バリトンギター(Baritone guitar)とは、ギターの亜種であり、通常のギターより長いスケール長(ナットからブリッジまでの長さ)と通常のギターより低い音域がその特徴である。

バリトン・ギター
各言語での名称
Baritone guitar
Oktavbaritongitarre
Guitare baritone
Chitarra baritono
男中音吉他
分類

弦楽器ギター

音域
実音通り記譜

その他変則調律あり
バリトンギターを演奏するClifton Hyde

明確な定義は存在しない[1] が、一般的にフェンダー社のエレクトリック・ギターの25.5インチよりも長い27-8インチ程度のスケールを持つギターを指し、またその上限は30インチ程度までである。

概要

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1950年代にダンエレクトロが発表した当時にはそれほど脚光を浴びることはなかったが、その後そのユニークなサウンドがビーチ・ボーイズの楽曲のヒット( "Dance, Dance, Dance"や"Caroline, No")により注目された。その張りのある音色を好んだブライアン・ウィルソンが単音リフに使用する事が主であった。

以降カントリーミュージックや映画のサウンドトラック、特にマカロニウェスタンなどでそのサウンドが聴かれるようになったが、この場合は"Tic-Tac Bass"と呼ばれるブリッジミュートを効かせた音色が好まれ、コントラバス等のベースラインをなぞる様な演奏法が用いられた[2][3]

米国ではカントリー等に用いられる普遍的なものであり、パーツメーカーWarmothのレギュラーラインにバリトンのネックがある事が確認できる[4]。これは通常仕様のテレキャスターストラトキャスターにネック交換という形で取り付ける事で28-5/8インチのバリトンになるというもの。フェンダー・カスタムショップ製のモデルが少数生産される事もある。

現在でもその音色を好むアーティスト達によって使用されている。フィンガースタイルでコードを押さえ、親指でベースラインを兼ねて行くような奏法(Travis picking)を用いる奏者が好む傾向がある。

ヘヴィメタルにおける使用

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特に90年代以降のヘヴィメタルの分野で、低域を駆使したサウンドが欲しいときに使われることが増えてきた。低音域のギターサウンドが欲しいときには、通常のギターをダウンチューニングする事が一般的だが、ある程度以上になると弦のテンションの確保が難しく、また、7弦ギターや8弦ギターなどの多弦ギターを使用すると、コードフォームがノーマルギターと違ってくる、ネックの幅が通常のギターより広くなることなどから演奏が難しくなる。そういう理由から、通常のギターと同じコード・フォームで弾けるバリトンを選択するのである。

調律

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通常のギター調律から長三度(4フレット分)下げた「C–F–B♭–E♭–G–C」や完全四度(5フレット分)下げた「B-E-A-D-F#-B」、完全五度(7フレット分)下げた「A-D-G-C-E-A」が使用され、特に明確な決まりはない。しかし、フェンダー・ベースVIのようにノーマル・チューニングのギターを1オクターブ下げた「E-A-D-G-B-E」の場合、6弦から3弦はノーマル・チューニングの4弦ベースと同じピッチになることから、ピッチのみに着目すれば「1オクターブ下げたギター=ベース」と考えることができ、いわゆる多弦ベースとの区別が曖昧になってしまう。

一方、多彩なゲージを発売していることで知られるアーニーボール(ERNIE BALL)社では、「ダウンチューニングした際でも適切な弦のテンションを保つことができる」としている「Not Even Slinky」(太さは、1弦から.12,.16,.24P,.32,.44,.56)を「Electric Guitar Strings」に分類し、「6-String Baritone Slinky」(太さは、1弦から.13,.18,.30,.44,.56,.72)を「Electric Bass Guitar String」に分類している。

フェンダー社は25.5インチスケール、ギブソン社は24.75インチスケールの製品が多く、バリトン・ギターのスケールは28インチ前後のものが多いことを考慮すると「6-String Baritone Slinky」は4度から5度下げのチューニングを想定しているものと推定できる[なぜ?]

主なバリトンギター機種

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  • Danelectro Baritone Electric 6 String Hodad (27.75インチ)
  • Danelectro Neptune Longhorn Bass 6 (30インチ)
  • Ernie Ball Silhouette Baritone 6 string (29-5/8インチ)
  • Fender Bajo Sexto Telecaster (28.5インチもしくは30-1/4インチ)
    • メキシコ音楽で用いられる"Bajo Sexto"ギター(スペイン語で"Bass Six"の意)のエレクトリック版である
  • Fender Bass VI (30インチ)
  • Fender Jaguar Baritone Custom (28.5インチ)
  • Fender Jaguar Baritone Special HH (27インチ)
  • Fender Sub-Sonic Baritone Stratocaster (27インチ)
  • Gretsch G6144 Spectra Sonic Baritone (29-1/4インチ)
  • Hagström Viking Baritone (28インチ)

ヘヴィメタルに使用される機種

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  • 26.5インチ (673.2 mm)
    • Ibanez RGDシリーズ、7弦モデルのみ存在
    • Jackson いくつかの7・8弦モデル (DKA7, DKA8, SLATTXMGQ3-7, およびSLATFXQMG 3-8)
    • Schecter 7弦モデル
  • 27インチ (686 mm)
  • 28インチ (711 mm)
    • Schecter 8弦モデル
  • 29.4インチ (749 mm)
  • 30インチ (762 mm)
    • Agileが30インチを上限としたモデルを用意し、カスタムメイドを受け付けている。

脚注

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  1. ^ 6弦ギターのみを指し7弦・8弦ギターは除外するのか、またショートスケールの6弦ベースとの線引きなどが意見の分かれる点であるが、最終的には奏者自身の感覚(その人がギターとして扱うかどうか)に依り、個人差が生まれる。また、アンサンブルの中で通常のギターと共に使われているのか、バリトン単体での使用かも影響し、後者の場合は特にバリトンと定義し特別に扱う必要性は低い。後述するヘヴィメタルの場合はこのケースが殆どである。
  2. ^ Pomeroy, Dave (February 2007). “1962 Supro Pocket Bass”. Bass Player. 2008年1月7日閲覧。
  3. ^ Neptune Longhorn Bass6”. Jerry Jones guitars. 2007年12月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年1月7日閲覧。
  4. ^ http://www.warmoth.com/Guitar/necks/warmoth_baritoneneck.aspx
  5. ^ http://www.ibanez.co.jp/products/u_eg_page13.php?data_id=36&color=CL01&year=2013&cat_id=1&series_id=164