バーニング (2018年の映画)

バーニング 劇場版から転送)

バーニング』(バーニング げきじょうばん、: 버닝)は、イ・チャンドン監督による2018年公開の韓国ミステリ・ドラマ映画。95分の短縮版でテレビ放送された『特集ドラマ バーニング』と劇場公開された148分の『バーニング 劇場版』の2つのバージョンが存在する。村上春樹の短編小説『納屋を焼く』を原作としており、ユ・アインスティーヴン・ユァンチョン・ジョンソ朝鮮語版らが出演[3]。劇場版は第71回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で上映され、パルム・ドールを争った[4][5]第91回アカデミー賞外国語映画賞には韓国代表作として出品され[6]、同国史上初めて最終選考9作品に残った[7]

バーニング 劇場版
버닝
監督 イ・チャンドン
脚本 オ・ジョンミ
イ・チャンドン
原作 村上春樹
納屋を焼く
製作 イ・ジュンドン
オク・グァンヒ
製作総指揮 イ・ジュンドン
出演者 ユ・アイン
スティーヴン・ユァン
チョン・ジョンソ朝鮮語版
音楽 モグ英語版
撮影 ホン・ギョンピョ
編集 キム・ヒョン
キム・ダウォン
製作会社 ファインハウスフィルム
ナウフィルム
NHK
配給 大韓民国の旗 CGVアートハウス[1]
日本の旗 ツイン
公開 フランスの旗 2018年5月16日CIFF
大韓民国の旗 2018年5月17日
日本の旗 2019年2月1日
上映時間 148分
製作国 大韓民国の旗 韓国
言語 朝鮮語
興行収入 US$6.6 million[2]
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バーニング 劇場版
各種表記
ハングル 버닝
発音 ボニン
日本語読み: ばーにんぐ げきじょうばん
題: Burning
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あらすじ

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韓国の若者ジョンスは大学を卒業したものの職が無く、 バイトで食いつなぐ日々のうち、幼馴染の娘ヘミと出会った。街頭宣伝の踊り子だが、金を貯めてアフリカ旅行に行くと言うヘミ。留守中、飼っているボイルという名の猫の餌の世話を頼まれ、彼女のアパートを訪れたジョンスは、ヘミと関係を持った。

牛農家を営むジョンスの父親は意固地で暴力を振るい、母親は子供を置いて離婚していた。市役所の職員を殴って逮捕される父親。裁判の間、牛の世話で実家に戻り、父親の物騒なナイフのコレクションを見つけるジョンス。ヘミの部屋にも半月も通い、全く姿を見せないボイルの餌を用意して、部屋でオナニーをした。ジョンスには小説を書きたい思いがあるが、それはまだ漠然とした夢だった。

ヘミから帰国の連絡を受け、実家の汚いトラックで空港に迎えに行くジョンス。ヘミはナイロビで知り合った金持ちの韓国青年ベンと一緒だった。食事をした店まで高級車を運ばせ、ヘミを送って行くベン。

ベンとヘミに呼び出され、ベンの高級マンションで食事を振る舞われるジョンス。トイレを借りると、引き出しに、安っぽい女性のアクセサリーがいくつも収められていた。金持ちのベンが、なぜ貧しく孤独なヘミと付き合うのか疑問を抱くジョンス。

ジョンスの牛農家を訪ねて来るベンとヘミ。ヘミの家はすでに跡形もなく、幼い頃に落ちた水のない井戸もなかったという。ジョンスが助けてくれたと言うが、記憶がないジョンス。ベンが持ち込んだワインや食事を楽しみ、大麻を吸ったヘミはシャツを脱ぎ、胸を晒して踊りだした。

他人のビニールハウスを燃やすのが喜びだと語るベン。犯罪だが、2ヶ月に一度は石油をかけて燃やし、この近所には下見に来て、すぐ近くで燃やすと言う。ヘミを愛しているとベンに打ち明けるジョンス。たが、ヘミはベンの車で帰ってしまった。

翌日から村の周辺を執拗に巡るジョンス。だが、焼けたビニールハウスは存在しなかった。ヘミが全く電話に出ず、アパートもドアの暗証番号が変わって入れない。猫がいるからと大家に無理を言って開けさせると、乱雑だった部屋は奇妙なほど整頓され、猫の痕跡も消えていた。

ヘミと1ヶ月も音信不通が続き、ベンに連絡を取るジョンス。ベンは免税店の売り子と付き合っており、何も知らないという。ヘミの家族にも会いに行ったが、家族はヘミとは疎遠で、ヘミが落ちたという井戸も無かったという。トラックでベンの後を付け回し始めるジョンス。金持ちらしい行動とは別に、なぜか郊外の殺風景な湖を眺めに行くベン。離婚したジョンスの母親が突然、電話をかけて来て16年ぶりに会うと、ヘミの家の近くに井戸はあったと言う。

マンションの近くでベンに見つかり、部屋に招かれるジョンス。部屋には最近拾ったという猫がいた。トイレで引き出しを開けると、見覚えのあるヘミの腕時計が増えており、玄関から逃げた猫を追って「ボイル」と呼ぶと寄って来た。

