ハイツの法則
ハイツの法則 (Haitz's law) は、発光ダイオード (LED) の長年にわたる安定した改良についての観察と予測である。
ある波長の光に対して10年ごとに1ルーメン(放出される有効な光の単位)あたりのコストが10分の1になり、LEDパッケージあたりに発光量が20倍になるという内容である。これはムーアの法則のLEDに対応するものと考えられている[1]。どちらの法則も半導体デバイス製造のプロセス最適化に依存する。
この法則の名前は、アジレント・テクノロジーの科学者であるRoland Haitz (1935–2015)[2]にちなむ。Strategies Unlimitedによる年次会議の最初のものであるStrategies in Light 2000で初めて広く発表された[3]。ルーメンあたりのコストとパッケージあたりの光量の指数関数的増加の予測に加え、発表ではLEDベースの照明の発光効率は2010年に100 lm/W(ワットあたりのルーメン)となり、2020年には200 lm/Wに達するという予測もしている。これは十分な産業資源と政府資源がLED照明の研究に使われた場合あてはまるであろう。照明の電力消費の50%以上(全消費電力量の20%)は200 lm/Wに達することで節約できるだろう。この見通しやその他のLEDの飛び石的な応用(例えば携帯電話のフラッシュやLCDバックライト)によりLEDの研究に大きな投資をもたらしたため、2010年にLEDの効率は実際に100 lm/Wを超えた。もしこの傾向が続くならばLEDは2020年までに最も効率的な光源となるであろう。
連続波長白色光源(5800K色温度で400nmと700nmの間の可視領域に限られる)の理論的な最大値は(離散波長光源の組み合わせで構成されたものとは対照的に)251 lm/Wである[4]。しかし、いくつか非連続波長複合「白色」LEDは300lm/ Wを超える効率を達成している[5][6]。
2010年、Cree Inc.は100 lm/Wの効率で1000lm、350 mAで160 lm/W、700 mAで150 lm/WのXM-L LEDを開発し販売した[7]。彼らは350mAで208lmを作り出すプロトタイプの研究開発により200lm/Wの壁を破ったと主張した[8]。 2011年5月、Creeは350 mAで231 lm/Wの効率を持つ別のプロトタイプを発表した[9]。2014年3月には350 mAで303 lm/Wという記録的な有効性を持つ別のプロトタイプを発表した[5]。
2017年、フィリップスライティングはハイツの法則で予測する3年前にフィラメント技術を利用して200 lm/Wの効率で消費者向けのLEDライトの提供をドバイで始めた[10]。
脚注
編集- ^ “Haitz's law”. Nature Photonics 1: 23. (2007). doi:10.1038/nphoton.2006.78 .
- ^ Wright, Maury. “In Tribute: Recognizing the life and work of LED pioneer Roland Haitz”. ledsmagazine.com. 19 August 2015閲覧。
- ^ Haitz, R.; Tsao, J. Y. (2011). “Solid-state lighting: 'The case' 10 years after and future prospects”. Phys. Status Solidi A 208: 17–29. doi:10.1002/pssa.201026349.
- ^ Murphy (2011年). “Maximum Efficiency of White Light”. Dept. Physics, UC San Diego. 2011年7月31日閲覧。
- ^ a b “Cree First to Break 300 Lumens-per-Watt Barrier”. (26 March 2014) 7 May 2014閲覧。
- ^ “White LEDs with super-high luminous efficacy could satisfy all general lighting needs” 2017年5月15日閲覧。
- ^ “Cree’s New Lighting-Class LEDs Shatter Industry Performance Standards”. (10 November 2010). オリジナルのSeptember 27, 2011時点におけるアーカイブ。 27 July 2011閲覧。
- ^ “Cree Breaks 200 Lumen per Watt Efficacy Barrier”. (3 February 2010). オリジナルのJuly 20, 2011時点におけるアーカイブ。 27 July 2011閲覧。
- ^ “Cree 231 Lumen per Watt LED Shatters LED Efficacy Records”. (9 May 2011). オリジナルのJuly 16, 2011時点におけるアーカイブ。 27 July 2011閲覧。
- ^ “Dubai Lamp data sheet”. 2018年8月1日閲覧。[リンク切れ]
外部リンク
編集- Haitz (1999年). “The Case for a National Research Program on Semiconductor Lighting”. Sandia Report. Optoelectronics Industry Development Association. p. 5. 2019年5月閲覧。