ターボメモリー
ターボ・メモリーはインテルによって売り出された(コンピュータの起動、プログラム・アクセス、およびハードディスクへのデータ書込にかかる時間を減らすためにNANDフラッシュメモリ・モジュールを用いる)技術である。開発期間中、本技術はRobsonという暗号名であった[1]。これは大抵のCore 2モバイル・チップセット・シリーズではサポートされるがしかし、より新しいCore iシリーズ・モバイル・チップセット以降はその限りではない。
概要
編集本技術は2005年10月24日台湾で開催されたIDF(インテル・デベロッパー・フォーラム)にて、ノートパソコンが(大抵は)直ちに起動するというデモンストレーションが行われた時に、公に発表された[2]。本技術は頻繁にアクセスされるデータをフラッシュメモリに移動(中継)させることで、ハードディスクの稼働率を削減することを可能にする。フラッシュメモリはハードディスクよりも高速にアクセスでき、動作に必要な電力も少なくて済むため、ノートパソコンはより高速に動作すると同時に電力効率も向上する[3][4]。
ターボ・メモリー・キャッシュはmini-PCIeインターフェイスを介してマザーボードへ接続する。これはWindows Vistaで導入された機能、すなわちReadyBoost(512MBバージョンを除く、フラッシュ・ドライブ上の専用ファイルによるRAM=ベース型ディスク・キャッシングの補完)および/またはReadyDrive(メイン・ストレージが既に不揮発性ではないものに限る、不揮発性キャッシング・ソリューション《すなわち、ハイブリッドHDDの実装》)を活用するように設計されており[5]; ReadyBoostは汎用ストレージ・ボリューム上の一時ファイルによって裏付けられるため、本空間を汎用ストレージ向けに行先にすることが非公式ながら可能である[6]。
ターボ・メモリーは(Windows 2000およびXP用の単にデバイスが存在することを確認するだけのno-opドライバーしか持ちえない)Windowsの以前のバージョンとの互換性がない[7]; Linuxのサポートは、2GBモジュールのみをサポートするサード=パーティの実験用MTDドライバーに限られる[8]。
入手性
編集インテル・ターボ・メモリーは2007年5月9日に、インテルのSanta Rosa プラットフォームおよび対応するCrestline (GM965) チップセットで利用可能になった。インテル・ターボ・メモリー 2.0は、2008年7月15日にインテルのMontevina プラットフォームおよび対応するCantiga (GM47) チップセットに導入された。1、2および4GBモジュールでの利用が可能である。本製品はインテル・965 Expressチップセット、およびインテル・4シリーズ Expressチップセットにおいてもサポートされる (《ただし》2GBと4GBモジュールに限る)。
いくつかの(エイサー[9]、ASUS[10]、デル[9]、レノボ[11]、Sager[12]、東芝[9]、etc.の様な)小売業者はインテル・ターボ・メモリー・テクノロジーを搭載したノートパソコンを販売した。
レセプション
編集AnandTechにおけるレビューでは、「基本的に顧客体験に何の役にも立たない」という一部のOEM批判には概ね同意した[13]。HPは本技術の採用を拒否した[14]。Ars Technicaは2009年にターボ・メモリーは「決して普及しなかった」と書き[15]、CNETも同様に「ターボ・メモリー(およびターボ・メモリー 2.0) は安くなく、間違いなくコストに見合う価値がなかった」[16]ため、「広く採用されることはなかった」[17]と断言した。
2009年にインテルは5シリーズ・モバイル・チップセット向けターボ・メモリーの後継機、暗号名:Braidwoodを発表した。しかしながら、本シリーズは本技術なしで販売され始めた。第1世代インテルCore-iプラットフォーム上に構築されたThinkPadのラインナップは、Braidwoodモジュールを接続するためのランド(ハンダ付け用パターン)を備えているが、しかしながらThinkPadの量産マザーボードにはコネクタは生やされなかった[18]。2011年、The Registerは「Braidwoodは跡形もなく沈没したと言えると思う」と書いた[19]。
関連項目
編集- Intel Optane メモリとして販売されていた3D XPoint
- ExpressCache
- Swappiness
- クロック
参考文献
編集- ^ Gruener, Wolfgang (March 16, 2007). “Intel's Robson gets a real name: Turbo Memory”. TG Daily. January 7, 2009時点のオリジナルよりアーカイブ。March 5, 2009閲覧。
- ^ Nystedt, Dan (October 17, 2005). “Intel slashes PC power-up times”. Macworld. September 25, 2012時点のオリジナルよりアーカイブ。March 5, 2009閲覧。
- ^ "Intel Discloses Technologies To Make The Internet More Personal And Mobile" (Press release). Intel Corporation. 7 March 2006. 2006年5月10日閲覧。
- ^ “Intel's Robson Boosts Hard Drive Performance”. ExtremeTech (March 10, 2006). March 3, 2009時点のオリジナルよりアーカイブ。March 5, 2009閲覧。
- ^ “Intel Turbo Memory” (英語). Dell. 18 March 2023閲覧。
- ^ “Windows 7 using Intel Turbo Memory (Robson) as [a persistent RAM disk]”. SevenForums (2009年11月5日). 19 March 2023閲覧。
- ^ “Release notes - Disabling tool for Intel Turbo Memory” (txt) (英語). Lenovo (2009年6月11日). 19 March 2023閲覧。 “Windows XP/2000 operating systems do not support Intel Turbo Memory. [...] This package is to eliminate the Yellow Exclamation (!) in Device Manager.”
- ^ Ekman, Erik. “|access-date=19 March 2023 turbomem: Incomplete Linux driver for Intel Turbo Memory Controller ("Robson") PCIe card” (英語). GitHub. Template:Cite webの呼び出しエラー:引数 accessdate は必須です。
- ^ a b c David, Meyer (June 4, 2007). “HP says no to Intel's Turbo Memory”. ZDNet.co.uk. March 5, 2009閲覧。
- ^ Lo, Harry (July 24, 2007). “Asus Now Offers Intel Turbo Memory on Notebooks”. HotHardware.com. March 5, 2009閲覧。
- ^ “Notebook features short descriptions”. June 20, 2012時点のオリジナルよりアーカイブ。March 5, 2009閲覧。
- ^ “The new Sager NP8660 notebook”. Sager Notebook Computer. February 14, 2012時点のオリジナルよりアーカイブ。March 5, 2009閲覧。
- ^ Investigating Intel's Turbo Memory: Does it really work?, AnandTech
- ^ HP says no to Intel's Turbo Memory, CNET
- ^ Intel's new flash tech to bring back Turbo Memory, for real, Ars Technica
- ^ Intel's 'Braidwood'--Turbo Memory done right?, CNET
- ^ “Intel 'Braidwood' chip targets snappier software” (英語). CNET (6 June 2009). 1 March 2020閲覧。
- ^ “X201 tablet mod: adding a 3rd (and maybe 4th) mini PCIe” (英語). thinkpads.com Support Community (20 April 2015). 2 November 2017閲覧。
- ^ Intel trying a flash cache again, The Register