ノッシス
ノッシス(古代ギリシア語: Νοσσίς、Nossis、紀元前300年頃)は、南イタリアのエピゼピュリオイ・ロクロイ(ロクリス)出身のヘレニズム時代のギリシア語詩人である[1]。彼女はヘレニズム時代の劇作家リントーンに献げるエピタフ(碑銘詩)を書いたことから、紀元前3世紀初頭に活躍したと考えられる[2]。
ノッシス | |
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現地語名 | Νοσσίς |
誕生 | エピゼピュリオイ・ロクロイ |
死没 | エピゼピュリオイ・ロクロイ |
墓地 | 不詳 |
職業 | 詩人 |
言語 | 古代ギリシア語 |
市民権 | ロクリス人 |
活動期間 | 紀元前300年頃 |
子供 | メリンノー(推定) |
ウィキポータル 文学 |
概説
編集ノッシスは主として、宗教的な奉献のエピグラム詩やエピタフを書いた[3]。彼女のエピグラム詩は、彼女自身がライバルだと述べていたサッポーに触発されたものだった[4]。彼女はまた、エーリンナとアニュテーから影響を受けていると思える[5]。テッサロニケのアンティパトロスは「卓越した9人の女流詩人」の一人に彼女を含め認めている[6]。
ノッシスは古代ギリシアの女流詩人としては、もっとも作品が残っている詩人の一人である。彼女の作とされる12編のエピグラム詩が『ギリシア詞華集』の一部として現存しているが、その大部分は女性に関する作品である[7]。これらの作品の一つは『パラティン詞華集』5.170 として残っているが、サッポーの「フラグメント16」(fragment 16)を模倣したものである[8]。ガダラのメレアグロスは、その詞華集である『花冠』において、もっとも優れたギリシアの歌手の一人のなかに彼女を数えている。
ノッシスはその作品において、彼女の母親は、クレーウーカース(Cleouchas)の娘で、テウピラ(Theuphila)という名だったと述べている。別のエピグラムにおいては、彼女は自分にはメリンノーという名の娘がいた[9]と言及しており、この人物はおそらく詩人のメリンノーである。
作品
編集訳詩見本
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- Αδιον οὐδὲν ἔρωτος· ἃ δ' ὄλβια, δεύτερα πάντα
- ἐστίν· ὰπὸ στόματος δ' ἔπτυσα καὶ τὸ μέλι.
- Τοῦτο λέγει Νοσσίς· τίνα δ' ἁ Κύπρις οὐκ ἐφίλασεν,
- οὐκ οἶδεν κήνα γ' ἅνθεα ποῖα ῥόδα.
- 愛より甘美なるもの世になく、いかな喜びとて
- かなわじ。さあれば 甘き蜜とてわれには苦し
- かくノッシス言う。キュプリス様の愛知らぬ女
- 女神の花とて いかなる薔薇とも知ることあたわず [注釈 1] — 『ギリシア詞華集』V-170
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ Barnard, Sylvia. "Hellenistic Women Poets". The Classical Journal, 73.3 (1978). p. 204.
- ^ Skinner, Marylin. "Homer's Mother". In Greene, Ellen (2005). Women's Voices in Ancient Greece and Rome. n. 11.
- ^ Bowman, Laurel. "The 'Women's Tradition' in Greek Poetry". Phoenix, 58.1 (2004). p. 16.
- ^ Snyder, Jane McIntosh. The Women and the Lyre. (1991. Southern Illinois University Press, Carbondale). See Anthologia Graeca 7:718.
- ^ Bowman, Laurel. "The 'Women's Tradition' in Greek Poetry". Phoenix, 58.1 (2004). p. 20.
- ^ Fernandez Robbio, Matías S. (2014) «Musas y escritoras: el primer canon de la literatura femenina de la Grecia antigua (AP IX 26)». Praesentia, v. 15, 2014, pp. 1-9. ISSN (en línea): 1316-1857. (online)
- ^ Barnard, Sylvia. "Hellenistic Women Poets". The Classical Journal, 73.3 (1978). p. 210.
- ^ Barnard, Sylvia. "Hellenistic Women Poets". The Classical Journal, 73.3 (1978). p. 211.
- ^ William Smith, Dictionary of Greek and Roman Biography and Mythology, London: Murray (1849), "Melinno"
- ^ * 沓掛良彦編訳『ピエリアの薔薇-ギリシア詞華集選』株式会社平凡社《平凡社ライブラリー》、1994年8月15日、ISBN 4-582-76067-8
関連文献
編集- Skinner, Marilyn B. "Aphrodite Garlanded: Erôs and Poetic Creativity in Sappho and Nossis". in Rabinowitz, Nancy Sorkin and Auranger, Lisa. Among Women: From the Homosocial to the Homoerotic in the Ancient World. University of Texas Press, Austin. 2002.
- Bowman, L. 1998. “Nossis, Sappho and Hellenistic Poetry.” Ramus 27.1: 39–59.
- Gigante, M. 1974. “Nosside.” PP 29: 22–39.
- Gow, A. S. F., and D. L. Page, eds. 1965. The Greek Anthology: Hellenistic Epigrams. 2 vols. Cambridge.
- Gutzwiller, K. J. 1998. Poetic Garlands: Hellenistic Epigrams in Context. Berkeley, Los Angeles and London.
- Skinner, M. B. 1989. “Sapphic Nossis.” Arethusa 22: 5–18.
- Skinner, M. B. 1991. “Nossis Thêlyglôssos: The Private Text and the Public Book.” In S. B. Pomeroy, ed., Women’s History and Ancient History. Chapel Hill and London: 20–47.
- Skinner, M. B. 2001. “Ladies’ Day at the Art Institute: Theocritus, Herodas, and the Gendered Gaze.” In A. Lardinois and L. McClure, eds., Making Silence Speak: Women's Voices in Greek Literature and Society. Princeton, N.J., 201–22.
外部リンク
編集- ギリシャ語版ウィキソースに本記事に関連した原文があります:Νοσσίς
- 現存するノッシスの12編のエピグラム