タトラカー > タトラT3

タトラT3(Tatra T3)は、かつてチェコスロバキア(現:チェコ)のタトラ国営会社(→ČKDタトラ)によって製造された路面電車車両タトラカー[注釈 1]経済相互援助会議(コメコン)の意向に基づく旧東側諸国の路面電車における標準型車両として、付随車タトラB3と合わせて14,000両以上の大量生産が実施された事で知られる[1][2][4][7][11]

  • タトラT3
  • タトラB3
タトラT3(チェコプラハ市電
2010年撮影)
基本情報
製造所 ČKDタトラ
製造年
製造数
  • タトラT3 13,991両
  • タトラB3 122両
  • 合計 14,113両
運用開始 1961年(試作車)
投入先
主要諸元
編成 1両 - 3両
軌間
電気方式 直流 600 V、750 V
架空電車線方式
最高速度 65 km/h
起動加速度 1.8 m/s2
減速度 2.3 m/s2
車両定員 タトラT3 最大160人(着席23人)
(乗客密度8人/m2時)
車両重量 タトラT3 16 t
全長 タトラT3 15,104 mm
車体長 タトラT3 14,000 mm
車体幅 タトラT3 2,500 mm
車体高 タトラT3 3,050 mm
車輪径 タトラT3 700 mm
固定軸距 タトラT3 1,900 mm
台車中心間距離 タトラT3 6,400 mm
主電動機 タトラT3 TE 022
主電動機出力 タトラT3 40 kw(300 V、150 A、1,750 rpm)
歯車比 タトラT3 7.36、9.36(勾配区間用)
出力 タトラT3 160 kw
制御方式 抵抗制御方式
制御装置 タトラT3 TR37
制動装置 発電ブレーキドラムブレーキレールブレーキ
備考 主要数値は[1][2][3][4][5][6][7][8][9][10][11][12][13][14][15]に基づく。
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開発までの経緯

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1951年から生産が始まったタトラT1を皮切りに、チェコスロバキア(現:チェコ)の首都・プラハのスミーホフに工場を有していたタトラ国営会社(→ČKDタトラ)はアメリカ合衆国で開発された高性能路面電車車両のPCCカーの技術を用いた、後年に「タトラカー」と呼ばれる一連の路面電車向け車両の開発・生産を行っていた。その中で2世代目にあたるタトラT21954年に試作車が作られた後、1957年から量産が開始されたが、重量の重さなど複数の問題が浮上し、より多くの路面電車路線へ導入するために更なる改良が必要となった。そこで、この問題を解消するべく3世代目となるタトラカーの開発が始まり、1960年に最初の試作車が完成した。これがタトラT3である[16][1][17][11]

概要

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側面図(タトラT3)
 
側面図(タトラT3+タトラB3)
 
側面図(タトラT3+タトラT3)
 
側面図(タトラT3+タトラT3+タトラB3)

タトラT3は右側通行に対応したボギー車で、ループ線が存在する路線での運用を前提としている事から運転台は片側のみ存在し、乗降用の両開き式の折り戸も右側面に3箇所、もしくは2箇所(タトラT3SUの一部)設置されている。車体のデザインはインダストリアルデザイナーフランティシェク・カルダウスチェコ語版が手掛けており、側面まで回り込む運転台窓(パノラミックウィンドウ)を有する流線形の前面下部には2つの前照灯が設置されている。この全溶接式の構造を用いた車体のうち、前方や後方には不燃性のグラスファイバーが用いられており、タトラT2と比較しての軽量化が図られている。車内には機器の冷却に使われ温められた空気や電気ヒーターを用いる暖房が搭載されている他、夏季には開閉可能な窓や換気扇を用いた換気が行われる[16][18][4][19][20][11][21][22][23]

各車両に2基設置されているボギー台車は全て動力台車で、出力40 kwの主電動機(TE022)が縦方向に配置され、カルダン軸やハイポイドギアを介して動力が伝達される。また、車輪には中央部に防振ゴムを挟みこむ弾性車輪が用いられている他、1次・2次ばねにゴムばねコイルばねを使用する事で安定した走行や振動の抑制が図られている[24][5][25][26]

