タテハチョウ科(タテハチョウか、立羽蝶科)は、チョウ目アゲハチョウ上科の分類単位のひとつ。一般に成虫は中型で寿命が長いものが多い。タテハチョウ科に含まれるマダラチョウ亜科ジャノメチョウ亜科テングチョウ亜科はかつてはそれぞれ独立した科とされていた。

タテハチョウ科 Nymphalidae
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: チョウ目(鱗翅目) Lepidoptera
上科 : アゲハチョウ上科 Papilionoidea
: タテハチョウ科 Nymphalidae
Rafinesque, 1815
英名
Brush-footed butterfly
亜科

概要

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南極大陸を除く世界の熱帯温帯冷帯に広く分布し、各地域の気候に適応している。12の亜科、500以上の、6,000以上が知られ、チョウの中では最も多い種類を含む[1]

成虫

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成虫の前翅長はどれも2cm以上で、チョウとしては中型から大型の部類に入る。日本最大のタテハチョウはオオムラサキ(メスの前翅長は55mmに達する)とされてきたが、近年ではマダラチョウ類がタテハチョウ科に含まれるようになり、その場合には前翅長70mm前後のオオゴマダラが最大となる。

成虫のは亜科、族、種によって様々な形があり、黄・赤・青・黒・褐色など鮮やかな模様が入るものも多い。しかし、成虫の前脚が退化して短くなっているという、全ての種に共通する特徴がある。

種による違いだけでなく、サカハチチョウアカマダラなどは、春に発生する個体(春型)と夏に発生する個体(夏型)でも、まるで別種のように翅の模様が異なる。夏季に登山すると、汗にサカハチチョウが寄ってくることがある。光を弱く、当てる時間を減らして幼虫を飼育すると春型になる。

また、翅の表と裏でも模様が異なるものが多い。たとえばコノハチョウの翅の裏は枯れ葉にそっくりで、擬態するチョウとしてよく知られているが、表は藍色の地に鮮やかな橙の帯模様がある。

成虫の前脚が短いためぱっと見たところでは脚が4本しかないように見えるが、よく見ると頭部と前の脚(中脚)の間に小さく折り畳まれた前脚がある。この前脚は歩行や掴まるためには役立たないが、先端に生えた感覚毛でを感じることができ、感覚器官としての働きに特化している。食事や産卵の直前には餌や幼虫の食草・食樹の表面に前脚を伸ばし触れる動作をおこなう。

成虫は種類によってはもっぱらに飛来するが、花よりも過熟して落果、発酵しかけた果実果汁、樹液、動物のや死体などの浸出液を好む種も多い。コムラサキ亜科やフタオチョウ亜科などは花に来ることはほぼない。

この科に属するものは木の幹などに留まるときも、翅を広げたままである種が多い。しばしばチョウとガの見分け方として、留まるときの翅の開閉が挙がり、チョウは翅を閉じガは翅を開くとされる。しかしタテハチョウ科はその限りではない。(もっとも、チョウとガの両者は生物学的に厳密に区別されるものではない。)[2]

 
クジャクチョウの蛹化。黒い幼虫の背中側が割れ、黄緑色の蛹が現れる。蛹は尾部だけで逆さ吊りになる。

幼虫

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成虫だけでなく、幼虫の形態も種により様々である。幼虫は突起やをもつものが多く、ケムシの範疇に入るものもいる。

は尾部のカギ状器官だけで逆さにぶら下がる垂蛹型(すいようがた)である。蛹化の際は幼虫の抜け殻と蛹が肛門の部分でまだつながっている間に、突出した尾端に密生した鉤をそれまで幼虫が尾脚でつかんでいた糸の塊に引っ掛け、次いで体をゆすって抜け殻を糸の塊と蛹の肛門から振り落とし、器用にぶら下がる。

分類

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従来、1970年代頃までの分類方法ではテングチョウマダラチョウドクチョウジャノメチョウモルフォなどをそれぞれ独立したとして扱っていたが、新しい分類ではこれらをタテハチョウ科の中に組みこんでいる。これらの成虫も前脚が退化するなど共通点が多いが、幼虫の形態などが従来のタテハチョウ類とは異なっており、いまだ研究者によって説が分かれる。

以下の分類は N. Wahlberg 他(2009)[3]に基づく。

画像

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脚注

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  1. ^ van Nieukerken et al., 2011 in Zhang (Ed.), Animal biodiversity: An outline of higher-level classification and survey of taxonomic richness. Order Lepidoptera Linnaeus, 1758 Zootaxa 3148 : 212-221
  2. ^ 蝶と蛾の違い”. 2020年9月8日閲覧。
  3. ^ N. Wahlberg et al.(2009)Nymphalid butterflies diversify following near demise at the Cretaceous/Tertiary boundary. Proc. R. Soc. B (2009) 276, 4295–4302 doi:10.1098/rspb.2009.1303 Published online 30 September 2009

参考文献

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