ナノカー
ナノカー(英語:nanocar)は、アメリカ合衆国テキサス州のライス大学でジェームス・ツアー教授の研究グループにより開発された分子。
概要
編集髪の毛の太さの約2万分の1の大きさで形が車に似ている事から「ナノカー」と命名された。
シャーシと車軸は、主にベンゼン環とアセチレン結合からなり、薗頭反応により組み立てられる。車輪部分には4個のフラーレン C60 、もしくは p-カルボラン C2B10が用いられる。車軸に含まれる炭素-炭素の単結合は回転が可能なので、車輪が回転して動くことが期待された分子設計である。このナノカーは金表面上をまっすぐに動くことがSTMにより観察されている。シャーシの部分に人工分子モーターやアゾベンゼンの構造を導入し、光や熱で動力を与える試みも行われている。
ナノカーを合成したベルナルト・L・フェリンハはジャン=ピエール・ソヴァージュ、フレイザー・ストッダートと共に、2016年ノーベル化学賞を受賞した。
ナノカーレース
編集→詳細は「ナノカーレース」を参照
フランス南西部のトゥールーズにあるフランス国立科学研究センターで2017年4月28日から29日にかけてナノカーレースが開催される[1]。 金基板表面のうねりをコースとして利用し、100ナノメートルを38時間以内に走破する時間を競うナノカーレースには6カ国から6チームが参戦するレースで28-29日の競技に出場するのは4チームのみと主催者は発表している。日本からは物質・材料研究機構のチームが参戦する[2][3]。
参考文献
編集- 総説: Shirai, Y.; Morin, J.-F.; Sasaki, T.; Guerrero, J. M.; Tour, J. M. Chem. Soc. Rev. 2006, 35, 1043-1055. DOI: 10.1039/b514700j
- Shirai, Y.; Osgood, A. J.; Zhao, Y.; Kelly, K. F.; Tour, J. M. Nano Lett. 2005, 5, 2330-2334. DOI: 10.1021/nl051915k
- Morin, J.-F.; Shirai, Y.; Tour, J. M. Org. Lett. 2006, 8, 1713-1716. DOI: 10.1021/ol060445d
- Shirai, Y.; Osgood, A. J.; Zhao, Y.; Yao, Y.; Saudan, L.; Yang, H.; Yu-Hung, C.; Sasaki, T.; Morin, J.-F.; Guerrero, J. M.; Kelly, K. F.; Tour, J. T. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 4854-4864. DOI: 10.1021/ja058514r
- Sasaki, T.; Tour, J. Org. Lett. 2008, 10, 897-900. DOI: 10.1021/ol703027h
関連項目
編集脚注
編集外部リンク
編集- プレスリリース
- ナノカー発進!(構造のイラストあり) - 有機化学美術館
- ナノカー2号発進!(同上) - 有機化学美術館