制御装置はタトラT2に使用されていたTR36形を改良・簡素化した、抵抗制御方式に対応したTR37形が導入されている。合計99の抵抗段数を有するこの装置は「加速器(アクセラレータ)」とも呼ばれており、基本的な構造はタトラカーの基となったPCCカーの制御装置に準拠している。運転台からの速度制御は足踏みペダルによって行われ、加速用のアクセルペダル、減速用のブレーキペダルに加え、初期車にはデッドマン装置の役割を担う安全用ペダルが設置されていた。また、タトラT3は先頭の車両が連結した全車両の制動装置や乗降扉といった機器を一括で操作可能な総括制御に対応しており、営業運転時には最大3両編成まで組む事ができる[注釈 2][18][19][5][12][28]

これらの構造の一部は長期にわたる生産の中で変更が加えられており、代表的なものには車掌業務の廃止や信用乗車方式の導入に伴う車掌台の廃止や座席配置の変更、系統番号の案内板のバックライトの導入、座席の構造変更(人工皮革張りの柔らかい座席→ラミネート加工が施された固い座席)、窓の開閉部分の拡大による換気機能の改善、安全用ペダルの削除に伴う安全用スイッチへの設置[注釈 3]などが挙げられる[16][20][29][11][30]

車種

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試作車

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6102(チェコプラハ
2007年撮影)

タトラT3の最初の試作車となった6101は1959年から1960年にかけて開発・製造が行われ、同年8月ブルノで開催された国際技術博覧会(Mezinárodní strojírenský veletrh)で一般公開が実施された。その後1年間の試運転を経て1961年7月21日からプラハ市電プラハ)での営業運転が開始された。その後も並行して試運転が実施されたが、1962年3月8日トラックとの衝突事故が発生し、1年かけて修復が行われた。1984年に引退した後はプラハ市電の事業用車両に転用されたが、先の事故からの修復の際に原型が失われた事が要因となり、保存される事なく解体された[1][7][31]

6101の試験結果を受けて1962年に製造された量産先行車。前照灯の形状変更、塗装の一部変更、乗降扉の幅の統一[注釈 4]、車内の簡素化など各種の設計変更が行われた。1996年までプラハ市電プラハ)で営業運転に使用され、引退後も動態保存が実施されている[1][31]

 
T3チェコプラハ
2013年撮影)
 
T3チェコオストラヴァ
1992年撮影)
 
T3チェコブルノ
2010年撮影)

タトラT3の基本形式。前面窓の形状など一部の変更点を除いて6102の設計を基にしており、1962年に製造が始まったプラハ市電プラハ)向け車両を皮切りに旧型車両の置き換えや輸送力の増強が求められていたチェコスロバキア各都市への製造が行われ、1976年まで5次に渡って導入が実施された[1][2][32][33][34][31][7]

下記の路線・都市に加え、ウースチー・ナド・ラベム市電ウースチー・ナド・ラベム)向けの車両(22両)の製造も検討されていたが、路線自体が廃止の方針に動いたため実現する事はなかった[注釈 5][36]

T3 導入都市一覧[1][2][31][7][8]
導入国 都市 導入車両数
チェコスロバキア
(現:チェコ)
プラハ
(プラハ市電)
タトラT3 (プラハ市電)」も参照
901両
ブルノ
(ブルノ市電)
109両
オストラヴァ
(オストラヴァ市電)
タトラT3 (オストラヴァ市電)」も参照
97両
プルゼニ
(プルゼニ市電)
48両
オロモウツ
(オロモウツ市電)
20両
リベレツ
(リベレツ市電)
20両
モスト
リトヴィーノフチェコ語版
(モスト・リトヴィーノフ市電)
9両
チェコスロバキア
(現:スロバキア)
コシツェ
(コシツェ市電)
97両
ブラチスラヴァ
(ブラチスラヴァ市電)
58両
 
