ビデオテープ
ビデオテープ(英語: videotape)は、映画フィルムと対照的な磁気テープ上に映像と音声を記録する手段として、1951年に最初のビデオテープレコーダーが発明された。
ビデオテープはその他の磁気テープと同じくフィルムベースのテープに磁気粉末を塗布したものである。塗布される磁性体は酸化鉄や非酸化金属磁性体、いわゆるメタルなど。記録できる信号は磁気粉末が充分にあることが必要で、粉末が微細化されてより多くの量がある必要がある。また保磁力も必要となる。そのためビデオデッキの開発とともにビデオテープの開発もまた市場を形成するうえで必要であった。
ほとんどの場合、スパイラル状のビデオヘッドは、2次元でデータを記録するために、動いているテープに当接して回転する。 なぜなら、映像信号は非常に高い帯域幅を持ち、静止しているヘッドは非常に高いテープ速度を必要とするからである。ビデオテープはビデオテープレコーダー(VTR, VCR)とカムコーダーで使われる。テープは情報を保存する上で線形方式であり、ほとんどのビデオ記録物が日々デジタル化されるため、デジタル映像データの非線形/任意アプローチが日常化されるにつれて(DVDやハードディスクなどを利用するカムコーダーが日常化されるにつれて)、ビデオテープの重要性は次第に消えると予測する。
歴史
編集1970年代に入り、ビデオテープ市場にはVHS、ベータマックスなど複数の規格が登場して競争した。当初の家庭用ビデオのテープは幅が2分の1インチ、テープ速度が約3〜4センチ、サイズはB5の本くらいでプラスチックのハーフに収まっており2時間の録画ができた。テープは蓋で覆われており接触できないものであった。それに対し放送業務用では画質優先のため1〜2インチ幅のオープンリールタイプが主流で、1980年代の後半までテレビ局などではメインで使われていた。
テープ価格は放送用100万円規模からスタートした。非常に高価だったのとその大きさから場所を取るため東京のテレビ局レベルでも保存は難しく、この頃の各局番組アーカイブは非常に偏っており数も少ない。家庭用ビデオのVHSは売値4000円位からのスタートだった。
1980年代に入ると、同じビデオテープでも磁性体やその充填具合、バックコーティング技術などで差別化がされメーカごとに高画質、高音質対応のビデオテープなどが発売されるようになった。ランク分けとしては下位からスタンダード、ハイグレード、Hi-Fi、プロなど。上位ほどノイズの少ない高画質・高音質記録ができるとされていた。価格も3本パック2千円など低価格化していった。
磁性体の進化
編集オーディオ用テープのそれと同様に、磁性体は酸化鉄からコバルト系などが使われてきたが、メタル化は互換性等点で難点があるためオーディオテープよりも遅れた。最初に出たメタルビデオテープは1984年に製品化した8ミリビデオであり、これは当初からメタルテープによる規格であった。これ以降に発表された新システムのビデオテープはすべてメタルとなっている。
続いて業務用途で松下が1984年に発売したMⅡがメタルテープでの新規格として登場、2分の1インチテープでは初。1986年に発売されたD-2方式の放送業務用ビデオはデジタルとして初のメタルテープ規格となった(D-1方式は酸化鉄テープだった)。
1987年に発表されたS-VHSでは、水平解像度を従来の220本程度から400本以上と高画質化させているにも関わらず、従来の機器との互換性を考慮しVHSとしても記録可能なコバルト系のテープとなった。当時は規格の頭首である日本ビクターを筆頭に各テープメーカデーある富士フイルム(ブランド名フジ、アクシアなど)、日立マクセル、TDK、住友3M(ブランド名スコッチ)などがこれに賛同しハードの発売とともに各社揃ってテープも発売された。このメタルテープを使わないという判断はその後S-VHSのビデオテープ価格の大幅な引き下げに貢献した。
1994年にはデジタルビデオ規格としてDVが発表、従来の塗布型メタルテープではなく、蒸着型メタルテープを使用し更に小型化することに成功、それまでの8ミリビデオに取って代わり家庭用ビデオカメラの実質的な標準規格として2010年頃まで使われていった。
ビデオテープの手入れ
