パゴクロン(Pagoclone)は、睡眠薬として知られるゾピクロンと同族の、シクロピロロン英語版族の抗不安薬である。非ベンゾジアゼピン系として知られる比較的最近になって開発された医薬品の種類のひとつであり、さらに古いベンゾジアゼピン系のグループとは化学構造がまったく異なるが、同様の作用を有する。

パゴクロン
IUPAC命名法による物質名
データベースID
CAS番号
133737-32-3
ATCコード none
PubChem CID: 131664
ChemSpider 116335 チェック
UNII 38VAG2SA33 チェック
ChEMBL CHEMBL2104745
化学的データ
化学式C23H22ClN3O2
分子量407.893 g/mol
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パゴクロンは当初は抗不安薬として開発されたが、商品化されてはいない。これは、脳のGABAA受容体に対する部分的作動薬英語版である。ゾピクロンとは対照的に低用量にて、鎮静健忘の作用は僅かか全くないまま、抗不安作用を生じる。[1]このためパゴクロンは、この種の薬剤が抗不安作用を生じる原因となるGABAA受容体におけるα2/α3サブタイプ部位に結合し、またα1サブタイプへの影響が相対的に少ないため鎮静と記憶喪失作用が少ない、サブタイプ選択的薬剤である[2]

ブリストル大学デビッド・ナットは、攻撃性、健忘吐き気、協調運動障害、肝臓へのダメージのような否定的な影響を引き起こさずに、リラックスや社交性のようなアルコールの肯定的な影響を生じさせるよりよい社交薬となる可能性を示唆している。それらの作用は、すでにベンゾジアゼピン系過剰摂取英語版の解毒に用いられているフルマゼニルの作用によって急速に元に戻せる。[3]

ナット教授はIndevusが製薬特許を保有し、また研究に出資したパゴクロンの可能性を絶賛する研究を出版し、2006年春時点でその化合物の生産のための出資を探している[4]。パゴクロンの長期的な安全性は評価されたことがないその重大さは未知である。パゴクロンの乱用の可能性は、同類のジアゼパムよりも、若干少ないと評価されてきたし、また相対的に弱い鎮静作用により多少は安全であると予想できるが[5]、乱用の懸念から商業薬としてのパゴクロンの開発はありそうにない。

パゴクロンはまた、吃音者の発音を流暢さを改善する薬として試験されている[6]

脚注

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  1. ^ Atack JR. Anxioselective compounds acting at the GABA(A) receptor benzodiazepine binding site. Current Drug Targets. CNS and Neurological Disorders. 2003 Aug;2(4):213-32.
  2. ^ Atack JR. The benzodiazepine binding site of GABA(A) receptors as a target for the development of novel anxiolytics. Expert Opinion on Investigational Drugs. 2005 May;14(5):601-18.
  3. ^ Nutt DJ (2006). “For "Critique and Commentaries" section of the Journal of Psychopharmacology: Alcohol alternatives - a goal for psychopharmacology?”. Journal of Psychopharmacology 20 (3): 318–320. doi:10.1177/0269881106063042. PMID 16574703. 
  4. ^ Lingford-Hughes A et al. (2005). “A proof-of-concept study using [11C]flumazenil PET to demonstrate that pagoclone is a partial agonist”. Psychopharmacology 180 (4): 1–3. doi:10.1007/s00213-005-0060-1. PMID 15986186. 
  5. ^ de Wit H, Vicini L, Haig GM, Hunt T, Feltner D. Evaluation of the abuse potential of pagoclone, a partial GABAA agonist. Journal of Clinical Psychopharmacology. 2006 Jun;26(3):268-73.
  6. ^ Maguire, G; Franklin, D; Vatakis, NG; Morgenshtern, E; Denko, T; Yaruss, JS; Spotts, C; Davis, L; Davis, A; Fox, P; Soni, P; Blomgren, M; Silverman, A; Riley, G (February 2010). “Exploratory randomized clinical study of pagoclone in persistent developmental stuttering: the EXamining Pagoclone for peRsistent dEvelopmental Stuttering Study.”. Journal of clinical psychopharmacology 30 (1): 48–56. PMID 20075648. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20075648 6 April 2013閲覧。. 

関連項目

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外部リンク

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