ビッチュウフウロ
ビッチュウフウロ(備中風露、学名: Geranium yoshinoi)は、フウロソウ科フウロソウ属の多年草[2][3][4][5]。別名、キビフウロ[1][3]。
ビッチュウフウロ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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分類(APG IV) | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Geranium yoshinoi Makino ex Nakai (1912)[1] | ||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
ビッチュウフウロ(備中風露)[2][3] |
特徴
編集根出葉は少数あり、葉柄は長さ30cmになる。茎は高さ40-80cmになり、細く、よく分枝し、茎や葉柄に下向きの短い伏した毛が生える。茎葉はふつう対生し、葉身は円形から腎形で、幅5-12cm、掌状に4分の3から6分の5まで5-7裂し、裂片は菱形になり、さらに切れ込む。葉の表面と裏面の葉脈上に伏した毛が生える。葉柄の基部の托葉は草質、卵形で長さ約4mmになり、ふつう合生する[2][3][4][5]。
花期は8-11月。花は淡紅紫色で径2cm、細長い茎先または枝先に2個ずつつき、花序柄と花柄に下向きの伏した毛が生える。萼片は5個あり、長さ5-6mm、縦に3-5脈があり、先端は芒状にとがり、外面の脈上に伏した毛が生える。花弁は5個あり、萼片より長く、濃色の脈が網の目状に広がり、花弁基部の内側に白色の長い軟毛が散生する。雄蕊は10個あり、葯は青紫色から淡青紫色になる。雌蕊は1個で、花柱合生部の先端の花柱分枝は長さ3-3.5mmになる。果実は分果で、長さ1.5-2cmになり、微細な毛が生える。染色体数は2n=28[2][3][4][5]。
分布と生育環境
編集日本固有種[6]。本州の福井県[4]、長野県、東海地方[5]、近畿地方北部、中国地方に分布し[4][5]、山地の湿性草地や湿原の周囲[5]、湿地に生育する[2]。
名前の由来
編集和名ビッチュウフウロは、「備中風露」の意[2][3]。岡山県の植物研究者である吉野善介 (1877 - 1964) が1910年に発見し[7]、基準標本を採集したのが、旧備中国である岡山県阿哲郡本郷村(同郡哲多町を経て、現新見市)であることからであるが、中井猛之進 (1912) による原著論文によると、はじめ吉野善介によって「ビッチュウフウロソウ」と仮称されていた[8]。
種の保全状況評価
編集国(環境省)でのレッドデータブック、レッドリストの選定はない。都道府県のレッドデータ、レッドリストの選定状況は、次の通りとなっている[10]。福井県-要注目、長野県-絶滅危惧IB類(EN)、岐阜県-準絶滅危惧、愛知県-絶滅危惧IB類(EN)、滋賀県-絶滅危惧増大種、京都府-絶滅危惧種、兵庫県-Aランク、鳥取県-絶滅危惧II類(VU)、島根県-絶滅危惧II類(VU)、岡山県-準絶滅危惧。
類似種
編集同属のイヨフウロ Geranium shikokianum Matsum. (1901) var. shikokianum[11]に似るが、生育環境や大きさなどが異なる[2]。イヨフウロは、山地の草地に生育し、茎、花序柄、花柄に開出毛か下向きの長毛が生え、花の径は2.5-3cmと大きく、花弁基部の縁にのみ白色の軟毛が生える[12]。一方、本種は、山地の湿性草地や湿原周囲に生育し、茎、花序柄、花柄に下向きの伏した短い毛が生え、花の径は約2cmで、同種と比べれば小さく、花弁基部の内側に白色の軟毛が散生する[5]。
ギャラリー
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花は淡紅紫色で、濃色の脈が網の目状に広がり、花弁基部の内側に白色の長い軟毛が散生する。
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花は細長い茎先または枝先に2個ずつつき、花序柄と花柄に下向きの伏した毛が生える。
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茎葉はふつう対生し、葉身は円形から腎形で、5-7中-深裂し、裂片は菱形になり、さらに切れ込む。
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根出葉。
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白花のもの。
脚注
編集- ^ a b ビッチュウフウロ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ a b c d e f g 『広島の山野草』「夏編」、p.103
- ^ a b c d e f 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.749
- ^ a b c d e 『原色日本植物図鑑・草本編II』p.90
- ^ a b c d e f g 門田裕一 (2016)「フウロソウ科」『改訂新版 日本の野生植物 3』p.252
- ^ 秋山忍 (2011)「フウロソウ科」『日本の固有植物』p.82
- ^ 土岐隆信「明治以降の岡山県における民間の植物研究の軌跡」『岡山県自然保護センター研究報告』第27巻、岡山県自然保護センター、2020年、3-5頁。
- ^ T. Nakai「Notulæ ad Plantas Japoniæ et Coreæ VII」『植物学雑誌 (The Botanical Magazine)』第26巻第309号、東京植物学会、1912年、258-259頁、doi:10.15281/jplantres1887.26.309_251。
- ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1520
- ^ ビッチュウフウロ、日本のレッドデータ検索システム、2024年9月30日閲覧
- ^ イヨフウロ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ 門田裕一 (2016)「フウロソウ科」『改訂新版 日本の野生植物 3』p.253
参考文献
編集- 加藤雅啓・海老原淳編著『日本の固有植物』、2011年、東海大学出版会
- 小池周司・浜田展也・武内一恵『広島の山野草』「夏編」、2011年、南々社
- 北村四郎・村田源著『原色日本植物図鑑・草本編II(改訂版)』、1984年、保育社
- 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 3』、2016年、平凡社
- 牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
- 日本のレッドデータ検索システム
- T. Nakai「Notulæ ad Plantas Japoniæ et Coreæ VII」『植物学雑誌 (The Botanical Magazine)』第26巻第309号、東京植物学会、1912年、258-259頁、doi:10.15281/jplantres1887.26.309_251。
- 土岐隆信「明治以降の岡山県における民間の植物研究の軌跡」『岡山県自然保護センター研究報告』第27巻、岡山県自然保護センター、2020年、3-5頁。