ファテフ110ファーテフ110[1](: فاتح-۱۱۰‎、: Fateh-110、「征服者」) は、固体推進剤を使った一段式の地対地ミサイルであり、少なくとも 200km の射程を持つ短距離弾道ミサイル。これは固形燃料の推進剤を含め、イラン国内で生産されている。イラン航空産業機構では、固形および液体推進剤を使った多くのタイプを生産可能である。イランは2002年9月にファテフ110の最終飛行テストを成功させた。その何週間後かの9月半ば、航空宇宙産業機構はファテフ110の量産工場を開いた。ミサイルの射程は当初は 200 km だったが、2004年9月には 250 km に伸び、必要ならばさらに伸ばすことも可能だと発表された。

ファテフ110
ファテフ110(左)、ハリージェ・ファールス英語版(右)
種類 戦略的短距離弾道ミサイル
原開発国 イランの旗 イラン
運用史
配備期間 2002年–現在
配備先 イランの旗 イラン
シリアの旗 シリア
朝鮮民主主義人民共和国の旗 北朝鮮
開発史
製造業者 イラン
値段 不明
諸元
重量 3,450 kg
全長 8.86 m
直径 0.61 m

ペイロード 500 kg
最大射程 300 km
弾頭 単弾の榴弾もしくはクラスター爆弾

エンジン 固体推進剤(一段式)
誘導方式 慣性および電子光学的端末
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歴史

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イラン・イラク戦争の後、イランは精密な短射程のミサイルの必要性を認識する。なぜなら、ゼルザール英語版ナーゼアート英語版誘導システムが無く、非常に命中率が悪かったからだ。かくして、中華人民共和国製のCSS-8英語版短距離弾道ミサイル(後のトンダル69英語版)200本が1989年に調達された[2]。しかし、これは期待したほど射程が長くなく、また図体が大きい割に比較的実弾頭重量が軽く、イランの要求を満たすものではなかった。そこで、誘導システム付きの短距離弾道ミサイルミサイルを設計・生産するようShahid Bagheri Industriesに注文が出された。開発には中国企業の長城工業総公司が協力した[3][4]

開発は1995年に始まり、ゼルザール2 (en) が設計のベースに選ばれた。伝えられるところでは、シリアも開発に参加し、M-600 という自国バージョンを作った。北朝鮮もミサイルをいくつか入手している[5]。最初のテストは2002年に行なわれて成功し、ミサイルは生産段階に入った。

2004年、射程を 250 km に伸ばしたバージョンが公開された。これは輸出用に作られたものかもしれない[6]

シリアは、2004年に公開されたバージョンをベースにして、2008年時点でまだ自国の M-600 の生産を続けようとしているようである[7]。2010年にイスラエルのマスコミが伝えたところでは、シリアは数百本の M-600 ミサイルをヒズボラに提供してきている[8]

2010年にイランは「ファテフ110 第3世代」と呼ばれる新バージョンをテストした。イラン国防軍需相のアフマド・ヴァヒーディーは、その精密性・射程・反応性・貯蔵性が自国の各所で向上すると述べた。そしてイランのテレビは、テストの光景と今後の影響を報じた[9]。しばらくの後、ミサイルはイスラム革命防衛隊に配備された[10]。ミサイルの射程は 300 km とされた[11]

2011年にイランは、ハリージェ・ファールス英語版と呼ばれる初の対艦ミサイルを公開した。これは明らかにファテフ110をベースにしており、その最新バージョン同様、射程は 300 km である。

設計

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ミサイル本体は Zelzal 2 と非常に似ており、いずれも直径 610 mm、長さ 8.86 m である。

安定板は 3 組ある。4 枚が噴射口近くの下端に付き、そのすぐ上に 4 枚の三角形の安定板が付き、さらに先端の円錐部近くに 4 枚の小さな安定板が付いている。それら 3 組の安定板のうち、先端部のものは可動式だとする情報もある。

派生版

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名称 射程 実弾頭重量 速度 Notes
ファテフ110 200 km 650 kg マッハ 3.5 初期バージョン
ファテフ110 第2世代 250 km 450 kg マッハ 3.7 2004年発表
ファテフ110 第3世代 300 km 650 kg マッハ 3 2010年発表。精度が改善したと報告された[12]
ファテフ110 第4世代 300 km 650 kg マッハ 3 非常な高精度を実現するため、新しい誘導システムが追加された。2012年に披露された。
ハリージェ・ファールス英語版 300 km 650 kg マッハ 3 ファテフ110をベースにした、対艦弾道ミサイル。2011年に公表された[13]
M-600 あるいは Tashreen 250 km 450 kg マッハ 3.7 シリア用バージョン
ファーテフ313 500 km 2015年8月に公開された発展型[14]
ゾルファガール 700 km 500 kg 2016年9月に公開された射程延伸型[15]。2017年に実戦投入されている[16]

関連項目

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脚注

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  1. ^ イラン防衛の新たな成果が公開”. IRIB (2012年8月21日). 2012年11月16日閲覧。
  2. ^ Tondar 69 (CSS-8) (Iran)” (英語). IHS Jane's. 2012年8月9日閲覧。
  3. ^ https://csis-prod.s3.amazonaws.com/s3fs-public/legacy_files/files/publication/141007_Iran_Rocket_Missile_forces.pdf
  4. ^ https://www.americansecurityproject.org/ASP%20Reports/Ref%200134%20-%20Iranian%20Ballistic%20Missiles.pdf
  5. ^ Fateh A-110” (英語). MissileThreat. 2012年8月9日閲覧。
  6. ^ MXF05-000350 Fateh-110 Surface to Surface Missile” (英語). Modlex. 2012年8月9日閲覧。
  7. ^ http://missilethreat.com/missilesoftheworld/id.39/missile_detail.asp
  8. ^ Yaakov Katz, Rebecca Anna Stoil (2010年5月6日). “Hizbullah received hundreds of Syrian missiles” (英語). The Jerusalem Post. http://www.jpost.com/MiddleEast/Article.aspx?id=174792 2012年8月9日閲覧。 
  9. ^ http://www.tabnak.ir/fa/pages/?cid=116337
  10. ^ http://www.mehrnews.com/fa/NewsDetail.aspx?NewsID=1155522
  11. ^ http://www.farsnews.com/newstext.php?nn=8906311044
  12. ^ アーカイブされたコピー”. 2011年10月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年4月15日閲覧。
  13. ^ http://english.farsnews.com/newstext.php?nn=8911181179
  14. ^ Fateh 313‘ missile uncovered”. イラン大統領府 (2015年8月22日). 2020年1月12日閲覧。
  15. ^ Zolfaghar – Missile Defense Advocacy Alliance” (英語). 2020年3月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年10月16日閲覧。
  16. ^ “Iran Fires at Militants in Syria in First Use of Mid-range Missiles in 30 Years” (英語). Haaretz. オリジナルの2022年10月16日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20221016103642/https://www.haaretz.com/middle-east-news/2017-06-18/ty-article/iran-fires-at-militants-in-syria-in-first-use-of-mid-range-missiles-in-30-years/0000017f-f091-df98-a5ff-f3bde4320000 2022年10月16日閲覧。 

外部リンク

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