チアゾリン(Thiazoline)またはジヒドロチアゾール(Dihydrothiazoles)は、窒素原子と硫黄原子を1つずつ含む五員環からなる複素環式化合物である。置換のないチアゾリンはほとんど見られないが、誘導体は一般的であり、生理活性を持つものもある。例えば、翻訳後修飾により、システイン残基がチアゾリンになることがある[1]

チアゾリン
{{{画像alt1}}}
{{{画像alt2}}}
{{{画像alt3}}}
識別情報
CAS登録番号 504-79-0 (2,3) チェック, 24576-55-4 (2,5) ×, 504-79-0 (4,5) ×
PubChem 151424 (2,3)15194654 (2,5)120269 (4,5)
ChemSpider 133456 (2,3)
10541467 (2,5)
107368 (4,5)
特性
化学式 C3H5NS
モル質量 87.14 g mol−1
外観 Colorless liquids
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

チアゾリンという名前は、ハンチュ-ウィドマン命名法による。

異性体

編集
 
左から、2-チアゾリン、3-チアゾリン、4-チアゾリン

二重結合の位置により、3種類の構造異性体がある。これらは相互変換しないため、互変異性ではない。この中で、2-チアゾリンが最も一般的である。

窒素原子と硫黄原子が隣り合う4つ目の構造も存在し、イソチアゾリンとして知られる。

合成

編集

チアゾリンは、1909年にリヒャルト・ヴィルシュテッターにより、チオアミドジアルキル化することで初めて合成された[2]。2-チアゾリンは、通常、システアミン等の2-アミノエタンチオールから作られる[3]。また、アシンガー反応によっても作られる。

応用

編集

多くの分子がチアゾリン環を含み、一例として、ホタルの発光分子ルシフェリンがある。システインは、工業的には、チアゾリン誘導体から作られる[3]2-アミノチアゾリン-4-カルボン酸は、工業的なL-システイン合成の中間体である[4]

関連項目

編集

出典

編集
  1. ^ Walsh, Christopher T.; Nolan, Elizabeth M. (2008). “Morphing peptide backbones into heterocycles”. Proceedings of the National Academy of Sciences USA 105 (15): 5655-5656. doi:10.1073/pnas.0802300105. PMC 2311349. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2311349/. 
  2. ^ Willstatter, Richard; Wirth, Theodor (1909). “Uber Thioformamid”. Chem. Ber. 42 (2): 1908-1922. doi:10.1002/cber.19090420267. 
  3. ^ a b Gaumont, Annie-Claude; Gulea, Mihaela; Levillain, Jocelyne (11 March 2009). “Overview of the Chemistry of 2-Thiazolines”. Chemical Reviews 109 (3): 1371-1401. doi:10.1021/cr800189z. 
  4. ^ Karlheinz Drauz, Ian Grayson, Axel Kleemann, Hans-Peter Krimmer, Wolfgang Leuchtenberger, Christoph Weckbecker (2005), Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, Weinheim: Wiley-VCH, doi:10.1002/14356007.a02_057.pub2