パリノード
パリノード(英: palinode、仏: palinodie, パリノディ、古希: παλινῳδία, パリノーディア)とは、作者が前に詠んだ詩で表明した見解や心情を撤回する頌歌のこと。改詠詩(かいえいし)とも。
起源
編集最初にパリノードの詩を書いたと言われているのは、紀元前7世紀のステシコロスである。ステシコロスが取り消した前の詩は、トロイア戦争が起きたのはすべてヘレネー(ヘレン)の責任だという詩である[1]。
語源と応用
編集ギリシャ語のπαλιν(再び)+ ωδη(歌)。ラテン語で同じ意味の「recant」は完全な翻訳借用(re(再び)+cant(歌う))。
例
編集チョーサー『カンタベリー物語』の『チョーサーの撤回』がパリノードの代表的な例である。
中世の作家では、アウグスティヌス、ベーダ・ヴェネラビリス、ウェールズのジェラルド(Gerald of Wales)、ジャン・ド・マン(Jean de Meun)などがパリノードを作った。
ジェレット・バージェス(Gelett Burgess)は、その晩年、有名な自分の詩『Purple Cow』について、次のようなパリノードを書いた。
- Ah, yes! I wrote the purple cow,
- I’m sorry now I wrote it!
- But I can tell you anyhow,
- I’ll kill you if you quote it!
- (大意「ああ、そうだ! 私は『Purple Cow』を書いた。今では書いたことを遺憾に思っている! それでも諸君にこうは言える。もし、諸君がそれを引用したら殺す!」)
オグデン・ナッシュ(Ogden Nash)も有名な自作の詩『Reflections on Ice-Breaking』(Candy / is dandy / But liquor / is qucker。「キャンディはダンディだが、蒸留酒は効き目が早い」)についてのパリノードを書いた。
- Nothing makes me sicker
- than liquor
- and candy
- is too expandy
- (大意「酒より私をむかつかせるものはないし、キャンディーはとてもexpandyだ」)