T3SU(2扉車、ロシア連邦イジェフスク
2011年撮影)
 
T3SU(2扉車、ウクライナオデッサ
2013年撮影)
 
T3SU(3扉車、ロシア連邦モスクワ
2019年撮影)
 
T3SU(3扉車、ロシア連邦ウリヤノフスク
2008年撮影)
 
T3SU(3扉車、ロシア連邦エカテリンブルク
2014年撮影)
 
T3SU(3扉車、ウクライナキーウ
2013年撮影)
 
T3SU(3扉車、ラトビアリガ
2015年撮影)
 
T3SU(3扉車、チェコプラハ
2014年撮影)

元はソビエト連邦向けに開発された形式。極寒地域での運用を考慮し、運転室と客室の間に仕切りが設けられた他、暖房装置の強化も実施された。また、1963年の製造開始から1976年までは車掌業務を始めとする理由から乗降扉は車体前後にのみ設置されていたが、同年から1987年まで増備された車両は他国向けと同様に中央にも乗降扉が追加された。総生産数は11,368両とタトラT3の全生産数の8割以上を占め、特に首都・モスクワモスクワ市電には2,000両以上が導入され、タトラT3最大の発注元となった。その一方で、長年の大量発注はČKDタトラの生産ラインを圧迫し、後継車両の開発が遅れた要因にもなった[37][7][38][39]

前述の通りT3SUはソ連向けに開発された車両であったが、1976年まで生産されたT3に代わる新しい標準型車両の開発が難航した事や、購入費用が高額になる等の理由から各都市の路面電車事業者が導入を拒否した事を受け、老朽化した車両の置き換え用として1982年以降チェコスロバキアに向けてもT3SUの生産が緊急に実施された。車体や機器、暖房、電気配線は全てソ連向け車両と同一であり、車内の座席配置も従来のT3とは異なりソ連仕様の2列 + 1列のままであった[39][33]

T3SUCS 導入都市一覧[7][40][注釈 6]
導入国 都市 導入車両数
ソビエト連邦
(現:ロシア連邦)
モスクワ
(モスクワ市電)
タトラT3 (モスクワ市電)」も参照
2069両
クイビシェフ
(クイビシェフ市電)
619両
スヴェルドロフスク
(スヴェルドロフスク市電)
530両
バルナウル
(バルナウル市電)
444両
ヴォルゴグラード
(ヴォルゴグラード市電)
(ヴォルゴグラード・メトロトラム)
425両
ロストフ・ナ・ドヌ
(ロストフ・ナ・ドヌ市電)
405両
ウリヤノフスク
(ウリヤノフスク市電)
401両
トゥーラ
(トゥーラ市電)
401両
ウファ
(ウファ市電)
360両
カリーニン
(カリーニン市電)
306両
クルスク
(クルスク市電)
278両
イジェフスク
(イジェフスク市電)
270両
ゴーリキー
(ゴーリキー市電)
220両
ノヴォクズネツク
(ノヴォクズネツク市電)
215両
ヴォロネジ
(ヴォロネジ市電ロシア語版)
209両
ウラジカフカス
(ウラジカフカス市電)
129両
ピャチゴルスク
(ピャチゴルスク市電)
117両
クラスノダール
(クラスノダール市電)
115両
オリョール
(オリョール市電)
85両
ヴォルシスキー
(ヴォルシスキー市電)
75両
グロズヌイ
(グロズヌイ市電)
70両
イルクーツク
(イルクーツク市電)
30両
ソビエト連邦
(現:ウクライナ)
キエフ
(キエフ市電)
923両
ハルキウ
(ハルキウ市電)
735両
オデッサ
(オデッサ市電)
484両
ドニエプロペトローフスク
(ドニエプロペトローフスク市電)
370両
ザポリージャ
(ザポリージャ市電)
304両
ドネツィク
(ドネツィク市電)
251両
ドニプロゼルジーンシク
(ドニプロゼルジーンシク市電)
183両
クルィヴィーイ・リーフ
(クルィヴィーイ・リーフ・メトロトラム)
50両
マリウポリ
(マリウポリ市電)
32両
クラマトルスク
(クラマトルスク市電)
2両
ソビエト連邦
(現:ラトビア)
リガ
(リガ市電)
243両
ソビエト連邦
(現:ウズベキスタン)
タシュケント
(タシュケント市電)
18両
チェコスロバキア
(現:チェコ)
モスト
リトヴィーノフチェコ語版
(モスト・リトヴィーノフ市電)
26両
プルゼニ
(プルゼニ市電)
25両
プラハ
(プラハ市電)
タトラT3 (プラハ市電)」も参照
20両
リベレツ
(リベレツ市電)
10両
オストラヴァ
(オストラヴァ市電)
タトラT3 (オストラヴァ市電)」も参照
5両
チェコスロバキア
(現:スロバキア)
ブラチスラヴァ
(ブラチスラヴァ市電)
20両
コシツェ
(コシツェ市電)
20両

