ビーイング・フォー・ザ・ベネフィット・オブ・ミスター・カイト
「ビーイング・フォー・ザ・ベネフィット・オブ・ミスター・カイト」(Being for the Benefit of Mr. Kite!)は、ビートルズの楽曲である。1967年に発表された8作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』に収録された曲。レノン=マッカートニー名義の作品で、主にジョン・レノンが手がけ、ポール・マッカートニーが一部手伝っている[3][4]。
「ビーイング・フォー・ザ・ベネフィット・オブ・ミスター・カイト」 | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ビートルズの楽曲 | ||||||||||
収録アルバム | 『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』 | |||||||||
英語名 | Being for the Benefit of Mr. Kite! | |||||||||
リリース | 1967年6月1日 | |||||||||
録音 |
| |||||||||
ジャンル | ||||||||||
時間 | 2分37秒 | |||||||||
レーベル | パーロフォン | |||||||||
作詞者 | レノン=マッカートニー | |||||||||
作曲者 | レノン=マッカートニー | |||||||||
プロデュース | ジョージ・マーティン | |||||||||
|
歌詞の大部分は、1843年にロッチデールで開催されたパブロ・ファンクのサーカス公演のポスターから取られている。歌詞に登場する馬の名前「ヘンリー」がヘロインを連想させるという理由から、BBCから放送禁止の処分を受けている。
背景
編集1967年1月30日と31日にイギリスのケント州セブノークスに隣接するノール・パークにて両A面シングル『ストロベリー・フィールズ・フォーエバー / ペニー・レイン』のミュージック・ビデオの撮影を行っていた[5][6]。休憩の合間にジョン・レノンは、町の骨董屋を訪れて1843年のサーカス団のポスターを見つけた。このポスターを買ったレノンは自宅の音楽室の壁に貼り、ポール・マッカートニーの助けを借りながら歌詞を書いた[7]。
歌詞はポスターに掲載されていた宣伝文句からヒントを得て書かれており、このポスターに記載されていた宣伝文句をほぼ丸ごと引用している[7][8][9]。歌詞にするにあたり韻を踏みやすくするために、公演の場所がロッチデールからビショップスゲート、馬の名前がザンサルスからヘンリーに変更された[7]。このうち「ヘンリー」がヘロインを連想させるとして、BBCでは放送禁止とされた。なお、ジョン自身はヘロインと馬の名前の関連性を否定している[10][11]。
レノンは1968年のインタビューで「あれはまともな仕事ではなかった。アルバム用に新曲が必要だったから、惰性で書いただけ。歌詞は全部俺を正面から見つめていた」と語っていたが[12][8]、1980年の生前最後のインタビューでは「普遍的な美しさがある。この曲は水彩画のように純粋だ」と語っている[8]。
2012年、レノンがインスパイアされた元のポスターのレプリカが当時の技術を使って製作され、1967部限定で発売されている[13]。
レコーディング
編集「ビーイング・フォー・ザ・ベネフィット・オブ・ミスター・カイト」のレコーディングは、1967年2月17日に開始され、2月20日に効果音、3月28日にハーモニカとギター、3月29日と31日にオルガンがオーバー・ダビングされた[14]。
2月17日にベース、ボーカル、ドラム、ハーモニウムという編成で7テイク録音された[7]。なお、テイク1の録音前に、レノンは「For the benefit of Mr. Kite」のフレーズをおどけて歌っていた。そのあと、ジェフ・エメリックが「For the Benefit of Mr. Kite! This is take 1.」とアナウンスしたのに対し、レノンが「Being For The Benefit Of Mr. Kite!」と訂正した。その後のセッションで、「And of course Henry The Horse dances the waltz(そしてもちろん馬のヘンリーがワルツを踊ります)」というフレーズの後のセクションのために鍵盤楽器のパートが追加された後、バス・ハーモニカのパートがテープの回転速度を半分落として録音された[7]。また、マッカートニーはギターソロ、レノンとジョージ・マーティンはオルガンを演奏した[7]。
2月20日のセッションで、レノンはマーティンに対して「カーニバルのような雰囲気を持った感じで、おがくずの匂いがしそうな音にしたい」という抽象的な要求をした。当初マーティンはこれに応えるべく、スティーム・オルガンを使用することを考えたが、パンチ穴をあけて自動演奏するモデルしかなかったことから断念。そこでマーティンは、エメリックにパイプオルガンを録音したテープを数センチごとに切り、空中に放り投げてランダムに繋ぎ合わせることを指示した[15][7]。
3月31日にモノラル・ミックス、4月7日にステレオ・ミックスが作成された[7]。
クレジット
編集特記がない限り、『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド (50周年記念エディション)』のブックレットに記載のクレジットを出典とする[7]。
- ビートルズ
- 追加ミュージシャン
-
- ジョージ・マーティン - ハーモニウム、ロウリーオルガン、メロトロン、グロッケンシュピール、テープ・ループ[16]
- ニール・アスピノール:バス・ハーモニカ
- マル・エヴァンズ:バス・ハーモニカ
カバー・バージョン
編集- ビー・ジーズ - ピーター・フランプトンとジョージ・バーンズとともに、1978年に公開された映画『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』でカバー[17]。
- ジェイミー・カラム - 2007年に『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』の発売40周年を記念してBBCで放送された特別番組で演奏[17]。
- エディー・イザード - 2007年に公開された映画『アクロス・ザ・ユニバース』で歌唱[17]。
- チープ・トリック - 2009年に発売されたライブ・アルバム『Sgt. Pepper Live』に収録[18]。
- ポール・マッカートニー - 2013年の「Out There」ツアーで披露[19][17]。
脚注
編集出典
編集- ^ Grelsamer 2010, p. 252.
