トルースタイト
トルースタイト(英: troostite)とは、鋼の組織の一種であり、マルテンサイトを約400℃程度で焼戻しすることにより得られる、極微細なセメンタイトとフェライトの混合組織である[1][2]。名称は発見したフランスのトルース(L.J.Troost)に由来する[3]。焼戻しトルースタイト、二次トルースタイトとも呼ばれる[4][5]。現在ではあまり使用されないが、マルテンサイトの地からセメンタイトの粒が吐き出されたような組織なので、日本の冶金学者本多光太郎による吐粒洲(トルース)という漢字の当て字がある[3]。
以前は、焼入れの冷却時に約500℃で停止させてA1変態させた後に再冷却させて得られる組織が、一次トルースタイト、焼入れトルースタイト、結節状トルースタイトなどと呼ばれていた[4]。現在では、このような組織は微細パーライトと呼ばれる[4]。
フェライト中のセメンタイトは、光学顕微鏡では判別できないレベルの大きさの微細セメンタイトとなっている[6]。ソルバイトよりもセメンタイトが微細なのが特徴である[2]。
機械的性質については、硬さはマルテンサイトに次いで高く、ベイナイトと同レベルである[1]。疲労限度もマルテンサイトに次いで高い[7]。ビッカース硬さは約400 HVで[2]、ロックウェル硬さは約51 HRCである[1]。疲労限度を引張強さで除した値である疲労限度比は、0.40 - 0.54程度である[7]。マルテンサイトに次ぐ硬さとある程度の靱性の高さを備えているので、刃物などに使用される[1]。一方で錆びやすさが欠点である[2]。
脚注
編集- ^ a b c d 山方三郎『図解入門 よくわかる最新熱処理技術の基本と仕組み』(第1版)秀和システム、2009年、58-59頁。ISBN 978-4-7980-2269-7。
- ^ a b c d 藤木榮『金属材料の組織変化と疲労強度の見方』(初版)日刊工業新聞社、2004年、8-9頁。ISBN 4-526-05238-8。
- ^ a b 大和久重雄『熱処理のおはなし』(訂正版)日本規格協会、2006年、57頁。ISBN 4-542-90108-4。
- ^ a b c 金属用語辞典編集委員会『金属用語辞典』(初版)アグネ技術センター、2004年、278頁。ISBN 4-901496-14-X。
- ^ “用語集”. 朝日熱処理工業株式会社. 2015年2月7日閲覧。
- ^ 不二越熱処理研究会『新・知りたい熱処理』(初版)ジャパンマシニスト社、2001年、18頁。ISBN 4-88049-035-0。
- ^ a b 藤木榮『金属材料の組織変化と疲労強度の見方』(初版)日刊工業新聞社、2004年、108頁。ISBN 4-526-05238-8。