ナーブルスチーズ
ナーブルスチーズ(Nabulsi)、別名ナーブルシー、ジブン・ナーブルシーは中東地域で多数作られている白塩漬けチーズの一種で、パレスチナのナーブルスを発祥とするものである。発祥地で、名前の由来であるナーブルスをはじめとするパレスチナのヨルダン川西岸地区及びその周辺地域でよく知られている[1]。ナーブルスチーズはアッカーチーズとともにヨルダンで食されている主要なチーズである[2]。現在ではシリアなどの地域でも作られており、アラブ首長国連邦などでも食されている[3]。
ナーブルスチーズ | |
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ナーブルスチーズの外見。スパイスが黒い点になって見える。 | |
発祥地 | パレスチナ |
地域 | ヨルダン川西岸地区、ナーブルス |
主な材料 | 羊乳、山羊乳、牛乳 |
製法
編集主に羊乳から作るが、山羊乳から作ることもある[3]。あまり高品質と見なされていないものについては、牛乳を原料とする粉ミルクを加えて作ることもある[2]。山羊や羊の乳が入手しやすい春に作られることが多いが、保存がきくため季節を問わず食すことができる[4]。しばしば、同じくパレスチナのチーズであるアッカーチーズを茹でるような工程で作ると評される[5]。ナーブルスチーズは白く四角い形をしたセミハードチーズであり、炭酸ガスなどによってできる気泡の穴は無い[2]。羊や山羊の乳から作るチーズとしては典型的なものだが、伝統的にはマフレブやマスティックなどのスパイスを沸かした塩水に加えて味付けし、そこにカードを入れて作る[3]。ナーブルスチーズにはスパイシーな風味があり、ブラッククミンシードなどのスパイスが黒い点になって表面に見えることがある[6]。
調理法
編集熱すると柔らかく、弾力に富んだ食感になるが、ハルーミなどと同様、焼いても完全に溶けてしまうことはない[7]。ほとんどの料理ではハルーミのかわりに使うことができると言われている[5]。食感についてはよく伸びるため、モッツァレッラに似ていると言われることもある[8][9]。塩味の強いテーブルチーズとしてそのまま食べるほか、油で揚げて食べることもできる[10]。オムレツなどに入れたり、サラダに入れることもある[7][6]。フランスパンなどに挟んでサンドイッチにすることもでき、塩味がきつい場合にはジャムなどを添えることもある[11]。
パレスチナのデザートであるクナーファの主要な材料でもある[10]。ナーブルスのクナーファは非常に細い麺のようなペイストリーを細かく砕いて作った生地の上に、ナーブルスチーズを加えて熱するものである[12]。砂糖や蜂蜜などで甘く味付けし、きつね色になるくらいまでフライパン等で熱してから食べる[13]。ナーブルスのクナーファは「チーズとその塩分を取る水がいいため[14]」美味であると評され、地元の名物として有名になっている。2009年6月にはナーブルスにて600キロ近いナーブルスチーズに300キログラムの砂糖、35キログラムのピスタチオを用いて、長さが75メートルほど、幅が2メートル、重さは1350キロもある巨大なクナーファが作られ、ギネスブックに登録されたこともある[12]。クナーファ用のパレスチナ産ナーブルスチーズは珍重されており、製菓用としてドバイなどにも輸出されている[15]。
脚注
編集- ^ Tamime, A. Y.; Robinson, R. K. (1991). Feta and Related Cheeses. Woodhead Publishing. pp. 209. ISBN 1-85573-278-5 13 August 2012閲覧。
- ^ a b c Tamime, A. Y.; Robinson, R. K. (1991). Feta and Related Cheeses. Woodhead Publishing. pp. 210. ISBN 1-85573-278-5 13 August 2012閲覧。
- ^ a b c Philip Iddison, "Dairy Food in the UAE", Harlan Walker, ed., Milk: Beyond the Dairy: Proceedings of the Oxford Symposium on Food and Cookery 1999 (Prospect Books, 2000), 178 - 192, p. 189.
- ^ M.H.Abd El-Salam and E.Alichanidis, "Cheese Varieties Ripened in Brine", Patrick F. Fox, Paul L.H. McSweeney, Timothy M. Cogan and Timothy P. Guinee, ed., Cheese: Chemistry, Physics and Microbiology (Elzevier, 2004), vol. 2, 227-249, p. 241.
- ^ a b Faith Gorsky (2012). Edible Mosaic: Middle Eastern Fare with Extraordinary Flair. Tuttle
- ^ a b “Say Cheese: Crisp and spicy”. The Washington Post (2017年7月13日). 2017年11月26日閲覧。
- ^ a b “Here's What A Muslim Dietitian Eats During Ramadan”. BuzzFeed (2017年5月28日). 2017年11月26日閲覧。
- ^ Kevin Pang (2013年5月23日). “At Almawal, a master of fire, meat”. The Chicago Tribune. 2017年11月26日閲覧。
- ^ 山尾有紀恵 (2012年7月5日). “〈地球を食べる〉パレスチナの激甘スイーツ、朝食にも クナーフェ@ナブルス”. 朝日新聞デジタル
- ^ a b Tamime, A. Y.; Robinson, R. K. (1991). Feta and Related Cheeses. Woodhead Publishing. pp. 216. ISBN 1-85573-278-5 13 August 2012閲覧。
- ^ Adnan Y. Tamime and R. K. Robinson, "Utilization of Brined Cheeses in Other Food Preparations", Adnan Y. Tamime, ed., Brined Cheeses (John Wiley & Sons, 2008), 302 - 316, p. 305.
- ^ a b “世界食彩記:エジプト・カイロ クナーフェ”. 毎日新聞(東京夕刊). (2011年12月15日)
- ^ “[遊歩人・食べる]パレスチナ 塩味と甘味濃厚な「カナフェ」”. 読売新聞(東京夕刊). (2006年2月20日)
- ^ “みんな大好き!パレスチナの絶品スイーツ”. 日テレNEWS24. (2010年2月12日)
- ^ Nadeem Hanif (2011年9月2日). “Bakers busy as residents enjoy sweet treats of Eid”. The National. 2017年11月26日閲覧。
外部リンク
編集- Tamime, A. Y.; Robinson, R. K. (1991). Feta and Related Cheeses. Woodhead Publishing. pp. 209, 216. ISBN 1-85573-278-5