ドーンDawn)とは、アメリカ航空宇宙局 (NASA) が打ち上げた、メインベルトに存在する準惑星ケレスおよび小惑星ベスタを目標とした、無人探査機である。NASAのディスカバリー計画のミッションの1つでもある。

ドーン Dawn
太陽電池パネル展開後のドーン探査機。
所属 アメリカ航空宇宙局 (NASA)
主製造業者 OSC
公式ページ dawn.jpl.nasa.gov
国際標識番号 2007-043A
カタログ番号 32249
状態 運用終了
目的 小惑星ベスタ準惑星ケレスの探査。
設計寿命 10年
打上げ機 デルタIIロケット
打上げ日時 2007年9月27日07時34分(EST
最接近日 ベスタ - 2011年10月
ケレス - 2015年2月
通信途絶日 2018年10月31日[1]
物理的特長
衛星バス OSC STAR™ Bus
本体寸法 1.64 × 1.27 × 1.77 m
最大寸法 19.7 m(太陽電池パネル展開幅)
質量 1217.7 kg(打ち上げ時)
747.1 kg(燃料以外)
発生電力 10.3 kW(1 auでの出力[注釈 1]
主な推進器 キセノンイオンスラスタ NSTAR × 3
0.9 N ヒドラジン1液スラスタ × 12
姿勢制御方式 三軸安定方式
ミッション機器
FC フレーミングカメラ
VIR 可視・赤外マッピング分光計
GRaND ガンマ線・中性子分光計
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概要

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ドーンが観測した準惑星ケレス。回転楕円体である事が見て取れる。

ドーン・ミッションの目的は、太陽系初期の状態を残していると考えられる、2つの大きな原始的天体を調べる事により、太陽系誕生に起きたとされる岩石惑星の形成過程を知ろうとする点に有る。なお、英語で「dawn」とは「夜明け・あけぼの・暁」などの意味だけでなく「事の始まり」や「誕生」などといった意味も有する[2]。NASA・ジェット推進研究所は、ミッション名は太陽系の始まり (the dawn of the solar system) に関する情報を提供するという目的から名付けられたものだと説明している[3]

ケレスとベスタは太陽系の別々の場所で誕生したと考えられており、それによると見られる対照的な違いが幾つも見られる。ケレスは、その形成段階において地下水による「冷たく湿った」状態を経験しているとされている。一方のベスタは、マントルや核といった内部構造を持ち、また表面に有する火山活動の形跡などから「熱く乾いた」状態を経験していると考えられている。さらに小惑星のスペクトル分類でも、ケレスがG型、ベスタがV型と全く異なる。

これらの天体の探査計画は、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の宇宙科学者クリストファー・T・ラッセルを中心に進められた。

探査機の主要な推進システムとして、ディープ・スペース1号で使用実績の有る、キセノンを用いたイオン・スラスタNSTAR」3基を搭載した。NASAのジェット推進研究所 (JPL) は、イオンエンジンを提供し、飛行システム開発も行った。

さらに、観測機器として、ドイツ航空宇宙センターはフレーミングカメラを、イタリア宇宙局はマッピング分光計を、米エネルギー省ロスアラモス国立研究所はガンマ線分光計を提供した。

ドーンはデルタIIロケット2007年打ち上げられた。2007年に地球を出発した探査機は、イオンエンジンを用いた長期間の航行を実施し、まずベスタの観測を行い、次いでケレスの観測を行い、そして、2018年に燃料が枯渇したため、運用が終了された[1]。これによって、ドーンは人類史上初の、小惑星帯に半永久的に留まる人工物となった。

打ち上げまで

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デルタIIロケットの頭頂部に当たる、フェアリング内へドーンを搭載した際の写真。

予算の削減と人員不足、そして技術上の問題から、探査機の打ち上げは度々延期された。2003年12月に計画は一旦中止されたものの、2004年2月には復活した。計画復活時点での予定によれば、ドーンは2006年5月に打ち上げられ、2010年~2011年にベスタの、2014年~2015年にケレスの探査を行う予定であった。

