ヒルギモドキ(蛭木擬、学名:Lumnitzera racemosa)はシクンシ科ヒルギモドキ属の常緑木本。潮間帯に生育するマングローブ樹種のひとつ。なお、和名の似ているヒルギダマシクマツヅラ科(あるいはキツネノマゴ科)の植物である。

ヒルギモドキ
ヒルギモドキ(沖縄県西表島)
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
亜綱 : バラ亜綱 Rosidae
: フトモモ目 Myrtales
: シクンシ科 Combretaceae
: ヒルギモドキ属 Lumnitzera
: ヒルギモドキ
Lumnitzera racemosa
学名
L. racemosa Willd.
和名
ヒルギモドキ(蛭木擬)

特徴

編集
形態

成木で高さ10m程度となる常緑小高木だが、北限となる沖縄では高さ4m-5m程度までの個体が多い。他のマングローブ植物より比較的陸化した砂質の場所を好む。は直立。また、呼吸根は目立たず、株を中心にした地上部から匍匐根として周囲に伸び、その先端で分枝して土壌に入り込む。葉は比較的多肉で、長さ5cm程度で枝の先に多く、互生する。形状は卵形から長楕円形。先端に凹みがあることが大きな特徴である。花期は3-7月。花は総状花序で腋生。5mm程度で白い5枚の花弁を持つ[2][3](萼筒)は緑色で、先端は裂けるが短い。果実は長さ1cm程度の長楕円形で、緑色で、頂端に萼歯が残る

分布

編集

アフリカ熱帯域から南アジアオーストラリア熱帯および亜熱帯の海岸に広く分布し、日本国内では、南西諸島沖縄本島久米島?・宮古島石垣島小浜島西表島与那国島)に分布する。分布の北限は沖縄本島である。

日本における生育地

編集

沖縄諸島全体の汽水域にマングローブとして生える。特に沖縄本島の株は本種の世界的な北限でもある。久米島での生育状況は不明で、石垣島西表島では工事等の影響で自生地が消失している。このため世界的には広い分布域を持つ本種であるが、日本では個体数が少なく、なおかつ生息地の埋め立てや土砂の堆積、乾燥化した部分への他の植物の侵入・競争により個体数は減少を続けている。またはっきりとした帯状分布を示さずに、マングローブの林縁部などに小群や単一の株として生育する[4]絶滅危惧IA類 (CR)環境省レッドリスト)に指定されている。

日本国外における生育地

編集

利用

編集

中近東などでは、ラクダ等の飼料として利用されるほか、木炭原料や、パルプとして製紙原料とされる。

保護上の位置づけ

編集

脚注

編集
  1. ^ Ellison, J., Koedam, N.E., Wang, Y., Primavera, J., Jin Eong, O., Wan-Hong Yong, J. & Ngoc Nam, V. (2010). Lumnitzera racemosa. The IUCN Red List of Threatened Species 2010: e.T178846A7625290. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2010-2.RLTS.T178846A7625290.en. Downloaded on 27 October 2018.
  2. ^ 西表島のヒルギモドキについて(第1報)
  3. ^ 西表島の絶滅危惧種のヒルギモドキについて(第2報)
  4. ^ マングローブの分布と植生に関する研究・西表島マングローブ林の林分構造

参考文献

編集
  • 沖縄県文化環境部自然保護課編 『改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(菌類編・植物編)-レッドデータおきなわ-』、2006年。
  • 環境庁自然環境局野生生物課編 『改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物8 植物I(維管束植物)』 財団法人自然環境研究センター、2000年、ISBN 4-915959-71-6
  • 島袋敬一編著 『琉球列島維管束植物集覧』 九州大学出版会、1997年。
  • 多和田真淳監修・池原直樹著 『沖縄植物野外活用図鑑 第4巻 海辺の植物とシダ植物』 新星図書出版、1979年。
  • 土屋誠・宮城康一編 『南の島の自然観察』、東海大学出版会、1991年。
  • 初島住彦・天野鉄夫 『増補訂正 琉球植物目録』 沖縄生物学会、1994年。

外部リンク

編集