デフォルトゲートウェイ
コンピュータネットワークにおいてデフォルトゲートウェイ(default gateway)とは、内部ネットワークと外部ネットワークを接続するためのノードである。IPネットワークにおいて、経路が分からないIPアドレス宛のパケットは、デフォルトゲートウェイ又はデフォルトルートに転送される。一般的に、デフォルトゲートウェイはルーターである。
例
編集例1
編集以下のIPアドレスを持つ6つのホストがあるネットワークを考える。
- 192.168.4.3
- 192.168.4.4
- 192.168.4.5
- 192.168.4.6
- 192.168.4.7
- 192.168.4.8
ルーターの内側のアドレスは 192.168.4.1 、ネットワークのサブネットマスクは 255.255.255.0 (CIDR記法で/24)とする。
このサブネット内のホストに割り当てられるアドレス範囲は、192.168.4.1から192.168.4.254までである。192.168.4.0と192.168.4.255はTCP/IPにより特別な目的のために使用される。この範囲内のIPアドレス宛のパケットは、ルーターを介さずに直接宛先ホストへ送られる。これはAddress Resolution Protocol(ARP)によって宛先のIPアドレスがMACアドレスに解決できるためである。
この範囲外のIPアドレス、例えば192.168.12.3宛のパケットは、直接宛先へ送信することができない。その代わりにデフォルトゲートウェイ宛に送信することで、最終的な宛先に送られる。この例では192.168.4.1がデフォルトゲートウェイであり、これはサブネット内なのでARPによってIPアドレスがMACアドレスに解決される。パケットに記載された宛先IPアドレスは192.168.12.3のままであるが、宛先の物理アドレスはデフォルトゲートウェイのMACアドレスになる。
例2
編集右図のように、3つのルーターと3つのホストがあり、インターネットにルーター1を介して接続しているネットワークを考える。各ホストとルーターの設定は以下の通りである。
- ホスト1 10.1.1.100, デフォルトゲートウェイ 10.1.1.1
- ホスト2 172.16.1.100, デフォルトゲートウェイ 172.16.1.1
- ホスト3 192.168.1.100, デフォルトゲートウェイ 192.168.1.96
ルーター1:
- インターフェース1 5.5.5.2
- インターフェース2 10.1.1.1
ルーター2:
- インターフェース1 10.1.1.2
- インターフェース2 172.16.1.1
ルーター3:
- インターフェース1 10.1.1.3
- インターフェース2 192.168.1.96
すべてのネットワークのネットワークマスクは 255.255.255.0(CIDR記法で /24)である。
それぞれのルーターがどのネットワークに接続しているを検知するためにルーターがルーティングプロトコルを使わない場合、それぞれのルーターに以下のようにルーティングテーブルをあらかじめ設定しておく必要がある。
ルーター1
ネットワークID | ネットワークマスク | ゲートウェイ | インターフェース | コスト(TTLが減少) |
---|---|---|---|---|
0.0.0.0(デフォルトルート) | 0.0.0.0 | ISPにより指定されたデフォルトゲートウェイ(例えば5.5.5.1) | eth0 (Ethernet 1st adapter) | 10 |
10.1.1.0 | 255.255.255.0 | 10.1.1.1 | eth1 (Ethernet 2nd adapter) | 10 |
172.16.1.0 | 255.255.255.0 | 10.1.1.2 | eth1 (Ethernet 2nd adapter) | 10 |
192.168.1.0 | 255.255.255.0 | 10.1.1.3 | eth1 (Ethernet 2nd adapter) | 10 |
ルーター2
ネットワークID | ネットワークマスク | ゲートウェイ | インターフェース | コスト(TTLが減少) |
---|---|---|---|---|
0.0.0.0(デフォルトルート) | 0.0.0.0 | 10.1.1.1 | eth0 (Ethernet 1st adapter) | 10 |
172.16.1.0 | 255.255.255.0 | 172.16.1.1 | eth1 (Ethernet 2nd adapter) | 10 |
ルーター3
ネットワークID | ネットワークマスク | ゲートウェイ | インターフェース | コスト(TTLが減少) |
---|---|---|---|---|
0.0.0.0(デフォルトルート) | 0.0.0.0 | 10.1.1.1 | eth0 (Ethernet 1st adapter) | 10 |
192.168.1.0 | 255.255.255.0 | 192.168.1.96 | eth1 (Ethernet 2nd adapter) | 10 |
ルーター2は、それに取付けられたネットワークとデフォルトゲートウェイを管理する。ルーター3も同様にする。ルーター1は、内部のネットワークの中の全てのルートを管理する。
内部リソースへのアクセス
編集ホスト2(172.16.1.100)からホスト3(192.168.1.100)へアクセスしようとするとき、ホスト2は192.168.1.100へのルートの情報を持っていないので、ホスト2はデフォルトゲートウェイ(ルーター2)にホスト3宛のパケットを送信する。ルーター2もホスト3へのルートの情報を持っていないので、デフォルトゲートウェイ(ルーター1)にパケットを送信する。ルーター1は192.168.1.100が属するネットワーク(192.168.1.0/24)へのルートの情報を持っているので、それに従ってルーター3へパケットを送信する。ルーター3もホスト3へのルートの情報を持っているので、ホスト3へパケットを送信する。ホスト2への応答のパケットは、同じルートを逆にたどる。
外部リソースへのアクセス
編集このネットワークの内部のホストからインターネットのWebページ(例えば http://en.wikipedia.org )にアクセスする場合、まずDNSによって宛先のIPアドレスを解決し、宛先IPアドレス 91.198.174.2 (例)を得る。ネットワーク内のどのルーターもこのホストまでのルートを知らないので、パケットはルーター1まで送られる。ルーター1はデフォルトゲートウェイである5.5.5.1にパケットを送信する。その後も、パケットが送られたルーターは、パケットの宛先IPアドレスが既知のネットワークルートにマッチするかどうか調べ、合致するならそのルートへ送信し、合致するものがなければそのルーターのデフォルトゲートウェイに送信する。これを繰り返すことで、パケットは目的のホストに送られる。
戻って来ないパケット
編集ルーター1が192.168.1.0/24のルートの情報を持っておらず、ホスト3からネットワーク外のリソースへのアクセスしようとした時、応答がルーター1に帰ってきても192.168.1.0/24へのルートの情報を持っていないので、ルーター1のデフォルトゲートウェイに送信してしまい、ホスト3には届かない。パケットがノードを通過するたびにTTLが減少し、0以下になると破棄される。