことが考古学的に立証されるようになった。

稲作が伝来し水田耕作が始まると灌漑が広まり、利水目的で河川からの取水用にしがらみが造られるようになった。やがて用水路ため池土手を補強するためしがらみ骨格としてを盛る技術が編み出された。これは石積が普及した後も基礎構造として継承された。

埋め立て造成都市を構築した江戸の街は、都内埋蔵文化財としてしばしばしがらみ遺構が検出される。この参考事例は江戸東京博物館において模型展示されている。

近代になっても竹筋コンクリートのような構造は、しがらみの応用と捉えられる。

慣用句

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「世間のしがらみ」のように解くことができないこと、制約がある状況の喩えに否定的に引用される。

脚注

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  1. ^ a b c 広辞苑第六版「柵」
  2. ^ a b c d e f g 日本建築ブロック・エクステリア工事業協会・エクステリアプランナー・ハンドブック編集委員会 2005, p. 197.
  3. ^ 建築基準法施工例第126条
  4. ^ a b 日本建築ブロック・エクステリア工事業協会・エクステリアプランナー・ハンドブック編集委員会 2005, p. 13.
  5. ^ a b c d 牧柵の設置”. 独立行政法人 家畜改良センター. 2020年5月1日閲覧。
  6. ^ 電気牧柵(心理柵)の設置のいろは”. 大分県. 2020年5月1日閲覧。
  7. ^ a b c d e f 防護柵の種類と効果的な設置法”. 農林水産省. 2020年3月2日閲覧。
  8. ^ a b 高速道路調査会道路保全用語集改訂委員会 2014, p. 270.
  9. ^ 高速道路調査会道路保全用語集改訂委員会 2014, p. 280.
  10. ^ 高速道路調査会道路保全用語集改訂委員会 2014, pp. 391–393.
  11. ^ a b 日本公園施設業協会 2019, p. 8.
  12. ^ 日本公園施設業協会 2019, p. 102.
  13. ^ 日本公園施設業協会 2019, pp. 164–165.
  14. ^ 日本公園施設業協会 2019, p. 62.
  15. ^ 日本公園施設業協会 2019, p. 104.
  16. ^ 日本公園施設業協会 2019, p. 106.
  17. ^ a b 環境省自然環境局自然環境整備担当参事官室 2022, p. 1, 柵.
  18. ^ 環境省自然環境局自然環境整備担当参事官室 2022, p. 3, 柵.
  19. ^ 鉄道強風対策協議会 2006, p. 2.
  20. ^ キタック. “落石対策工”. 斜面防災対策技術協会. 2025年1月22日閲覧。
  21. ^ 日本建設機械化協会 1988, p. 244.
  22. ^ 日本建設機械化協会 1988, p. 246.
  23. ^ 日本建設機械化協会 1988, p. 253.
  24. ^ 日本建設機械化協会 1988, p. 181.
  25. ^ 日本建設機械化協会 1988, p. 199.
  26. ^ 日本建設機械化協会 1988, pp. 194–195.
  27. ^ 日本建築ブロック・エクステリア工事業協会・エクステリアプランナー・ハンドブック編集委員会 2015, p. 199.
  28. ^ a b c d 日本建築ブロック・エクステリア工事業協会・エクステリアプランナー・ハンドブック編集委員会 2005, p. 198.
  29. ^ 日本建築ブロック・エクステリア工事業協会・エクステリアプランナー・ハンドブック編集委員会 2005, pp. 200–201.

参考文献

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  • 日本建設機械化協会『新編 防雪工学ハンドブック』(改定版)森北出版、1988年3月29日。ISBN 4-627-48081-4 
  • 日本建築ブロック・エクステリア工事業協会・エクステリアプランナー・ハンドブック編集委員会『エクステリアプランナーハンドブック』(第2版)建築資料研究社、2005年6月20日。ISBN 4-87460-840-X 
  • 鉄道強風対策協議会 (2006年9月). “防風設備の手引き” (PDF). 国土交通省. 2025年1月22日閲覧。
  • 高速道路調査会道路保全用語集改訂委員会『現場で役立つ用語集 -よく使う道路保全用語集-』(改訂第2版)高速道路調査会、2014年9月。 
  • 日本公園施設業協会『遊具の安全に関する規準 JPFA-SP-S:2014』(第2版)日本公園施設業協会、2019年8月。 
  • 環境省自然環境局自然環境整備担当参事官室 (2022年3月). “自然公園等施設技術指針” (PDF). 環境省. 2025年1月20日閲覧。

関連項目

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ピケットフェンス(Picket fence