T3SUCS

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T3SUCS(チェコオストラヴァ
1992年撮影)
 
T3SUCS(チェコプラハ
2011年撮影)
 
T3SUCS(スロバキアブラチスラヴァ
2019年撮影)

T3SUを基に、チェコスロバキア向けの改良が施された形式。密閉式の運転室はそのまま受け継がれた一方、組み立ての簡素化を図るため暖房や電気配線の簡略化が行われており、座席配置もT3と同様の1列 + 1列に変更され車体後部の座席は撤去された。1983年から量産が行われ、1985年には連結運転時に一方の車両が故障した場合もう一方の車両の動力で走行可能な緊急走行スイッチが追加される、1987年以降は配線が見直され車内照明が蛍光灯に変更される等の設計変更を経て、1989年までチェコスロバキア各都市に向けて量産が行われた。また1990年代以降は老朽化したT3を対象に、機器更新に加えて新造したT3SUCSと同型の車体への交換が各地で実施された[7][34][41][42]

T3SUCS 導入都市一覧[7][8]
導入国 都市 導入車両数
チェコスロバキア
(現:チェコ)
プラハ
(プラハ市電)
タトラT3 (プラハ市電)」も参照
272両
オストラヴァ
(オストラヴァ市電)
タトラT3 (オストラヴァ市電)」も参照
122両
プルゼニ
(プルゼニ市電)
55両
モスト
リトヴィーノフチェコ語版
(モスト・リトヴィーノフ市電)
43両
リベレツ
(リベレツ市電)
23両
ブルノ
(ブルノ市電)
53両
オロモウツ
(オロモウツ市電)
39両
チェコスロバキア
(現:スロバキア)
ブラチスラヴァ
(ブラチスラヴァ市電)
110両
コシツェ
(コシツェ市電)
69両

T3D・B3D

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T3Dドイツシュヴェリーン
2008年撮影)
 
B3Dドイツシュヴェリーン
2008年撮影)

東ドイツ成立後、同国の路面電車路線にはヴェルダウ車両工場人民公社ドイツ語版ゴータ車両製造人民公社などの国営企業が製造した電車が継続して導入されたが、経済相互援助会議(コメコン)の方針により、東側諸国の標準型車両であるタトラカーを導入する方針へ移管した。これを受け、タトラ国営会社スミーホフ工場がドイツ向けに開発したのがT3D・B3Dである。最大の特徴は電動車(T3D)に加え、後方に増結する付随車B3D)が製造された事で、それに合わせてT3Dの歯車比や主電動機出力が付随車が牽引可能なよう調整がなされた[43][44][45]

1964年ドレスデンドレスデン市電)で試運転が行われた後、1967年カールマルクスシュタット(現:ケムニッツ)、1973年シュヴェリーンへ量産車の導入が行われ、1988年まで長期に渡る導入が実施された。だが、当時の東ドイツ各地の路面電車の車両限界に対してタトラT3の車幅は大きく、停留所のプラットホームへの接触や急曲線への対応など多数の課題が指摘された。そのため他都市への導入は行われず、代わりに同性能ながら車幅を狭めたタトラT4(T4・B4)の開発が行われる事となった[43]

