ノース男爵
ノース男爵(英: Baron North)はイギリスの男爵、イングランド貴族爵位。弁護士エドワード・ノースが1554年に貴族院より議会招集されたことを発端とするが、1941年以降は停止状態にある。
ノース男爵 Baron North | |
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Arms:Azure a Lion passant between three Fleurs-de-lis Argent Crest:A Dragon's Head erased Sable ducally gorged and chained Or Supporters:Two dragons, wings elevated, sable scaled, ducally gorged and chained Or
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創設時期 | 1554年 |
創設者 | メアリー1世 |
貴族 | イングランド貴族 |
初代 | 初代男爵エドワード・ノース |
最終保有者 | 13代男爵ジョン・ノース |
付随称号 | グレイ男爵(1673-1734) |
現況 | 停止 |
断絶時期 | 1941年12月19日 |
モットー | 勇気と忠誠とともに (Animo et Fide) |
関連性の高いロールストンのグレイ男爵についても触れる。
歴史
編集ノース一族の黎明
編集弁護士エドワード・ノース(1496-1564)は貴族院議会事務総長や増収裁判所書記官を務めたのち、1554年にケンブリッジ州カートリング・タワーのノース男爵(Baron North, of Kirtling Tower in the County of Cambridge)として貴族院から議会招集を受けた[2][3][4][5]。彼ののちは、息子のロジャーが爵位を襲った。
2代男爵ロジャー(1530-1600)は駐仏英国大使や王室会計長官を務めた廷臣であったが、息子ジョンに先立たれれていたため、爵位は孫のダドリー、同名の長男ダドリーの順で継承されている[5][6][7]。
4代男爵ダドリー(1602-1677)は襲爵前に庶民院、短期議会及び長期議会議員を務めている[5][7][8]。また、彼の次男は1683年にギルフォード男爵(Baron Guilford)に叙せられたため、ノース男爵家の分家が誕生した[9]。
その子チャールズ(1636-1691)は父の存命中の1673年に貴族院よりスタッフォード州ロールストンのグレイ男爵(Baron Grey, of Rolleston in the County of Stafford)として議会招集を受けている[註釈 1][5][7]。1677年以降はノース男爵位も継承して、彼が亡くなるとその子ウィリアムが爵位を相続した。
6代男爵ウィリアム(1673-1734)はアン女王の崩御ののちジャコバイトとして活動した[10]。アタベリー陰謀事件の嫌疑から辛くも逃れると大陸に移住、1722年にジャコバイト爵位たる「ノース伯爵」に叙されている[註釈 2][11][12]。彼には子がいなかったため、グレイ男爵位と「ノース伯爵位」は廃絶した[13]。他方、ノース男爵位は分家筋の第3代ギルフォード男爵フランシス・ノースが継承した[14]。
伯爵家の儀礼称号として
編集フランシス・ノース(1704-1790)は1734年にノース男爵を継承して、7代男爵となった[14]。彼はジョージ王子の家庭教師を務めたが、すべての宮廷職から退いた翌年の1752年にギルフォード伯爵に昇叙した[註釈 3][15][16]。これ以降、ノース男爵は伯爵家の従属爵位と儀礼称号を兼ねることとなった[15]。
その息子である2代伯フレデリック(1732-1792)は首相を務めた政治家で、フォークランド危機を主導したのちアメリカ独立戦争に指導した[15][17][18]。1790年に下野したのち1792年に亡くなると、その息子ジョージが爵位を承継した[15][18]。
3代伯ジョージ(1757-1802)が男子なく没すると、男子の継承しか認めないギルフォード伯爵位は弟フランシスに継承された[17]。一方で、女系継承を許すノース男爵位は彼の3人の娘の間で優劣がつかず停止した[2][7]。1837年に貴族院によって『(停止中のノース男爵位は)最長命であった娘がこれを承継する』旨を決議した[18]。1841年に3姉妹のうちスーザンのみ存命となると、1837年裁定に従ってスーザンに帰属する形で確定、停止解除となった[2][5][18]。
その後の歴史
編集10代女男爵スーザン(1797-1884)は継承確定前の1838年に「ドイル姓(Doyle)」よりノースに家名を変更している[2]。彼女ののちはその直系男子によって爵位は継承された[2][19]。
しかし、彼女のひ孫にあたる13代男爵ジョン(1917-1941)は第二次世界大戦に従軍した際にわずか24歳の若さで戦死してしまう[19][20]。彼には子がなかったため、爵位は彼の2人の妹ドロシーとスーザンとの間で優劣がつかず、2度目の停止に陥ったまま現在に至っている[19][21]。
ノース男爵(1554年)
編集- 初代ノース男爵エドワード・ノース (c. 1496–1564)
- 第2代ノース男爵ロジャー・ノース (1530–1600)
- ジョン・ノース閣下 (?-1597)
- 第3代ノース男爵ダドリー・ノース (1581–1666)
- 第4代ノース男爵ダドリー・ノース (1602–1677)
- 第5代ノース男爵(初代グレイ男爵)チャールズ・ノース (c. 1636–1691) (1673年グレイ男爵叙爵)
- 第6代ノース男爵(第2代グレイ男爵)ウィリアム・ノース(c. 1673–1734) (1734年グレイ男爵位廃絶)
- 第7代ノース男爵(初代ギルフォード伯爵)フランシス・ノース (1704–1790)
- 第8代ノース男爵(第2代ギルフォード伯爵)フレデリック・ノース (1732–1792)
- 第9代ノース男爵(第3代ギルフォード伯爵)ジョージ・ノース (1757–1802) (1802年爵位停止)
- 第10代ノース女男爵スーザン・ノース (1797–1884) (1841年停止解除)
- 第11代ノース男爵ウィリアム・ノース (1836–1932)
- 第12代ノース男爵ウィリアム・ノース (1860–1938)
- 第13代ノース男爵ジョン・ノース (1917–1941) (1941年爵位停止)
脚注
編集註釈
編集- ^ 彼の母は古いイングランド貴族であるワークのグレイ男爵家の出身であったため、その家名に因んだ爵位名となっている。
- ^ 存在性に乏しいジャコバイト爵位であるため、括弧書きの強調なしで表記する。
- ^ ギルフォード伯爵位はグレートブリテン貴族爵位。
出典
編集- ^ Kirtling: Manors and estate, A History of the County of Cambridge and the Isle of Ely: Volume 10: Cheveley, Flendish, Staine and Staploe Hundreds (north-eastern Cambridgeshire) (2002), pp. 63-69. Date accessed: 21 April 2011.
