ティシチェンコ反応
ティシチェンコ反応 (Tishchenko reaction) は、有機化学における合成反応のひとつ。アルコキシドの触媒作用により、2分子のアルデヒドが不均化して1分子のエステルを与える反応。1906年、V. ティシチェンコにより最初に報告された[1]。
上式のように、ベンズアルデヒドを基質とすると安息香酸ベンジルが[2]、アセトアルデヒドからは酢酸エチルが得られる。触媒としては、アルミニウムアルコキシド、またはナトリウムアルコキシドが用いられる。
ホウ酸を触媒として、パラホルムアルデヒドからギ酸メチルを得る手法も知られる[3]。
反応機構
編集ティシチェンコ反応の機構を示す。アルコキシドがアルデヒドのカルボニル炭素に求核付加し、生じたヘミアセタールのアルコキシドがもう1分子のアルデヒドに付加する。続くヒドリドの1,3-転位が生成物のエステルを与え、同時にアルコキシドを再生する。
同様に、塩基によりアルデヒドを不均化させる反応としてカニッツァーロ反応が知られる。カニッツァーロ反応では水酸化ナトリウムを触媒としてカルボン酸とアルコールが生じる。
参考文献
編集- ^ Tishchenko, V. J. Russ. Phys. Chem. Soc. 1906, 38, 355, 482, 540, 547.
- ^ Kamm, O.; Kamm, W. F. Org. Synth., Coll. Vol. 1, p.104; Vol. 2, p.5. オンライン版
- ^ Stapp, P. R. J. Org. Chem. 1973, 38, 1433-1434. DOI: 10.1021/jo00947a049