ヒュンダイ・スクープ
スクープ (SCOUPE[注釈 1]、朝: 스쿠프) は、大韓民国の自動車製造会社、現代自動車により1990年から1995年にかけて製造・販売されたクーペ型の小型乗用車 (韓国における区分では小型車) である。初期のキャッチコピーは「スポーツパッションカー」。
概要
編集エクセルをベースとしたクーペ[1]。1989年10月、東京モーターショーに「エクセルSLC」として参考出品され、1990年2月に「スクープ」として発売された[1]。韓国車では初の2ドアクーペである[2]。
2,385 mmのホイールベースや、前マクファーソンストラット/後トレーリングアームというサスペンション形式は、エクセルと同じである。
当初はエクセルと同じ三菱設計、マルチポイントインジェクション仕様の1,468 ccオリオンエンジンを積んだ。1991年4月、現代自動車が独自開発した1,495 ccのαエンジンが登場、気筒当たり3バルブ(吸気2、排気1)のSOHCで102馬力を発揮。同年10月にはαエンジンのターボ仕様(129馬力)が追加された[1]。1992年7月、前後ランプが横長になるなどマイナーチェンジ[1]。1995年まで生産された。
突出した性能や装備はないものの、韓国ではこのようなスポーツクーペが輸入車しか存在しなかったため、発売当初から若者を中心に支持を集めた。しかし、当時の韓国は「スポーツカー」に乗り慣れている者が圧倒的に少なく、無茶な運転から死亡事故を含む交通事故が多々発生した。このため当時の韓国では度々この車を問題視する声が上がった。
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前期型(オーストラリア仕様) フロント
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前期型(欧州仕様) リア
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前期型(韓国仕様) フロントサイド
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前期型(韓国仕様) リアサイド
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後期型 フロント
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後期型 リア
歴史
編集- 1989年 (平成元年) 10月26日 - 東京モーターショーにて、プロジェクト名と同じ『SLC』 (Sports-Looking Car) として参考出品。
- 1990年 (平成2年) 2月20日 - X2系エクセルをベースに、開発費用に521億ウォンを費やし発売[1]。発売1ヶ月で契約台数5,000台を突破する。スポーティな外装デザインとフローティングルーフとしたCピラー、当時における韓国車では最高水準である空気抵抗係数 (Cd値) 0.30を誇り、顧客の年齢層は20代が32.2%、30代が50.1%を占め、若年層を中心に人気を集めた[1]。エンジンはエクセルにも搭載される三菱製G4DJ型1,468cc直4 SOHC自然吸気を搭載するものの、加速性能や登坂性能を向上させる為、最終減速比を4.021から4.322へと引き上げた。0-100km/h加速12.1秒、最高速度174km/hを発揮する。フロントは同時期に販売された、ベース車でもあるX2系エクセル、Y2系ソナタと統一感を持たせた。
- 1991年 (平成3年) 5月1日 - 同社初の独自開発であるG4EK型1,495cc直4 SOHC自然吸気を現代車初の追加設定[注釈 2]。0-100km/h加速11.1秒、最高速度180km/hを発揮する。
- 1991年 (平成3年) 10月1日 - ギャレット製T-2型インタークーラー付ターボチャージャーを搭載するスクープターボ (SCOUPE TURBO、朝: 스쿠프 터보) を追加発売。韓国車初のターボエンジン搭載車であり、0-100km/h加速8.00秒、最高速度220km/hを発揮する[3]。最高出力向上に対応する為、等速ジョイントをY2系ソナタから流用し、トルクステアを防止する為、センタードライブシャフトを追加採用し、等速ジョイントの全長を対称とした。なお、インタークーラーは非採用である為、最高出力は外気温度に大きく影響され、過熱問題が存在した。ブレーキは前輪ベンチレーテッドディスクブレーキと後輪ドラムブレーキを採用し、X字型システムにより、いずれか片方に異常が生じた際ももう片方が動作する。ブレーキブースターは9インチを採用。
スペック
編集区分 | 1.5ℓ オリオン | 1.5ℓ アルファ | 1.5ℓ アルファ ターボ |
---|---|---|---|
全長 (mm) |
4,215 | ||
全幅 (mm) |
1,625 | ||
全高 (mm) |
1,330 | ||
ホイールベース (mm) |
2,385 | ||
トレッド (前, mm) |
1,390 | ||
トレッド (後, mm) |
1,340 | ||
乗車定員 | 5人 | ||
トランスミッション | 5速MT 4速AT |
5速MT | |
サスペンション (前/後) |
マクファーソンストラット/セミトレーリングアーム | ||
駆動形式 | 前輪駆動 | ||
エンジン形式 | G4DJ | G4EK | |
燃料 | ガソリン | ||
排気量 (cc) |
1,468 | 1,495 | |
最高出力 (ps/rpm) |
97/5,500 (後に 90/5,500に変更) |
102/5,500 | 129/5,500 |
最大トルク (kg*m/rpm) |
14.3/3,000 (後に 13.5/3,000に変更) |
14.5/4,000 | 18.3/4,500 |
最高速度 (km/h) |
173(5速MT) | 180(5速MT) 168(4速AT) |
205(5速MT) |
燃費 (km/ℓ) |
15.4(5速MT)/ 13.21(4速AT) |
16.4(5速MT)/ 12.71(4速AT) |
14.12(5速MT) |
車名の由来
編集『スクープ』は、『Sports』の『S』と『COUPE』を組み合わせた造語であり[1]、スクープ[要曖昧さ回避]を意味するScoopと同音である。
脚注
編集注釈
編集- ^ 英語圏では『エスクーペ』と発音する。実際、2009年6月28日放送のトップ・ギア シーズン13 #2『17歳のためのクルマ』では、リチャード・ハモンドにより同車が選ばれた際、『エスクーペ』と発音した。なお、1990年のアメリカ合衆国におけるローンチでは、『スクープ』と紹介された。
- ^ 新開発である為、実績が無く、他の主力車種に搭載した際にイメージダウンへと繋がる可能性があった為、初搭載はスクープとした。
出典
編集- ^ a b c d e f g “Before N - 스쿠프 #1 (Before N - スクープ #1)” (朝鮮語). hyundai.com. 現代自動車. 2023年12月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月29日閲覧。
- ^ “1990 Scoupe SLC - Heritage” (朝鮮語). 現代自動車. 2020年10月29日閲覧。
- ^ “현대 스쿠프 국내 스포츠 쿠페의 원조 (ヒュンダイ・スクープ 国産スポーツクーペの原祖)” (朝鮮語). carlife.net. カーライフネット (2003年3月8日). 2021年5月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年1月11日閲覧。
関連項目
編集- 現代自動車
- ヒュンダイ・エクセル(ポニー)
- ヒュンダイ・クーペ
- ヒュンダイ・TB - α系エンジン搭載車種
外部リンク
編集- スクープ (1990.02) - Heritage 1990's(現代自動車、韓国語)
- Before N - スクープ#1 国産スポーツカーの胎動 - スクープの略史(現代自動車、韓国語)
- Before N - スクープ#2 スクープの過去と現在 - オーナー紹介、試乗記(現代自動車、韓国語)
- HYUNDAI MOTOR(朝鮮語)
- HYUNDAI MOTOR(英語)
- 前期型のCM(韓国仕様車)
- 後期型ターボ車のCM(韓国仕様車)