T3D・B3D 導入都市一覧[43][44][45]
形式 導入国 都市 導入車両数
T3D 東ドイツ
(現:ドイツ)
カールマルクスシュタット
タトラT3 (ケムニッツ市電)」も参照
132両
シュヴェリーン
タトラT3 (シュヴェリーン市電)」も参照
115両
B3D 東ドイツ
(現:ドイツ)
カールマルクスシュタット
タトラT3 (ケムニッツ市電)」も参照
62両
シュヴェリーン
タトラT3 (シュヴェリーン市電)」も参照
56両

T3YU・B3YU

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T3YU(クロアチアオシエク
2005年撮影)

ユーゴスラビア向けの車両。製造時はパンタグラフが車体後方に設置されていた他、一部都市に向けて付随車B3YUも製造された。1967年から1982年まで断続的に製造が行われた[7]

T3YU・B3YU 導入都市一覧[7][46]
形式 導入国 都市 導入車両数
T3YU ユーゴスラビア
(現:クロアチア)
オシエク
(オシエク市電)
26両
ユーゴスラビア
(現:ボスニア・ヘルツェゴビナ)
サラエヴォ
(サラエヴォ市電)
タトラT3 (サラエヴォ市電)」も参照
20両
B3YU ユーゴスラビア
(現:クロアチア)
オシエク
(オシエク市電)
4両
 
T3R(ルーマニアガラツィ
2010年撮影)

ルーマニア向けに設計された形式。他都市と異なり、直流750 Vに適合した電気機器が搭載された。1971年から1974年にかけて製造されたものの、ルーマニア各都市の路面電車における車両限界に対してT3Rの車幅は広く、1都市のみの導入に終わった[7][16]

T3R 導入都市一覧[7]
導入国 都市 導入車両数
ルーマニア ガラツィ
(ガラツィ市電)
50両

発展形式

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T4ドイツドレスデン

車体幅2,500 mmのT3の導入が難しい、車両限界が小さい都市向けに開発された車両。T3と同様の電気機器を用いた一方で車体幅を2,200 mmに抑えた他、乗客が事前に乗車券を購入し各自で刻印を押す信用乗車方式の導入を前提としていたため当初から車掌台は設置されていなかった。付随車のB4と合わせて3,500両以上が量産された[16][47]

 
T3Rチェコブルノ

1990年代に展開された、T3のモデルチェンジ形式。インダストリアルデザイナーパトリック・コタスチェコ語版が手掛けた新規デザインの全面形状が採用された他、回生ブレーキが使用可能な電機子チョッパ制御方式の制御装置が搭載され、消費電力が50 %削減されている。新造車に加え、従来のT3の台車や機器を再利用した機器流用車も試作された。形式名は前述するルーマニア向けのT3Rと同じだが関係はない[7][48][49]

主要諸元
形式名 電圧 全長 全幅 全高 自重 最高速度 出力 歯車比 着席定員 立席定員 軌間 備考・参考
T3R 直流600V 14,000mm 2,500mm 3,075mm 17.3t 65km/h 188kw 22人 138人 1,435mm [48]
 
T3RFロシア連邦サマーラ

1990年代に展開された、T3のモデルチェンジ形式の1つ。T3Rと同型の車体や電気機器を搭載しているが、集電装置が菱形パンタグラフである点や乗降扉が両開きの2枚折り戸式になっている点などが異なる。主にロシア連邦の都市に導入された[50][51]

主要諸元
形式名 電圧 全長 全幅 全高 自重 最高速度 出力 歯車比 着席定員 立席定員 軌間 備考・参考
T3RF 直流600V 14,000mm 2,500mm 3,060mm 17.0t 65km/h 180kw 22人 138人 1,435mm
1,524mm
[50]