- ^ a b c d e Debrett's peerage, and titles of courtesy, in which is included full information respecting the collateral branches of Peers, Privy Councillors, Lords of Session, etc. Wellesley College Library. London, Dean. (1921). pp. 682-683
- ^ “NORTH, Edward (c.1504-64), of Kirtling, Cambs., the Charterhouse, Mdx. and London. | History of Parliament Online”. www.historyofparliamentonline.org. 2020年5月1日閲覧。
- ^ Jessopp, Augustus (1895). . In Lee, Sidney (ed.). Dictionary of National Biography (英語). Vol. 41. London: Smith, Elder & Co. p. 154-155.
- ^ a b c d e Chisholm, Hugh, ed. (1911). . Encyclopædia Britannica (英語). Vol. 19 (11th ed.). Cambridge University Press. p. 758.
- ^ Bushby, Frances (1895). . In Lee, Sidney (ed.). Dictionary of National Biography (英語). Vol. 41. London: Smith, Elder & Co. p. 169-173.
- ^ a b c d Debrett's peerage, and titles of courtesy, in which is included full information respecting the collateral branches of Peers, Privy Councillors, Lords of Session, etc. Wellesley College Library. London, Dean. (1921). p. 428
- ^ “NORTH, Sir Dudley I (1602-77), of Kirtling, Cambs. | History of Parliament Online”. www.historyofparliamentonline.org. 2020年5月1日閲覧。
- ^ Heraldic Media Limited. “Guilford, Baron (E, 1683)” (英語). Cracroft's Peerage The Complete Guide to the British Peerage & Baronetage. 2016年8月7日閲覧。
- ^ Seccombe, Thomas (1895). . In Lee, Sidney (ed.). Dictionary of National Biography (英語). Vol. 41. London: Smith, Elder & Co. p. 181-183.
- ^ Eveline Cruickshanks, "Lord North, Christopher Layer and the Atterbury Plot: 1720–23", p. 94 in The Jacobite Challenge (Edinburgh, 1988), J. Donald Publishers, ISBN 0859762130.
- ^ Ruvigny and Raineval, Melville Amadeus Henry Douglas Heddle de La Caillemotte de Massue de Ruvigny (1904). The Jacobite peerage, baronetage, knightage and grants of honour;. unknown library. Edinburgh, London, T. C. & E. C. Jack
- ^ Sir Nicholas Harris Nicolas, A Synopsis of the Peerage of England (1825), J. Nichols and son, p. 284.
- ^ a b Courthope, William, ed., Debrett's Complete Peerage of the United Kingdom of Great Britain (1838), p. 132.
- ^ a b c d Heraldic Media Limited. “Guilford, Earl of (GB, 1752)” (英語). Cracroft's Peerage The Complete Guide to the British Peerage & Baronetage. 2016年8月7日閲覧。
- ^ Cruickshanks, Eveline (1970). "NORTH, Hon. Francis (1704-90), of Wroxton Abbey, Oxon.". In Sedgwick, Romney (ed.). The House of Commons 1715-1754 (英語). The History of Parliament Trust. 2019年5月15日閲覧。
- ^ a b Chisholm, Hugh, ed. (1911). . Encyclopædia Britannica (英語). Vol. 12 (11th ed.). Cambridge University Press.
- ^ a b c d Barker, George (1895). . In Lee, Sidney (ed.). Dictionary of National Biography (英語). Vol. 41. London: Smith, Elder & Co. p. 159-164.
- ^ a b c Pine, L.G., ed (1972). The New Extinct Peerage 1884-1971 Containing Extinct, Abeyant, Dormant and Suspended Peerages With Genealogies and Arms.. London, U.K.. p. 206
- ^ Wright, Malcolm (2016年10月31日) (英語). British and Commonwealth Warship Camouflage of WW II: Battleships & Aircraft Carriers. 3. 47 Church St., Barnsley S70 2AS: Seaforth Publishing. p. 97. ISBN 9781848324206
- ^ “Abeyant English Baronies”. www.cracroftspeerage.co.uk. 2020年4月28日閲覧。