しかし、2005年11月にドーンの計画は「スタンドダウン(身を引く)」状態にされた。2006年1月時点でNASAはドーン・ミッションの状態に関して何ら公式な決定を下していなかったものの、メディアは「スタンドダウン」状態とは「無期限延期」の事ではないかと報道した。そして2006年3月2日に、ドーンに必要な資金が、当初の予算を大幅に上回る4億4600万ドルに嵩んだ事を理由に、ミッションの中止が発表された。

ところで、この時点で探査機はオービタル・サイエンシズ社によって、9割方の組み立てが終わっていた。さらに、観測装置を提供していたヨーロッパの学者達やJPLが、ミッション中止に抗議した。その後、技術上の問題が既に解決し、予算超過が当初より低く見積もられたため、2006年3月27日には復活が決定された。

ドーンの打ち上げは、アメリカ東部標準時2007年7月7日16時9分に行う予定だったものの、この日は悪天候のために打ち上げが延期された。さらに関係者の協議の末に、同月における打ち上げのチャンスが少ない上に、他のロケットの打ち上げに影響するため、2007年9月26日に打ち上げの延期が決定された[4]

ドーンは結局、悪天候のため、さらに予定より1日遅れて、2007年9月27日7時34分(アメリカ東部標準時。日本時間では9月27日20時34分)に打ち上げられ、この打ち上げは成功した[5]

探査

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ドーン探査機の探査経路

以下は打ち上げから運用終了までの一連の流れである[6]

  • 2007年9月27日: 打ち上げに成功[5]
  • 2008年6月: 初めて小惑星帯へ突入。
  • 2009年2月17日: 火星でのスイングバイを実施。
  • 2009年11月13日: 再び小惑星帯へ突入[7]
  • 2011年5月3日: 初めてベスタの画像を撮影[8]
  • 2011年7月16日: ベスタの周回軌道へ投入成功[9]
  • 2011年8月11日: ベスタの約2700 km上空を3日間で1周する「概観観測軌道」(survey orbit)へ移行。
  • 2011年9月29日: ベスタの680 km上空を半日に1周する「高高度マッピング軌道」(HAMO)へ移行[10]
  • 2011年12月12日: やや楕円のベスタ周回軌道である「低高度マッピング軌道」(LAMO)へ移行。
  • 2012年9月5日: ベスタを出発[11]
  • 2015年3月6日: ケレスへ到着[12]
  • 2018年10月31日: 通信途絶。原因は、姿勢制御用のヒドラジン燃料の枯渇により、アンテナを地球に向けられなくなったためと推定される。ケレスを汚染しないよう、ドーンは今後少なくとも50年以上にわたって軌道上に留まり続ける[1]

画像

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脚注

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注釈

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  1. ^ 地球の公転軌道での太陽電池の出力である。メインベルトは火星の公転軌道よりも太陽から遠く、太陽光が弱いため、太陽電池の出力は低下する。

出典

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  1. ^ a b c NASA’s Dawn Mission to Asteroid Belt Comes to End” (英語). NASA (2018年11月2日). 2018年11月4日閲覧。
  2. ^ 小西 友七(編集主幹)『ジーニアス英和辞典(改訂版)2色刷』 p.451 大修館書店 1994年4月1日発行 ISBN 4-469-04109-2
  3. ^ FAQ | Mission – NASA Solar System Exploration”. アメリカ航空宇宙局ジェット推進研究所. 2021年4月26日閲覧。
  4. ^ [1]
  5. ^ a b [2]
  6. ^ Dawn mission
  7. ^ [3]
  8. ^ [4]
  9. ^ [5]
  10. ^ [6]
  11. ^ “Dawn has Departed the Giant Asteroid Vesta”. NASA. (2012年9月5日). http://www.nasa.gov/mission_pages/dawn/news/dawn20120905.html 2012年9月8日閲覧。 
  12. ^ “探査機ドーン、準惑星ケレスに到着”. Sorae.jp. (2015年3月8日). https://sorae.info/030201/5461.html 2015年5月2日閲覧。 

外部リンク

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