改造

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長期に渡る製造が実施されたタトラT3は、各都市で実施された微細な改造に加え、1970年代以降は電気機器の交換といった大規模な改造も積極的に行われるようになった。特に旧東側諸国の民主化が行われた1990年代以降は各企業による車体の改造や機器の交換、新造車体への交換(機器流用)など大小様々な改造が継続的に実施されている。以下、その代表例について記す[52][41][18][3][53]

機器更新・車体改造車両

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車体更新(機器流用)車両

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連接車への改造

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事業用車両への改造

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各都市に導入・譲渡されたタトラT3の一部は、資材輸送や軌道・架線の検測、レール削正などに用いる事業用車両への改造が行われている。その中でチェコプラハ市電プラハ)で使用されている潤滑剤散布用の車両(5572)は「マザチカチェコ語版(Mazačka)」という愛称で呼ばれており、走行時の前面展望のライブ配信も行われている[83][84][85]

東アジア諸国のタトラT3

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北朝鮮

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タトラT3北朝鮮平壌

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の首都平壌市内の路面電車である平壌市電では、2008年以降プラハ市電から譲渡された20両のタトラT3が使用されている。内訳はタトラT3が4両、タトラT3SUCSが16両である[86][87]

韓国

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タトラT3SUCS(韓国花郎台鉄道公園

プラハ市電で使用されたタトラT3SUCSのうち1両(7255)は廃車後に韓国へ輸出され、同国の花郎台鉄道公園(화랑대 철도공원)で静態保存されている[86][88]

日本

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高知県の路面電車であった土佐電気鉄道(現:とさでん交通)は1980年代から1990年代にかけて国外の路面電車車両を多数譲受しており、タトラT3についても1994年にプラハ市電から1両を譲り受けたが、運用に就く事はなく車庫で荒廃が進んだ結果2004年に解体されている[86][89]

関連項目

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脚注

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注釈

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  1. ^ 開発当初はタトラTIIIという形式名で呼ばれていた。
  2. ^ 試験運転では4両編成が組まれた場合もあったが、消費電力などの事情から実際に営業運転が行われる事はなかった[27]
  3. ^ 緊急時に安全用のスイッチを押すと電磁吸着ブレーキが作動する構造となっていた。
  4. ^ 6101は中間扉のみ幅が1,060 mmと狭かったが、6102は全ての扉幅が1,300 mmに統一された。
  5. ^ ウースチー・ナド・ラベム市電は1970年に廃止された[35]
  6. ^ 都市名は導入時(ソビエト連邦時代)の呼称を記す。

出典

編集
  1. ^ a b c d e f g Československý Dopravák 2015, p. 3.
  2. ^ a b c d Československý Dopravák 2015, p. 4.
  3. ^ a b c Československý Dopravák 2015, p. 18.
  4. ^ a b c ČKD Tatra 1970, p. 7.
  5. ^ a b c ČKD Tatra 1970, p. 14.
  6. ^ ČKD Tatra 1970, p. 15.
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  8. ^ a b c Robert Mara 2001, p. 123.
  9. ^ Robert Mara 2001, p. 124.
  10. ^ Robert Mara 2001, p. 125.
  11. ^ a b c d e 服部重敬 2017, p. 105-106.
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  13. ^ Транспорт 1977, p. 7.
  14. ^ Транспорт 1977, p. 38.
  15. ^ Транспорт 1977, p. 98-99.
  16. ^ a b c d e Ryszard Piech (2008年3月4日). “Tramwaje Tatry na przestrzeni dziejów (1)” (ポーランド語). InfoTram. 2016年7月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月27日閲覧。
  17. ^ ČKD Tatra 1970, p. 6.
  18. ^ a b c d e Tramvajový motorový vůz T 3 č. 752”. Dopravní podnik Ostrava a.s.. 2023年1月27日閲覧。
  19. ^ a b ČKD Tatra 1970, p. 8.
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参考資料

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