ヒメヒラテンツキ

カヤツリグサ科の植物の一種

ヒメヒラテンツキ Fimbristylis autumnalis (L. 1817.) はカヤツリグサ科植物の1つ。柔らかく小柄なテンツキ属のものである。

ヒメヒラテンツキ
ヒメヒラテンツキ
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 単子葉類 monocots
階級なし : ツユクサ類 commelinids
: イネ目 Poales
: カヤツリグサ科 Cyperaceae
: テンツキ属 Fimbristylis
: ヒメヒラテンツキ F. autumnalis
学名
Fimbristylis autumnalis (L. 1817.)

特徴

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小柄な1年生草本[1]。全体に柔らかくて毛がない[2]匍匐茎などはなく、茎や葉は束になって生じる。草丈は花茎の高さにして15-30cmくらいである。は扁平になっている[3]。根出状に出るは少数だけあり、葉幅は約2mm。基部の鞘は褐色をしている。

花期は7~10月。花茎の先端に複散房状の花序を着ける。花序の基部にある苞は2~3枚あり、葉状に発達する部分は線形でその長さは花序と同程度か、あるいはやや短いくらい。花序は2~3回分枝して[2]5~10個の分花序を含み、長さは5~8cm程で多数の小穂をつける。小穂は長さが3~6mmと小型で、形は狭披針形で先端は尖っており、色は赤褐色。1つの小穂には7~15個の小花が含まれる。小穂の鱗片は広披針形で長さ1.5~2mm、先端は鋭く尖った形で、また背面に竜骨がある。痩果は倒卵形で断面は3稜形をしており、長さは約0.7mmで、色は白く、表面は滑らかであるか、あるいはその表面に小さな瘤状の突起がある。柱頭は3つに割れる。

別名にクサテンツキ、ヒメテンツキがある[2]。牧野原著(2017)ではヒメテンツキを標準としており、その意味については果穂が細くてやせていることから、としている[4]。ヒラは、平らの意味で、茎が平らであることに依る[3]

分布と生育環境

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日本では北海道から琉球列島まで見られ、国外では朝鮮半島中国、それに北アメリカに分布する[2]

平地湿地水田などに生える[5]

分類、類似種など

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本種の属するテンツキ属は世界で約200種あり、日本には26種ほどが知られる[6]。その中で本種は1年生で柔らかいこと、小穂が尖っていて小さいこと、果実が白っぽく熟すること、柱頭は細く、先端が3つに裂けることなどを特徴とする。大きさで言えばもっとも普通種である無印のテンツキ F. dichotoma は背丈が15~50cm、小穂の長さが5~8mm、小さい方ではメアゼテンツキ F. squarrosa var. esquarrosa は草丈が10~20cm、小穂の長さが4~6mm、本種の大きさはこれらのほぼ中間程度となっている。またヒデリコ F. littoralis などは小穂が丸い点で区別できる。名前の点では対をなすようなのがオオヒラテンツキ F. complanata で、やはり花茎が扁平で小穂は尖っていて長さ5~8mmと本種に似た面はあるが、草丈は50~80cmと大きいもので、またこの種は日本では琉球列島からのみ知られている。

星野他(2011)では似たものとしてノテンツキ F. complanata var. exaltata をあげており、違いとしてはこの種は多年生であること、葉が柔らかいこと、小穂や鱗片が短いことなどで区別できる、としている[5]

保護の状況

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環境省レッドデータブックでは指定がなく、県別でも沖縄県で絶滅危惧II類、長野県で準絶滅危惧、鹿児島県で分布特性上重要な種の指定がある程度である[7]。沖縄県と鹿児島県での指定は分布南限域でのものと思われる。それ以外の地域ではおおむね普通種と言うことかと思われる。

出典

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  1. ^ 以下、主として星野他(2011) p.572.
  2. ^ a b c d 大橋他編(2015) p.348.
  3. ^ a b 谷城(2007) p.129.
  4. ^ 牧野原著(2017) p.384.
  5. ^ a b 星野他(2011) p.572
  6. ^ 大橋他編(2015) p.346.
  7. ^ 日本のレッドデータ検索システム[1]2024/11/21閲覧

参考文献

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  • 大橋広好他編、『改定新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』、(2015)、平凡社
  • 牧野富太郎原著、『新分類 牧野日本植物図鑑』、(2017)、北隆館
  • 星野卓二他、『日本カヤツリグサ科植物図譜』、(2011)、平凡社
  • 谷城勝弘『カヤツリグサ科入門図鑑』(2007) 全国農村教育協会