謝罪文を書かず示談も拒否した父親は一年六ヶ月の実刑となり、家に一頭だけいた小さな雌牛も売り払うジョンス。ヘミの部屋に入り込んでセックスをする夢を見たジョンスは、彼女の部屋で小説を書き始めた。

辺鄙な場所にベンを呼び出し、いきなりナイフで刺し殺すジョンス。石油をかけて、ベンを高級車ごと焼き払い、返り血を浴びた服も焼いたジョンスは、全裸でトラックに乗り、立ち去って行った。

キャスト

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製作

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村上春樹の短編小説をアジアの映画監督が競作で映像化するプロジェクトの1つとして企画が進められた[8]。当初は2016年11月に撮影開始予定であったが、村上と彼の作品の多くの権利を所有するNHKとの間で発生した版権問題により延期された[9][10][11][12]

本作は村上春樹の短編『納屋を焼く』を原作としているが、舞台を現在の韓国に移しており、ストーリーは大幅に異なっている。2016年10月、イ・チャンドン監督は釜山国際映画祭で「これは今日の世界の若者達についての物語だ。彼らがその人生と世界を考えるとき、それはミステリーのように感じるだろう」と述べた[9][11]。2017年9月、スタジオは原作のモチーフのみがあると発表した[13]

2016年、カン・ドンウォンユ・アインの出演が報じられたが、公式な発表はされなかった[10]。2017年9月5日、ユ・アインがジョンス役を務めることが発表された[14][15]。それから3日後、新人のチョン・ジョンソ朝鮮語版がジョンスの幼なじみで恋人のヘミ役に決定したことが報じられた。彼女は8月から始まっていたオーディションにより発掘された[16][17][18]。9月20日、 スティーヴン・ユァンがベン役で加わったことが報じられた[19][20]

主要撮影は2017年9月11日に始まり[21]、2018年1月30日に坡州市で完了した[22]

公開

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第71回カンヌ国際映画祭でのキャストと監督(2018年5月)。

イ・チャンドンの8年ぶりの新作映画[9]である本作は第71回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門にエントリーされた[4] 。イ・チャンドンの『シークレット・サンシャイン』(2007年)と『ポエトリー アグネスの詩』(2010年)もカンヌ国際映画祭コンペティション部門でプレミア上映されていた[23][24]

映画はカンヌ国際映画祭のマルシェ・ドゥ・フィルム英語版香港中国台湾シンガポールイギリス日本オーストラリアニュージーランドスペインギリシャポーランドトルコなど100カ国・地域以上に配給権が売却された[25]

韓国では2018年5月17日に封切られた[26]

日本では2018年12月2日にNHK BS4K、12月29日にNHK総合で日本語吹替による95分の短縮版が『特集ドラマ バーニング』の邦題で放送された[27]。その後、2019年2月1日に日本語字幕による全長版が『バーニング 劇場版』の邦題で劇場公開され[28]、全長版の原語版と日本語吹替版を収録したソフトが同年8月7日に発売された[29]

以下は日本語吹替を担当した声優。

役名 俳優 日本語吹替
NHK BS4K ソフト版
イ・ジョンス ユ・アイン 柄本時生[27] 岸尾だいすけ[29]
ベン スティーヴン・ユァン 萩原聖人[27] 遊佐浩二[29]
シン・ヘミ チョン・ジョンソ朝鮮語版 高梨臨[27] 逢沢ゆりか[29]
町内会長 チョン・チャンオク 佐々木省三 山本兼平[29]
ジョンスの母 パン・ヘラ - 今泉葉子[29]

評価

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批評家の反応

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レビュー・アグリゲーターRotten Tomatoesでは117件のレビューに基づいて支持率は94%、平均点は8.7/10となった[30]Metacriticでは36件のレビューに基づいて加重平均値は90/100と示された[31]

興行収入

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韓国では初日に5万2324人を動員したが、これは『デッドプール2』(24万8904人)に次いで2位であった[32]。初週末では22万717人を動員して3位となった[33]。累計動員数は52万8168人に達した[34]

受賞とノミネート

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その他

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第44代アメリカ合衆国大統領バラク・オバマは2018年に観たお気に入りの映画15本に今作を選んだ[35]