編集ビデオテープは素材によって経年変化による再生不良が起きやすい。テープそのものから磁性体がはがれ落ちたり、吸湿により切れやすくなったりする。通常は1本単位でケースに入れられており背ラベルに録画情報を記載して棚に保管する
また、メカニカルな部分も多いため固着によりテープの引き出しがうまく行かず機器に絡んだりすると一般的にはお手上げとなり、機器に詳しくないとビデオデッキを壊す原因にもなる。
単純に室内放置するだけでホコリが付着し、機器の動作不良やヘッドの目詰まりの原因となる。古いビデオテープはエアダスターなどで埃を軽く取り、カセット本体のあけしめをして不具合がないことを確認することが望ましい。
またテープにはカビが生えやすい。カセットウインドウから見て白く細かい粉状のものが吹いて見えたらカビである。そのまま再生させると機器故障の原因となる。
クリーニングテープ
編集通常ビデオテープを使用するだけで機器側には開閉口からの埃りや剥がれた磁性体などによりヘッドの目詰まりなどが起きる。そうなるとまともに映像を記録再生することができなくなり、画面に盛大なノイズとなって現れる。そういった事が起きても家庭では本体を開けて清掃することは非常に難しくメーカも推奨していない。そのため、テープが通る個所全体を一斉に清掃するのがクリーニングテープである。主に乾式と湿式と呼ばれる2種類があり、乾式はそのまま機器に入れて再生させるだけでヘッドの目詰まりなどを取り除く素材により汚れを取ることができる。湿式はクリーニング液をカセットの脇から入れて、走行するテープが濡れた状態でクリーニングする。ただし、これらのクリーニングテープ自体がヘッドを傷める遠因にもなるため過度な使用は推奨されていない。
テープ端の検出
編集ビデオテープの最初と最後の部分、いわゆるリーダーテープと呼ばれる部分には磁性体が塗られておらず、別のものとなっている。
これはテープの早送りや巻き戻しによって巻き終わった時に検出機能が働き、テープが切れたり機器に過負荷がかかり壊れるのを防ぐだめ規格で決められている。
ベータテープは頭端がアルミ素材になっており、磁気検出により停止する。VHSや8ミリビデオ、DV方式は透明テープとなっており、光検出により停止する。
2025年問題とアーカイブ保存
編集ビデオテープは記録している磁気信号が経年で弱くなってくる。昭和から平成にかけて広く使われたVHSテープの映像が見られなくなる「2025年問題」が指摘されたりしている。VHSに限らず全てのビデオテープにも言えることで、放送用の初期にあった2インチVTRなどは再生させる機材がほぼなくなっており、貴重な映像資産が見れなくなる可能性もある。
現在ビデオテープを再生できる機器は全て生産を完了しており、手持ちの機材を補修しながら使うか中古市場で機器を調達するしかなくなっている。オーディオ機器と違い複雑な機構を持つビデオ機器はメーカによる再発売は期待できないため今後その映像資産のほとんどは日の目を見ることなく廃棄される可能性が高い。
そのためアーカイブを現行の資機材にダビングするサービスなどが行われているが、料金も高いため利用は伸びてないのが現状である。
また、デジタル資産であるDVやHDV記録のテープはパソコンへのコピーで対応できそうに思えるが、キャプチャするためのソフトウェアをほとんどのビデオ編集ソフトが外し始めているためこちらも困難度が高くなってきている。
互換性の問題
編集ビデオテープは回転ヘッドが10〜60μm幅の線を1800rpm以上の回転で記録していくが、それを正確にトレースして再生する必要がある。しかし規格で決められていても機器ごとの個体差により記録した機器以外で再生させるとトレースできる範囲を逸脱しノイズが出ることが多い。またVHSはハイファイ音声が映像から独立したヘッドなため映像と音声の両方のトラッキングを合わせることは難しい。そういったこともあり理想の状態で映像資産をコピーするのに障壁となっている。先にあるダビングサービスをおこなう所によってはメーカーごとの機材を用意しズレの少ない機材で最良な再生状態でコピーを行うようにしている業者もある。
脚注
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