- ^ Wybenga, Eric (2011). Dead to the Core: An Almanack of the Grateful Dead. Random House
- ^ Miles 1997, p. 318.
- ^ Vozick-Levinson, Simon (2013年7月25日). “Q&A: Paul McCartney Looks Back on His Latest Magical Mystery Tour”. Rolling Stone 2019年2月22日閲覧。
- ^ Miles 2001, p. 255.
- ^ Winn 2009, pp. 77, 85.
- ^ a b c d e f g h i Sgt. Pepper 2017, p. 13.
- ^ a b c Sheff 2000, p. 183.
- ^ Martin 1996, pp. 134–140.
- ^ “Lennon-McCartney Songalog: Who Wrote What” (PDF). Hit Parader Winter 1977 [reprint of April 1972] (101): 38-41 .
- ^ Sheff 2000.
- ^ The Beatles 2000, p. 243.
- ^ “John Lennon's poster”. KOTTKE.ORG (2012年10月9日). 2012年11月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年2月22日閲覧。
- ^ Lewisohn 1988, pp. 98, 99, 105–106.
- ^ Lewisohn 1988, p. 99.
- ^ Gilliland, John (1969). "Sergeant Pepper at the Summit: The very best of a very good year" (audio). Pop Chronicles. University of North Texas Libraries.
- ^ a b c d Womack 2014, p. 146.
- ^ Erlewine, Stephen Thomas. “Sgt. Pepper Live - Cheap Trick | Songs, Reviews, Credits”. AllMusic. All Media Network. 2022年1月23日閲覧。
- ^ “Out There”. PaulMcCartney.com. MPL Communications. 2022年1月23日閲覧。
参考文献
編集- The Beatles (2000). The Beatles Anthology. San Francisco: Chronicle Books. ISBN 0-8118-2684-8
- Grelsamer, Ronald P. (1 September 2010). Into the Sky with Diamonds: The Beatles and the Race to the Moon in the Psychedelic '60S. AuthorHouse. ISBN 978-1-4520-7053-7
- ハウレット, ケヴィン (2017). サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド 50周年記念エディション (6枚組スーパー・デラックス) (ブックレット). ビートルズ. アップル・レコード.
- Lewisohn, Mark (1988). The Beatles Recording Sessions. New York: Harmony Books. ISBN 0-517-57066-1
- マーティン, ジョージ『メイキング・オブ・サージェント・ペパー』水木まり(訳)、キネマ旬報社、1996年。ISBN 978-4873761657。
- Miles, Barry (1997). Paul McCartney: Many Years From Now. New York: Henry Holt and Company. ISBN 0-8050-5249-6
- Miles, Barry (2001). The Beatles Diary Volume 1: The Beatles Years. London: Omnibus Press. ISBN 0-7119-8308-9}
- Sheff, David (2000). All We Are Saying: The Last Major Interview with John Lennon and Yoko Ono. New York: St. Martin's Press. ISBN 0-312-25464-4
- Winn, John C. (2009). That Magic Feeling: The Beatles' Recorded Legacy, Volume Two, 1966-1970. New York, NY: Three Rivers Press. ISBN 978-0-307-45239-9
- Womack, Kenneth (2014). The Beatles Encyclopedia: Everything Fab Four. Santa Barbara, California: ABC-CLIO. ISBN 0-3133-9172-6
外部リンク
編集- Being for the Benefit of Mr. Kite! - The Beatles