デフォレスト・クリントン・ジャービス
デフォレスト・クリントン・ジャービス(DeForest Clinton Jarvis, 1881年3月15日 - 1966年8月18日)は、アメリカ合衆国バーモント州出身の医師。長寿州とされる同州の民間療法に関する書籍『バーモントの民間療法』(1958年)を著したことで知られる[1]。
D. C. Jarvis | |
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生誕 |
1881年3月15日 アメリカ合衆国 ニューヨーク州プラッツバーグ |
死没 |
1966年8月18日 アメリカ合衆国 バーモント州サウス・バリ |
職業 | 医師、著作家 |
ジャービスが紹介した「バーモント健康法」は一世を風靡したが、リンゴ酢と蜂蜜を混合した飲料(スウィッチェル (switchel) やホネガー(honegar)と呼ばれるもの)を推奨したこと[2][3]がよく知られている[1]。
生涯
編集ジャービスは、父ジョージ・ジャービス (George Jarvis)、母アビー・ビンセント (Abbie Vincent)の子として生まれる。出生地はニューヨーク州プラッツバーグであるが、バーモント州に代々暮らす家族の5代目であり、バーモント州バーリントンで成長した。1904年にバーモント大学医学部を卒業し、1909年にバーモント州バリで医師として開業した。
ジャービスはパール・マコンバー (Pearl Macomber) と結婚し、一女シルビア(Sylvia Jarvis Smith, 1914年6月29日 - 2009年12月27日)を儲けた[4]。 ジャービスの趣味は宝飾品づくりやチェロの演奏で、子供のオーケストラを22年にわたって運営した[5]。
ジャービスの1958年の著書 Folk Medicine: A Vermont Doctor's Guide to Good Health[3](日本語訳題『バーモントの民間療法』) は、ニューヨークタイムズ紙のベストセラーリストに2年間にわたって載り続け、最終的に100万部以上を販売した。ある論者は、古代ローマでプリニウスが健康のために用いていた蜂蜜と酢を、ジャービスが蜂蜜とリンゴ酢として現代によみがえらせ、再び普及させたと記した[6]。
ジャービスはバーモント州サウス・バリのジルアード・ナーシングホーム (Girouard Nursing Home) において、85歳で死去した。死因はは慢性腎臓感染症・脳血栓症・動脈硬化症であった[7]。
評価
編集ジャービスは、酢を使うことによって体内の酸性度をアルカリ性よりも酸性に保つことを推奨し、それが火傷や静脈瘤などの病気の治療に効果があると信じていた[8]。
1960年、"Honegar"の販売との関連でアメリカ食品医薬品局(FDA)が押収したものの中に、ジャービスの『バーモントの民間医療』が含まれていた[9][10]。医師のルイス・ザーニャは次のように記している。
ニューヨーク州オールバニでは、FDAの捜査官が蜂蜜とリンゴ酢の混合物である「Honegar」6万ドル相当を押収した。「Honegar」は50近くの病気や症状への使用が想定されていたが、それに対する適切な指示が記載されていなかったためである。混合物とともに押収されたのはジャービスの著書からの転載と引用文であった(ジャービスは明らかにこの製品の商業的製造には関与していなかった)[11]
ジャービスは、リンゴ酢と蜂蜜が関節炎、糖尿病、高血圧、心臓病、その他多くの病気の治療に使用できるという考えを広めた。医療当局はこれらの主張をナンセンスであるとして否定している[12][13][14][15]。
著書
編集- Folk Medicine: A Vermont Doctor's Guide to Good Health (1958). New York: Holt. ISBN 978-1447446378
- D.C.ジャービス(大原武夫訳)『バーモントの民間療法』(ダイヤモンド社、1961年)
- Arthritis and Folk Medicine (1960). New York: Holt, Rinehart and Winston.
- D.C.ジャービス(大原武夫訳)『バーモント健康法 -リンゴ酢とハチミツはなぜ効くか』(ダイヤモンド社、1975年)
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ a b “バーモント食健康法”. ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典. 2024年12月29日閲覧。
- ^ D.C. Md Jarvis (May 12, 1985). Folk Medicine: A New England Almanac of Natural Health Care from a Noted Vermont Country Doctor. Fawcett Publications. ISBN 978-0-449-20880-9
- ^ a b “Folk Medicine”. Time magazine. (December 28, 1959). オリジナルのDecember 9, 2008時点におけるアーカイブ。 2010年2月24日閲覧。
- ^ “Vermost Quarterly: 1930s 1940s”. The University of Vermont (2003年12月31日). May 24, 2012閲覧。
- ^ “Dr. Jarvis's Great Switchel Revival”. Vermont Life (1960年). May 24, 2012閲覧。
- ^ The Natural Farmer, Vol. 2, No. 45, p. 14 Summer, 2000
- ^ “Dr. D.C. Jarvis, Author of 'Folk Medicine,' Dead; Vermont Physician's '58 Book Sold Over a Million He Stressed Curative Value of Vinegar and Honey”. The New York Times. (August 19, 1966) 2010年2月24日閲覧。
- ^ Fry, Ann Lyons (2003). The Vermont Encyclopedia. Hanover, N.H.: University Press of New England. pp. 170. ISBN 1-58465-086-9
- ^ Kleinfeld, Vincent A; Kaplan, Alan H. (1965). Federal Food, Drug, and Cosmetic Act: Judicial and Administrative Record, 1961-1964. Commerce Clearing House. pp. 88-90
- ^ Barrett, Stephen; Herbert, Victor. (1994). The Vitamin Pushers: How the "Health Food" Industry is Selling America a Bill of Goods. Prometheus Books. p. 323. ISBN 978-0-87975-909-4 "D. C. Jarvis, M.D. (1881-1966) wrote that body alkalinity was the principle threat to American health and that honey and apple cider were antidotes. False claims in his book were the basis for an FDA seizure of a product called Honegar."
- ^ Lasagna, Louis. (1962). The Doctors' Dilemmas. Harper. p. 306
- ^ Clar, Mimi. (1961). "Honegar" and Folk Medicine. Western Folklore 20 (3): 203.
- ^ Lamont-Havers, R. (1963). Arthritis Quackery. The American Journal of Nursing 63 (3): 92-95.
- ^ Sechrist, William. (1970). Dynamics of Wellness. Wadsworth Publishing Company. p. 442
- ^ Schaller, Warren Edward; Carroll, Charles Robert. (1976). Health, Quackery & the Consumer. Saunders. p. 133. ISBN 978-0721679495
関連項目
編集- バーモントカレー - ハウス食品の商品名。1963年発売。「バーモント健康法」を参考に、リンゴと蜂蜜を原材料に取り入れた。