ニンバス
ニンバスまたはニンブス(ラテン語:nimbus[1]、フランス語:nimbe[2]、英語:nimbus[3]、ドイツ語:nimbus[4])
ギリシア神話では、神が地上に現れたときに、その身を輝く雲(光雲)がとりまいているという[3]。ラテン語のnimbusには「雨雲」「(一面の)煙」「大群」「豪雨」などのほか、聖像などの後光・光輪の意味がある[1]。ここから派生して、宗教芸術分野における「後光」「光背」「光輪」や「オーラ」(オーリオール)[注 1]「ハロ」(「ヘイロー」)などに相当し、気象分野では雨雲を表す語などに用いる。
宗教・美術分野
編集キリスト教美術の文脈では神や天使・聖人・使徒などの頭部や背部に円形で描かれる表現を「ニンブス」(ドイツ語の「ハイリゲンシャイン(Heiligenschein)」、英語の「グローリー(glory)」に相当)という[6]。円輪もしくは円盤状で、黄金色で描かれることが多い[6]。
2世紀の図像から登場し、時代により表現に変化がみられる[6]。イエス図では2世紀に登場するようになり、3世紀になるとほぼ必ず描かれるようになった[6]。5世紀には聖母マリアや使徒の図像にも登場、イエスには十字架型のニンブスを描いて区別するようになった[6]。6世紀に入ると天使・聖人にも描かれるようになった[6]。8世紀から9世紀のイタリアでは、存命中の高僧や王の図に方形状のニンブスが描かれた[6]。とくに全身を包むように描かれるものを「aureole」(オーレオール、オリオール)という[7]。
美術表現としては、キリスト教に先立ってヘレニズム期のオリエント・ローマ美術にもみられる[8]。仏教美術では「光背」「光輪」「頭光」などと言い[8][7][9]、キリスト教の「オーラ」「ニンブス」などの日本訳語にもこれらの語があてられている[7]。
気象分野
編集気象分野・気象学では、雲、とくに雨をもたらす雨雲に関連する辞として用いる[10]。単に「雨雲」の意でも用いる[11]。
- cumulonimbus(cumulus + nimbus) - 積乱雲(入道雲)[12][13]
- nimbostratus(nimbus + stratus) - 乱層雲[14][15]
- cumulonímbus cálvus - 無毛雲[16]
など
アメリカの気象衛星
編集アメリカ合衆国ではもっぱら気象の観測に用いる人工衛星に「Nimbus」(ニンバス)と命名(ニンバスシリーズ[17])、1964年の1号から1978年の7号まで打ち上げられた。
- ニンバス (人工衛星) - アメリカ合衆国の気象衛星
その他の例
編集- ニンバス (1910年生の競走馬)
- ニンバス (1946年生の競走馬)
- ニンバス (バラ) - バラの品種
- ニンバス・ローマンNo.9 L - フォント
- ブリストル・シドレー ニンバス - ターボシャフトエンジン
- ニンバス・レコード - クラシック音楽を専門とするイギリスのレコード・レーベル。
- ニンブス (オートバイ) - デンマークのオートバイメーカー(1919 - 1960)。
関連項目
編集- ニンバス2000、ニンバス2001 - 『ハリー・ポッターシリーズ』に登場する魔法のほうき。ハリー・ポッターシリーズの魔法のほうきを参照。
- ニンブス・フィルム
- Nimsoft(旧名: Nimbus Software)
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ a b 研究社『羅和辞典』「nimbus」2023年5月19日JapanKnowledgeで閲覧。
- ^ 小学館『ロベール仏和大辞典』「nimbe」。2023年5月19日JapanKnowledgeで閲覧。
- ^ a b 小学館『ランダムハウス英和大辞典』「nim・bus」。2023年5月19日JapanKnowledgeで閲覧。
- ^ 小学館『独和大辞典』「Nim・bus」。2023年5月19日JapanKnowledgeで閲覧。
- ^ 小学館『日本大百科全書 ニッポニカ』森田團「アウラ」
- ^ a b c d e f g 平凡社『世界大百科事典』「光背」、吉川逸治「キリスト教美術の光背」。2023年5月19日JapanKnowledgeで閲覧。
- ^ a b c 小学館『日本大百科全書 ニッポニカ』佐藤昭夫「光背」
- ^ a b 平凡社『世界大百科事典』「光背」、吉川逸治「キリスト教美術の光背」。2023年5月19日JapanKnowledgeで閲覧。
- ^ 小学館『デジタル大辞泉』「光輪」。2023年5月19日JapanKnowledgeで閲覧。
- ^ 小学館『SPED理工系英和辞典』「nimbus」
- ^ 小学館『プログレッシブ和英中辞典』「雨雲」
- ^ 小学館『SPED理工系英和辞典』「cumulonimbus」
- ^ 小学館『ランダムハウス英和大辞典』「cùmulo・nímbus」
- ^ 小学館『ロベール仏和大辞典』「nimbo-stratus」
- ^ オックスフォード大学出版局『Oxford Advanced Learner's Dictionary』「nimbo・stratus」
- ^ 小学館『ランダムハウス英和大辞典』「cumulonímbus cálvus」
- ^ 平凡社『世界大百科事典』「気象衛星」