ハルノタムラソウ Salvia ranzaniana は、アキギリ属の植物の1つ。小型の植物で、春に小さな白い花を付ける。

ハルノタムラソウ
ハルノタムラソウ
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
: シソ目 Lamiales
: シソ科 Lamiaceae
亜科 : イヌハッカ亜科 Nepetoideae
: アキギリ属 Salvia
: ハルノタムラソウ S. ranzaniana
学名
Salvia ranzaniana Makino

特徴

編集

小柄な多年生草本[1]は直立して高さ10-20cmほど、は1-2回羽状複葉で、地表近くに集中し、ロゼット状に広がる。下の方の葉ほど長い柄があり、その基部には開出する毛が目立つ。小葉の縁には少数の鋸歯がある。

花期は4-6月。花茎は普通は単独だが、よく育った株では枝を出すこともある。萼は唇形、長さは5-8mm、紫色を帯びることもある。上唇は浅く2裂下唇は3裂し、内側中央付近に毛が環状に生える。花冠は長さ約8mm、白い。

花糸の先端はT字になり、その一方の端に細長い葯を付ける。4個の分果は夏の間は永続性の萼の中にあり、熟すとこぼれ落ちる[2]

和名は春の田村草の意味だが、田村の謂われはわからないとのこと[2]

分布と生育環境

編集

本州では紀伊半島四国九州に分布する。谷間で湿った木陰やコケの生えた岩の上に生育する[3]

類似種など

編集

同属にはいくつかタムラソウの和名を持つものがあり、いずれも多少似ているが、他種が夏から秋に開花するのに対し、本種は春に咲くこと、それに小型で花が白い点で混同することはない。沖縄にはヒメタムラソウ S. pygmaea があり、本種によく似ているが葉はより細かく2回羽状に裂け、花はより小さい[4]

保護の状況

編集

上記のように分布域の狭い種であるが、保護の段階は高くない。環境省のレッドデータにも挙げられておらず、県によっては指定があるが、準絶滅保護など比較的ランクは低い。

出典

編集
  1. ^ 以下、主として佐竹他(1981),p.81
  2. ^ a b 牧野(1961)P.531
  3. ^ 佐竹他(1981),p.81
  4. ^ 佐竹他(1981),p.80-81

参考文献

編集
  • 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他『日本の野生植物 草本III 合弁花類』,(1981),平凡社
  • 牧野富太郎、『牧野 新日本植物圖鑑』、(1961)、図鑑の北隆館