参考文献

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  1. ^ Noh, Jean (May 23, 2018). “Cannes jury grid hit 'Burning' scores key deals including UK, Japan and Spain”. Screen International. May 24, 2018閲覧。
  2. ^ Beoning (2018)”. The Numbers. 26 December 2018閲覧。
  3. ^ A Korean twist to a Murakami tale”. Korea JoongAng Daily (May 5, 2018). 2018年12月28日閲覧。
  4. ^ a b Cannes Lineup Includes New Films From Spike Lee, Jean-Luc Godard”. Variety. 12 April 2018閲覧。
  5. ^ LEE Chang-dong Returns to Cannes Competition with BURNING”. Korean Film Biz Zone (April 23, 2018). 2018年12月28日閲覧。
  6. ^ Roxborough, Scott (7 September 2018). “Oscars: South Korea Selects 'Burning' for Foreign-Language Category”. The Hollywood Reporter. 7 September 2018閲覧。
  7. ^ Academy Unveils 2019 Oscar Shortlists”. The Hollywood Reporter (17 December 2018). 18 December 2018閲覧。
  8. ^ 村上春樹の短編の世界をドラマ化! 3人の若者たちが織り成すミステリー”. NHK (2018年11月27日). 2018年12月28日閲覧。
  9. ^ a b c Lee Chang-dong Lights Up Haruki Murakami Adaptation 'Burning'”. Variety (5 September 2017). 29 September 2017閲覧。
  10. ^ a b LEE Chang-dong Announces New Project at BIFF”. KOFIC (21 September 2016). 29 September 2017閲覧。
  11. ^ a b TongTongTv 통통영상 (10 October 2016). “이창동·허우 샤오시엔·고레에다 히로카즈 '아시아 영화 거장의 만남' (부산국제영화제, BIFF, 아시아영화의 연대를 말하다) [통통영상]”. 2018年12月28日閲覧。
  12. ^ 'Burning' director Lee Chang-dong on his “ambiguous” Cannes Competition title”. 2018年12月28日閲覧。
  13. ^ 유아인 ‘버닝’, 하루키 원작 ‘헛간을 태우다’는 어떤 내용인가” (朝鮮語). Mydaily (22 September 2017). 29 September 2017閲覧。
  14. ^ 이창동 신작 '버닝' 유아인 출연 확정…9월 크랭크인[공식]” (朝鮮語). The Daily Sports (5 September 2017). 29 September 2017閲覧。
  15. ^ Yoo Ah-in joins cast of Lee Chang-dong film”. Korea Joongang Daily (6 September 2017). 29 September 2017閲覧。
  16. ^ Director Lee to release 'Burning' next year”. Korea Joongang Daily (21 August 2017). 29 September 2017閲覧。
  17. ^ [공식 신예 전종서, 이창동 신작 '버닝' 파격 캐스팅…유아인과 호흡]” (朝鮮語). The Sports Chosun (6 September 2017). 8 September 2017閲覧。
  18. ^ Newcomer JEON Jong-seo Joins YOO Ah-in on LEE Chang-dong Project”. KOFIC (14 September 2017). 29 September 2017閲覧。
  19. ^ Steven Yeun to Join Yoo Ah-in's 'Burning'”. SBS Star (21 September 2017). 29 September 2017閲覧。
  20. ^ ‘Burning’ Star Steven Yeun Gets Role He’s ‘Been Waiting For’”. Variety (May 16, 2018). 2018年12月28日閲覧。
  21. ^ 스티븐 연, 유아인 이어 이창동 신작 '버닝' 합류” (朝鮮語). The Daily Sports Seoul (20 September 2017). 29 September 2017閲覧。
  22. ^ Beo-ning”. KOBIZ. 6 March 2018閲覧。
  23. ^ Lee Chang-dong's latest film, 'Burning,' billed as possible Cannes lineup”. Yonhap News Agency (25 March 2018). 10 April 2018閲覧。
  24. ^ 'Burning' Teaser: Filmmaker Lee Chang-Dong Is Back With His First Film In 7 Years”. The Playlist (5 April 2018). 10 April 2018閲覧。
  25. ^ Lee Chang-dong's 'Burning' sold to over 100 countries at Cannes”. Yonhap News Agency (23 May 2018). 2018年5月29日閲覧。
  26. ^ Lee Chang-dong's 'Burning' to hit screens” (英語). koreatimes (8 April 2018). 10 April 2018閲覧。
  27. ^ a b c d 村上春樹原作『バーニング』放送!”. NHK (2018年11月28日). 2018年12月28日閲覧。
  28. ^ イ・チャンドン監督、3年ぶり来日 村上春樹原作の新作引っ提げ”. シネマトゥデイ (2018年11月12日). 2018年12月28日閲覧。
  29. ^ a b c d e f バーニング 劇場版 [Blu-ray]”. Amazon.co.jp (2019年6月17日). 2019年6月17日閲覧。
  30. ^ Burning (Beoning) (2018)”. Rotten Tomatoes. 13 December 2018閲覧。
  31. ^ Burning reviews”. Metacritic. 13 December 2018閲覧。
  32. ^ KoBiz - Korean film, news, actor, movie, cinema, location & Korean Film Archive”. Korean Film Biz Zone. 2018年12月28日閲覧。
  33. ^ Shim Sun-ah (May 21, 2018). “(LEAD) 'Deadpool 2' takes down 'Infinity War' at box office”. Yonhap News Agency. 2018年12月28日閲覧。
  34. ^ BURNING (2018)”. Korean Film Biz Zone. 2018年12月28日閲覧。
  35. ^ 映画「万引き家族」、オバマ前大統領の「2018年のお気に入りリスト」に選ばれる。日本作品で唯一”. Huffingtonpost (2018年12月29日). 2019年2月2日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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